真夜中、午前0時。寝苦しさから目を覚ます。外はまだ闇に包まれていて何となく不安な気持ちになって、眠ろうとした時、プルルルと電話が鳴った。電話に出ると、
「もしもし? 私だよ」
それは親友の声で私は一体こんな夜更けにどうしたんだと思いながら答える。
「もう夜中よ? 急になんの用事?」
「お願い、少しでいいから話したい」
「分かったわよ。」
やけに切羽詰まった声なものだから断らずに話を聞くことにした。
「ねぇ、私〇〇会社で働いてるって言ったじゃない?」
「そうだね、それが?」
「実はさ、先輩社員に仕事を押し付けられたり陰で悪口を言われたりするの。最初は就職したばかりだから我慢してたんだけどもう限界で──」
彼女の声が震えている。それを聞いて私は涙と自分への怒りが込み上げた。悩みに気付けなかったなんて親友失格だ。そう思いながら、私は言葉を続けた。
「ごめんね、今まで気づかなくて。辛かったよね。これから、一緒にどうするか考えよう。」
「ううん、私のほうこそごめんね。あなたに迷惑かけたくなくてもっと悲しませる選択肢を選んでしまった」
「え? どういうこと?」
「────」
ザザーッ。ザザーッ。ノイズがひどくなる。なにも聞こえなくなっていくその瞬間、最後に彼女がなにか言ったような気がした。
ふと、どうしようもなく眠くなり私は身を委ねるように目を閉じた。着信音が鳴っている。目を開けると朝で私は床に倒れていた。とりあえず電話に出ると親友の両親からだった。
「あの、どうかしたんですか?」
「落ち着いて聞いて欲しいの、あの子が午前0時に地下鉄のホームから飛び降りて亡くなったわ。」
「う、嘘ですよね? だってその時──」
私はその時彼女と話していた。死んでいるわけがない。私は呆然として携帯を落とす。電話越しにはまだ声が響いている。なるほど、死んで成仏する前に私に電話をしてきたのか。そういえばノイズが酷くなった後彼女は言っていた。
「ありがとう、私はあなたの親友で本当に良かった」
馬鹿。私は泣きながら叫んだ。
「───そんなの生きてるときに言いなさいよ!」
『真夜中の電話』
5/17/2023, 11:55:09 AM