僕の名前は、音楽にちなんだ名前で。
生まれた時とは違う名前。
きっと親はこんなこと望んでなかっただろうけれど
それでも僕は僕として生きたかったから。
これは僕が僕として生きるための名前。
友達も一緒に考えてくれた
思い出の詰まった
今までと違ってしっくりくる僕の大好きな僕の名前。
─私の名前─
あの日はそうだな、中学最後の花火大会だった。
受験勉強の間に行ったそこでは、人混みの中で背の高い君を必死に追いかけてた。
一緒に屋台は回ったけど、得に買うものもなく離れたところから花火を見ようとした時だったか。
君は僕に耳打ちしたんだ。「あそこにいる子、めっちゃ可愛くね!?」
それが僕ら3人の初めての出会いだったわけで、
それから僕ら3人高校一緒になってさ、ずっと一緒にいたわけよ。ほんとに仲良しで、今でも僕にとってはふたりが1番の友達なんだ。
ふたりが付き合った時も、最初は遠慮してふたりにしようとしたけど、特に今までと変わることも無くて、邪魔者扱いしない君たちがほんとに好きだった。
というわけで、色々あったけどさ、ほんとに僕がいちばん嬉しいんだ。
涙声で続ける。
「結婚おめでとう!」
会場には拍手が響き渡って、僕は一生懸命涙を拭いていた。
天気のいい春の日の、親友の結婚式の話。
─友達の思い出─
彼は自販機で買ったサイダーを飲みながら、屋上で一言
「青春だなぁ」と呟いた。
中学の頃から片思いをしていて、猛アタックして何とか付き合えた彼と、よく昼休みは屋上で共に過ごす。
その日もいつもと変わらず、ただ、時が過ぎるのを他愛もない話をして待っていた。
チャイムがなった時。
彼がふと呟いた言葉に私はクスッと笑って「こんなのでも青春かぁ」と言いながら振り向く。彼の背中には大きな入道雲が重なっていて、どこからか桜の花びらも舞っている。
そんなある日の青い春。
─入道雲─
今日も家を出てあの場所に向かう。
あの場所 とは 森にある少し古びた図書館のこと。
私はずっと自分の好きな本を探している。
面白いと思っても好きじゃない。
好きな本に出会えない。
そもそも好きってなんだろう。
そう思いながらもただ好きな本を探してたくさんの図書館を回った。
そんなもの見つからないのではと思い出したその頃。
初めて森の図書館に来た。
そして、そこには私の好きな本しか無かった。
小説も、面白いだけじゃない。
私の好きな物。
私だけのために作られたかのような図書館。
どれも何回読んでも読み返したくなるような、そんな本だった。
今日も私は森の図書館へ向かう。
今日はどれを読もうか。
─好きな本─
「はぁ……はぁ」
息が切れるが足を止める訳には行かない。
訳が分からない誰かに追われている。
気づいたら走っていた。
もう疲れた。
でも、走らなければいけない。
捕まっては行けない。
でも、あいつはあきらかに私より早かった。
手を掴まれる。
「ひっ……」
冷たい刃物と生暖かい息が首にかかる。
「速報です。今日午前0時、○○区の裏路地で女性が刃物に刺されて亡くなっているのが発見されました。犯人は未だ分かっていません。皆さんも外に出る時は十分に気をつけてください。」
「はぁ…はぁ、助けて」
疲れて仕方が無いが、足を止めたら殺される。
誰かにおわれている。
なぜかは分からないが、走るしかない。
昨日に続けて今日も、きっと明日も夜の街に悲鳴が上がる。
─ただ、必死に走る私。何かから逃げるように。─