Lilisa

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1/6/2026, 3:45:58 AM

 オフィスの窓から見える景色は真っ白で、眼下の大橋を渡っていく車列はスロー。

「わあ、すごい雪」
 呟いた私に、隣の同僚は
「昼には晴れるらしいですよ」
と言った。

「そうなんだ、じゃあ積もってもすぐ溶けるね」
 安堵の返答をしながら、内心では
(なあんだ)
と思っている。

 部屋の中と外の別世界感。
 暖かい室内に閉ざされて、暗くなるまでしんしんと仕事をする。
 肩をすぼめてフードをかぶって、新雪を踏んで帰る。

 それが冬の趣なのに。

1/1/2026, 1:05:43 PM

朝五時半、いつもどおり起きた。
寒い朝、洗濯機を回して、暖房をつけて、家族四人分の簡単な朝ご飯を整えて。
洗濯物を抱えて、二階のベランダへ。

窓を開けると、東の空がオレンジに燃えていた。
平凡な朝のくたびれた私が照らされる。

胸を開いて、冷たい空気を一杯に吸い込んだ。
すっきりと冷えた空気が、神々しい光とともに、肺の奥まで滲んでいく。

この美しい世界で、強く、優しく生きられますように。

2/14/2024, 6:25:47 PM

地方都市にあるささやかな駅ビルに、ある気高き婦人の名を冠した世界的チョコレートブランドが出店している。

いつもなら、値札だけを横目に見て、「お高~い」と胸の内で苦笑しながら通り過ぎる場所だった。


しかしわたしは今日、初めて立ち止まり、
「これください」
迷わず大箱を指さして、一万数千円を差し出した。


大切な私へ、愛を込めて。

いつもありがとう、がんばっているね。
とびきりの感謝は、わかりやすく値段に乗せた。

家路をたどる足取りがはずむ。
ひとりでこっそり箱を開けて、戸惑いながら選び、えいやっと頬張って、小さな背徳と手をつなぎ、陽気に小躍りしてみたい。


明日からは、どんな気持ちであの店の前を通るだろう。

お得意様気取りかな。
「また来年が楽しみ」かな。
「たいして違いがわかんなかった」かもしれない。

どちらにしろ、今までとは違うはず。
わたしは今日、このチョコレートを食べて、ほんの少しだけ世界を変えるのだから。

2/13/2024, 5:34:38 PM

待っててねの距離とタイム

トイレ行くだけだから、待っててね ドア1枚38秒
買ってくるから、待っててね 5メートル1分
お仕事終わるまで、待っててね 4.3キロ9時間
もうすぐごはんできるよ、待っててね いい匂い5分

すぐ戻るから、待っててね
たぶん遠く 3月11日から4723日

2/12/2024, 3:26:41 AM

「みて。ソフトクリーム、売ってるね」

毛玉の多いマフラーの中から、母がぽそりと呟いた。
屋上遊園地の古いワゴン。
お客さんはずっと誰もいなくて、特製ソフトクリームと書かれた細長い旗が風に震えている。

「うん……」
我ながら、この上もなく気のない返事をしたと思う。

「……食べたい?」
私は目を見開いて、母を見上げた。
うそ。だって、450円もするよ。

「まっててね」

まっててね、まっててね。

この場所で、まっててね。


さみしく流れるメリーゴーラウンドの音楽を聴きながら、私はベンチで一人、ソフトクリームを食べ終わった。

寒さに震えるわたしの隣に、係員のおじさんが座った。
「お母さんは? どこに行ったのかな?」
「わかんない」
「え?」
「ここでまってて、って」
「ここで、って……。え……。ええーっ……」
おじさんは立ち上がり、じっと地面を見つめるわたしの代わりに、辺りを見回してくれた。

別のおじさんも来て、しばらくしたら、お巡りさんもきた。

いやだ、連れて行かないで。
この場所から離れたら、お母さんが私を見つけられなくなっちゃう。

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