甘い花の香りと共に、少し緊張の表情を滲ませたあなたが現れる。
その手に握られるのは、瞳が釘付けになるほど綺麗なバラの花束。
咄嗟に言葉が出なくて固まる私に、あなたがその表情を体現するような声を出した。
「結婚してください」
ひときわ美しい赤いバラが風に煽られて揺れる。
ずっと昔から決まっていた返事をするために、花束を少し震えているあなたの手と一緒に握った。
今日推しに会ったんですけど本当に顔がよすぎました。
席が推しの前だったんですけど振り向いた時に目があって死にそうになりました。
助かる。
心のざわめきがそのまま身体に伝わって、君からもらったチョコレートを握る手が驚くほど震える。
上がりきった体温が、手のひらのチョコレートを溶かしそうになっていた。
君を探して視線を彷徨わせる。
あ、見つけた、なんて視界の端に友だちと笑い合う黒髪が映った。
それだけで胸が高鳴って、恋してることをわかりやすく脳に伝える。
そんな私の視線が君と交わるまで、あと。
『透明』
何もかもが不透明なこの世界で、どうかあなただけは透明であってほしいと思う。
限りなく透明に近いブルーっていう題名がすごく好きです。
『終わり、また初まる、』
人混みの中、そこだけが目映い光を放っているかのように私の目を釘付けにする。
逸らせない。
私の視線に気づいたのか、はたまた他の要因があったのかあなたの視線が私のそれと交わった。
その瞳が弓なりに細められて、お手本のような美しい笑顔を造形する。
遠い昔に忘れたはずの恋が、また芽吹く音が聞こえた。
こちらに向かって一歩を進めるあなたに、私も一足分距離を詰める。
大丈夫。また初められる。
いつの間にかすぐ目の前にいたあなたに微笑みを返した。
バウムクーヘン作っててその匂いが好きすぎるって気づいたんですよね。
そんな匂いの香水ってありませんか。