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5/18/2023, 12:40:22 PM

私は今日、彼に告白する。朝ラブレターを彼の靴箱に入れて教室で今か今かと待っていた。彼は委員会に入っているため、おそらくもう少ししたら来るだろう。心臓が張り裂けそうになりながらも何とか落ち着く。きっと、
大丈夫だ。どんな結末になったとしてもこの想いを伝えられるだけでも十分なことだ。それに──
「えーっ! ラブレター渡したの?」
「うん。」
「そっかー。あんたもついに勇気を出したって事ね」
「でも、振られちゃうかも」
「頑張れ! もし駄目でも私達は応援して見守ってる
からね」
そう、私には応援してくれる友人たちがいる。だから
ここで逃げるわけには行かないのだ。
その時、ガラッと扉を開ける音がして彼がやって来た。私の緊張がピークに達する。
「ごめんね、待たせちゃって」
「ううん、いいの。私のほうこそわざわざ来てくれてありがとう。」
「それで、話って何かな?」
さあ、遂にやってきたこの瞬間。落ち着け、私。何度もシュミレーションしてきたじゃない。ゆっくり深呼吸しながら言葉を紡いだ。
「あ、あのね、私、実はあなたの事が──、あなたの事が好きなんです! 付き合ってくれませんか!」
私、言えた。言えたよ、皆。前を向く。彼の表情は
夕日が差し込んでいるせいでよく見えない。断られて
しまうだろうか。そんな不安が頭をよぎる。彼が口を
開いて言った。
「俺は─────」

その後、彼が彼女にどんな返事をしたのかは想像にお任せする。

『恋物語』

5/17/2023, 11:55:09 AM

真夜中、午前0時。寝苦しさから目を覚ます。外はまだ闇に包まれていて何となく不安な気持ちになって、眠ろうとした時、プルルルと電話が鳴った。電話に出ると、
「もしもし? 私だよ」
それは親友の声で私は一体こんな夜更けにどうしたんだと思いながら答える。
「もう夜中よ? 急になんの用事?」
「お願い、少しでいいから話したい」
「分かったわよ。」
やけに切羽詰まった声なものだから断らずに話を聞くことにした。
「ねぇ、私〇〇会社で働いてるって言ったじゃない?」
「そうだね、それが?」
「実はさ、先輩社員に仕事を押し付けられたり陰で悪口を言われたりするの。最初は就職したばかりだから我慢してたんだけどもう限界で──」
彼女の声が震えている。それを聞いて私は涙と自分への怒りが込み上げた。悩みに気付けなかったなんて親友失格だ。そう思いながら、私は言葉を続けた。
「ごめんね、今まで気づかなくて。辛かったよね。これから、一緒にどうするか考えよう。」
「ううん、私のほうこそごめんね。あなたに迷惑かけたくなくてもっと悲しませる選択肢を選んでしまった」
「え? どういうこと?」
「────」
ザザーッ。ザザーッ。ノイズがひどくなる。なにも聞こえなくなっていくその瞬間、最後に彼女がなにか言ったような気がした。
ふと、どうしようもなく眠くなり私は身を委ねるように目を閉じた。着信音が鳴っている。目を開けると朝で私は床に倒れていた。とりあえず電話に出ると親友の両親からだった。
「あの、どうかしたんですか?」
「落ち着いて聞いて欲しいの、あの子が午前0時に地下鉄のホームから飛び降りて亡くなったわ。」
「う、嘘ですよね? だってその時──」
私はその時彼女と話していた。死んでいるわけがない。私は呆然として携帯を落とす。電話越しにはまだ声が響いている。なるほど、死んで成仏する前に私に電話をしてきたのか。そういえばノイズが酷くなった後彼女は言っていた。
「ありがとう、私はあなたの親友で本当に良かった」
馬鹿。私は泣きながら叫んだ。
「───そんなの生きてるときに言いなさいよ!」

『真夜中の電話』

5/16/2023, 11:36:47 AM

紅い血が誰もいない教室を鮮やかに染めていた。中心には天使のような笑顔で彼女が佇んでいた。
「私は君のためなら、なんだって出来るよ」
今この瞬間にあの日の言葉を思い出した。
──僕は人と話すのが苦手で顔が良い訳でもなかったからよく「陰キャ」などと云われてヒソヒソと馬鹿にされるのが日常だった。でも、よくクラスで可愛いと噂されていた女の子から「放課後に裏庭で待ってます」との手紙を靴箱で受け取って僕は腹が立った。どうせ罰ゲームなんだろ、そろそろはっきり言ってやろうと考えて裏庭に足を運んだ。
「あ! 来てくれたんだね、嬉しい!」
「なあ、これ嘘なんだろ?」
「どうして?私は嘘なんてつかないよ」
「そう言って、罰ゲームで僕を嵌めるんだろう?」
「違うよ、どうしたら信じてくれるの? 手紙にもあるでしょ、心の底から君を愛してる、なんでも出来るんだって、全部本当だよ?」
「だったらさあ証拠を見せてくれ、僕のために──」
「分かった! 私は君のためならなんだって出来るよ 」
ああ、なんて短絡的な考えだったんだろう。最悪だ。
「ね、本当だったでしょ? これで邪魔者はいないね」
「さっ、先生来る前に逃げよ?」
 もう何も言えない。言いたくもない。
「僕のために、僕をいじめたやつらを殺してくれよ」
嘘だと思ったんだ。まさか本当に愛のためなら殺人をするなんて考えもしなかったんだ。言い訳をしながら僕はこちらへ差し伸べる彼女の血に染まった白い手を呆然と見ていた。

『愛があれば何だって』  

5/15/2023, 1:04:55 PM

「──俺のこと、何があっても忘れないでくれよ」
そう言って彼は橋の上から美しく笑って飛び降りた。激しく波打つ川の底へと。僕は泣きながら手を伸ばした。
「ごめんなさい、ごめんなさい。」
ああ、僕はずっと気付いていた。彼が部活内であることないことを言われいじめられていたこと。それらに愛想笑いを浮かべながら否定をせずにここまで来た。なんて愚かだ。最低だ。彼はずっと友達だと思ってくれていたのに。この言葉は呪いであり、彼の最期の復讐だ。
「大丈夫、忘れないよ」
明日彼の死は自殺としてニュースで報道され、学校で話題となり好き勝手に消費されて、忘れ去られていく。でも、僕は忘れない。この後悔を刻み込んで、110番をするために携帯を取り出す。もう、涙は枯れていた。



【後悔先に立たず】