「え」
小さく驚いたような声が聞こえた。
その声に振り向いてみれば傘を持って少し目を見開いて立っているあなたと目が合う。
大きな雨粒が降り注ぐ下で立ち尽くす私に、怪訝そうな顔を浮かべて、あなたが少し大きいその傘をさしかけた。
「風邪引くよ」
きっと泣き腫らして真っ赤に充血した私の目にも気づいたはずなのに、何も聞かないでくれるその優しさに甘える。
「ありがとう」
涙と雨粒でびっちょり濡れてしまった私のハンカチを一瞥したあなたが、自分のハンカチで滴り落ちる雫を拭ってくれた。
雨の音に遮られて、あなたの息づかいだけが私の世界の全てになる。
通り雨だったらしい雷雨が過ぎて、雲の切れ目から青空が顔を覗かせる頃には、私の涙もその通り道を示すだけになっていた。
傘を畳んだあなたとじっとりとした雨の匂いが漂う道を歩く。
雨の香り、涙の跡
途中書きです!
小指に繋がれた鮮烈な赤い糸が、おぞましいほどの鈍い赤に染められる。
糸の先で瞳を見開くその人は言葉を形に出来ないまま命の終わりを迎えた。
途端に重みを増した糸に顔をしかめて結びに手を掛ける。
あっけないほど簡単にほどけたそれは音もないまま落ちて溜まった血の上に模様を描いた。
少し跡が残った小指をさする。
どうやらこれは運命じゃなかったみたいだった。
糸
どうやったって届かないのに、あなたに届けたい言葉だけは尽きることを知らなかった。
届かないのに
美しい景色を見て、美味しいものを食べて、あなたと笑いあって。
それが幸せ。
明日から修学旅行なのでわくわくしてます!!
交わった視線の先で柔く微笑んでくれたあなたが、少し横に視線をずらした途端にその笑みを深めた。
その先にいるのはきっと、私よりずっと可愛いあの子で。
高鳴った鼓動が治まらないうちに、胸の奥がどうしようもないほどに痛む。
どうしてこの世界はこんなにも残酷なの。
どうしてこの世界は