晴野遊貴

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1/4/2025, 5:28:59 PM

『本当の幸いとはなんだろう。』


少年はつぶやいた。
ぼくは答える


「みんなの本当の幸いのためならば、
もしそんなものがあるならば、ぼくはたとえ、なんべんでも体を焼かれたってかまわない。けどね、」

「きっと、ぼくにはぼくの、きみにはきみの、ひとつ
ひとつの幸せがあるだけさ」






『お母さんは喜んでくださるだろうか。』

「きみのお母さんは泣いていたよ。でもきみのこと
立派だとおっしゃっていた」







『ほらあそこ、きらきらひかってきれいだねえ。
ぼくのお母さんも手を振っているよ』


「ぼくには大きくてまっ暗な穴が見えるよ。
ぼくにもきみの景色が見えたらよかったのに」





今でもすべて憶えている。














「「ねえ、ぼくたち、どこまでもいっしょにいこうね。

カムパネルラ!」」











声が重なった。かつてのぼくと共に。



「……行けたらよかったのにねぇ。
ぼくのひとつの幸せはね。カムパネルラ、きみと友達であることだったんだよ。」



これが夢であることを、いつも同じ台詞で思い出す。


「きみが友達であることが誇りで、何より嬉しかった。
いじわるなザネリなんかのために、君が沈むことなかったのに」


そして彼は消えているのだ。あの時と同じように。





銀河鉄道。ぼくとカムパネルラが最後に一緒にいた場所。あのときはまた昔のように仲良く語り合えた。
そのときにはきっともう、カムパネルラは沈んでいたのだろうけど。


水底にいるはずの彼と、遥か銀河を走る汽車の中で語らったあの時間を、私はこの年になった今でも夢にみている。何回も、意味のない返事を虚像に向かって放り投げていた。

「なぁカムパネルラ。君は、君のひとつの幸せを手に入れられたのか?」


そう問いかけたとき、半分夢から醒めているのがわかった。かつての面影もない、年老いた姿で虚像を見つめる。
同じことの繰り返し。返事がないとわかっていても、
目が醒める前のこの問いをやめることは、
いつまでもできなかった。

虚像が静かにこちらを見つめている。








……虚像が静かにこちらを見つめている。まだそこにカムパネルラが立っている。なぜだろう。




『ぼくは本当の幸いを手に入れたよ。ぼくは立派な行いをした。お母さんは褒めてくださったでしょう?
そして友達と素敵な旅ができた。これ以上の幸せったらないよ』


「嗚呼、まさか」


『ねぇジョバンニ。もう少ししたらぼくら、
本当にどこまでもいっしょに行こう』


これは夢だ。わかっている。わかっている!
だけどもそうか、夢だもの。ちょっとばかし自分の嬉しい方へ向いてもいいじゃないか。


「きみか、きみなのか。ぼくのこと、迎えにきてくれたのかい」


彼はポケットから小さな紙切れを取り出して、私に手渡した。


『あのとききみが持っていたチケットには劣るけどね。ぼくらこれでおんなじとこまで行ける。』


それは小さな切符だった。かつてカムパネルラや他の乗客が持っていたのもこれだったのだろうか。


「また、会えるのか?」


『きっとまたいろんな星を見に行くんだ。約束しよう』






眩い光で目が覚めた。頬を伝う冷たい水で、嗚呼やはり夢だったのかと頭も冴えた。




頬を拭ったとき、何かを握りしめていることに気がついた。



古びた、1枚の切符。







私は約束の日までに身の回りの整理と彼への長い土産話を書き留める作業に追われた。







切符の日付は、次の星祭りの日。再びあの銀河鉄道に乗る日まで、あとxx日。

1/3/2025, 2:56:37 PM

初日の出。

年始最初の日の出である。ただの太陽。
なのに、わざわざ休みの日に、早起きして!
拝みに行こうとする人間が一定数いる。

せっかくの休みに俺は早起きなんぞしたくない。

そもそも前日の大みそかは夜ふかししても良い日なのだから次の日にはゆっくり昼まで休むべきではないか?

初詣や初日の出を見に行くよりかは、寝正月を満喫して、正月明けの学校や仕事に備えるべきでは?

そんなことをだらだら文句を言っていれば、母から
「お年玉が欲しかったらついてきなさい。寝坊したらおいてくわよ」
と人質(金)を盾にされた。

仕方がないので半分寝ぼけながら家族で神社へと向かった。近所の神社は山の上にあるので、そこから日の出も見える。初詣のついでに初日の出を眺めることができる場所だ。

寒い中震えながら待っているとようやく日が差してきた。神社の砂利や石畳がキラキラ輝いている。
眺めていると、砂利の上に何か透き通る物が光っていた。拾ってみるとそれは蛇の抜け殻だった。それも多分白蛇。日にかざしてみると、抜け殻の鱗の形が光に透けてよくわかった。

丁寧にそれをしまい、初詣を終えて帰宅した。
おみくじも引いた。

中吉
金運:神の加護あり

早起きは三文の徳とはこのことだろうか?懸賞でも当たるのだろうか

家では無事今年もお年玉を貰って一安心したので、試しに何か運試しをしてみようかと蛇の抜け殻を部屋のテーブルに飾って考えていた。

「それどうしたの?」
昨日から家に泊まっていた叔父に尋ねられた。神社で拾ったことを話すと、白蛇は縁起がいい。今年の干支でもあるから尚更だ!譲ってほしいと言い出した。

神の加護ありかもの金運アイテムをそう簡単には渡したくない。追加のお年玉を検討してくれるならと交渉した。
+5000円くらいもらえないかなと思ったところなんと叔父は諭吉2人、渋沢3人をくれた。三文の徳!!と思って喜んで金運アイテムを渡した。いい取引をした!



2ヶ月後、叔父が宝くじを当てた話を聞き、俺は神社に蛇の抜け殻を探しに行った。

1/2/2025, 2:30:39 PM

健康第一!
やりたいと思ったことを無理しない程度に実行する!
やれるうちにやりたいことやっといて
少しでも理想の自分に近づくのだ!!!!

10/25/2024, 2:17:33 PM

友達ってどんな関係?


『類は友を呼ぶ』なら、似た者同士?

けれど、「あらしのよるに」出会った2匹は、
姿かたちは違うし、食べるものも住むところも違った。だけども友達のままでいるために、野を超え山を超え、
2匹で過ごせる緑の森まで命懸けで辿り着いた。


だったら『相手の為に頑張る』のが友達?

ボランティアや寄付、献血する人ってみんな友達になれる?もしかするとお互いの顔や名前すらわからないかもしれない。


『一緒にいて楽しい!嬉しい!』のが友達?

じゃあけんかしたらもう友達じゃない?








ねえ、『友達』ってどんな関係?


教えてよ。どんな関係になれたら君と友達?

10/25/2024, 2:04:06 PM

「行かないでよォ」

大学進学で県外に出る時、祖母に言われた。

「こっちの大学でもいいでしょ?外なんか行ってどうすんのさ、全く……。
本当は女の子が進学ってのも必要ないと思うんだけどねぇ」

はっきりと言ってきたのは祖母だけだったが、両親も心の内では思っていたらしく、

「しかも私立だもんねぇ」
「いつでも帰ってこいよ」

と言っていた。
が、知ったこっちゃないので県外に進学した。私立とはいえ特待生で国立よりもかなり学費は安くなったのだ。入学金は払ってもらったが、残りの学費は自力でなんとかする予定である。



それから大学生活を大いに楽しみ、そのまま都会で就職をし、それなりに良い生活を送っていた。

「それでさァ、もし結婚するってなったら彼氏の地元行こうかなって思ってるんだけど、綾はどう思う?」

大学時代に彼氏ができ、卒業後もなんとなく続いていた。当初の様な盛り上がりはなかったが、まぁこれからも一緒にいてもいいかなと思っている。

「えぇー、辞めときなよ。健太ん家の親面倒くさいよ?」

同じく大学時代にできた親友の綾が、彼氏と地元が同じということで少し相談をしていた。

「そうなの?」

「うん。絶対嫁いびりするタイプ。しかも健太長男じゃん?うちの地元の行事とかめんどいしさぁ、亜美じゃあついてけないって!」

「えぇ〜。婿入りにしてもらおっかな笑」

「いいんじゃない?あっち住むの無理あるって。それかさぁ、新しい彼探したら?もう恋愛って感じじゃないでしょ?」

「まぁ、うん。でもそういうのって恋が愛情に変わったって言うじゃん?家族的なさァ」

「長年一緒だから情があるだけじゃん?もっといい人いるかもよ?」

「そう言われるとなァ……。」

綾に言われるとそんな気もしてくる。嫌いじゃないからただ一緒にいるだけのような……。

「うーんとりあえず嫁入りは無しの方向で。結婚したとしてもこっち残ろうかな!」

「それがいいって!亜美にはこっちの方があってるし、まだまだあたしと遊べるじゃん!」

「それな!てか結婚しても全然綾と遊ぶし!!ってか遊ぶで思い出した!今度ここ綾と行きたいなーって思ってて……、」


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亜美が楽しそうに次の計画を話している。本当に良かった!遠くに行ってしまわなくて。



あの健太に彼氏ができた時はとても驚いた。
あのいじめっ子。
大学デビューして格好つけて。見た目だけの野郎。
彼女はどんな趣味の悪い女かと思ったら、



亜美は、誰よりも、素敵な女の子だった!



それから4年間は夢のようだった。亜美に会う前の生活なんて思い出せないくらいだった。
健太の野郎が彼氏だということだけが気に入らなかったけど。

亜美は優しいから、欠点だらけのあの野郎のことも寛大な心で許しているのだろう。
それにあんなでも亜美の事を少しでも幸せにしているのならば邪魔してはいけない。だからずっと我慢していた。
だけど、


『それでさァ、もし結婚するってなったら彼氏の地元行こうかなって思ってるんだけど、綾はどう思う?』

結婚!?あの男と!そしてここを離れる?あっちで生活をする??


無理無理無理!!
そこまではもう耐えられない!あいつのせいで亜美に会えなくなるなんて!


だから亜美を誘導した。事実だけを話して。
あたしが亜美に嘘をつくなんてありえないので。

あいつの親は息子を甘やかし、いじめの事実が露見しても、最後まで認めなかった。謝罪の一つもよこさなかった。あいつらの家族になんてなったら亜美がどんな目に遭うのかわからない。

あの学校と地域も同じ穴のむじな。隠蔽体質だもの。あたしが知ってる以上の事なんかいくらでも出てくるだろう。

でもそんなことを知って優しい亜美が傷ついてはいけないので、たくさん言葉を飲み込んで、必要最低限だけを話した。




「あとさァ、ここ行きたいんだけど!ちょっと聞いてんの綾?」

「聞いてる聞いてる!飛行機の予約取ろうよ」


きっかけはもう作ってあるので、あの男とは近日中に別れさせる。絶対に亜美にはもっとふさわしい人がいる。
だからそれまではあたしが亜美を幸せにする。亜美が結婚を望まないなら最期までずっと。
だからね亜美、

「どこにも行かないで、ね。」

「えなに?」

「何でもないよー」

離れないで、側にいてくれればそれでいいから。

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