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『すれ違い』

BL要素あります。むしろ要素どころかがっつりです。

すれ違いざまにあなたを見た瞬間、それは運命なんだとわかった。
嘘だろ。今世でも出会うなんて。
あなたには、今世こそは俺を知らないでほしかったのに。世間一般の幸せを手に入れてほしかったのに。
前世での伴侶に対する感情とは思えないほどに後悔した俺とは正反対に、あなたは顔色ひとつ変えずに通りすぎたから、神様はまだ俺を見捨ててなかったんだな、なんて思った。
あなたが俺の腕を掴むまでは。
「やっと見つけたぞ、月島ぁ」
さっきのは何だったのかと思うほどに瞳を歓喜の色に染めたあなたが、その顔を同じように喜色を全面に散りばめた声色で俺の名を呼ぶ。
「あ、ちが、俺は、月島じゃないです」
「何を言っちょるか。わいは月島基だろう?」
咄嗟に誤魔化した俺に、あなたが不思議そうな瞳を向ける。
「違いますよ、鯉登さん」
「じゃあなんでおいの名がわかるんだ」
間違えた、と思ったときにはもう遅かった。
冷や汗が背中を伝う。
「ないごて誤魔化すんじゃ月島ぁ」
「あー、えっと、その…」
口ごもる俺に、あなたが捨てられた子犬のような瞳を向けた。
「わいはおいが嫌になったんか?」
「ちがっ…」
あーもう顔がいい。咄嗟に否定しちゃったよ。何してんだ俺。
「じゃあないごて!」
前世とそっくりの顔で全く同じ表情で拗ねて見せるから、もう誤魔化すことなんてできなくなってしまった。
「あなたには、幸せであってほしかったから」
「おいの幸せは月島と一緒にいることだぞ?」
「そうじゃなくて…!」
「月島」
俺をさとすようなその声は、晩年の鯉登さんと同じもので。
自然に耳を傾けさせるような、そんな力を持っていた。
「おいの幸せはおいが決める。おいは月島と一緒にいたい。月島はどうなんだ?」
そんなにまっすぐな瞳でまっすぐな感情を渡してくるから、言うはずのなかった本音が溢れてしまった。
「そりゃ、俺だってあなたと一緒がいいですよ」
「ならそれでいいじゃないか」
嬉しさと愛おしさを全面に押し出したような顔で笑うあなたがどうしようもなく愛しいと思ってしまった。
またあなたの隣にいてもいいんだろうか。
あなたの幸せは、俺の幸せと重なるって、信じてもいいんだろうか。
そんなことを聞かなくても少し震えながら一生懸命に答えを教えてくれるあなたの手を握った。

ゴールデンカムイより鯉登さんと月島さんの二次創作です。またですね。いつも通りの現パロです。
鯉登さんが最初に無反応だったのは話しかけていいのか迷ったからです。
月島さんの表情を見て話しかけることに決めたらしいです。月島さん転生したらちょっと顔に出やすくなったんですかね。
とりあえず幸せになってほしいです。

10/19/2024, 10:45:05 AM