あひる

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3/6/2023, 2:09:55 PM

お題「絆」



以心伝心。
俺達2人に相応しい言葉だと思う。

「おい!あっちいったぞ」

「まかせろ!」

逃すわけにはいかない
相棒に後ろを追わせ、俺は周り道をして敵を挟み込む。
指示なんてしなくてもこんなの朝飯前だ。

「いやー今回も余裕だったな」

「ああそうだな」

敵は計画通り俺が周りこみ路地裏で相棒と挟みうちにした。
俺の方に強行突破してこようとしたが、生身の人間同士じゃ負けるわけもなくあっさり捉えた。

ここの街はスリが多い
昔から変わらず治安が悪い街だ
今回も観光客が狙われたようだ
ここには観光名所もないだろうに、物好きもいるもんだ。
毎日のように犯罪が起きている

「俺達がいなきゃこの街はもっと荒れてるぜ」

「言えてる」

俺達が警察になりこの地に配属されて5年になる。
しかもたった1人の同僚は俺の幼馴染だった
昔は良く2人で遊んでいた。悪さをする時も2人一緒だった。

「まさかお前が警察になってるとは思わなかったぜ」

「それは俺の台詞だよ」

「昔先生から逃げる時も、罠仕掛けたり、俺が囮になったり色々やったな」

「ああ、今も俺らのコンビネーションは衰えてないよ」

互いに過去の話で盛り上がった。
俺の中で1番信頼出来るのが彼だ
どんな時でも頼れる相棒だ

そんな事を考えてると近くで悲鳴が聞こえた

「なんだ?」

「乱闘だってよ」

「よっし、華麗に解決しよう」

「じゃあいつものように頼むぜ相棒」

そうして今日も事件現場へと足を運んでいった。



3/6/2023, 9:24:35 AM

お題「たまには」



朝起きて顔を洗い歯を磨く
昨晩の残りを適当に盛り付けた朝食をとる
スーツに着替えて出勤する
毎日激務に追われて、仕事が終わるのは21時頃
帰りにスーパーにより値引きのお惣菜を買う
帰宅したらシャワーを浴び
お酒を嗜む程度に飲みながら夕食を食べて寝る

「最近はずっとこんな感じだな」

帰りの電車に揺られながら、ため息混じりの声を出しながら考えていた。
出勤時間は満員の電車もこの時間は空いていてだいたい座れる。

「何か趣味でも見つけようかな」

電車の中、片手にスマホを持ちながらインターネットで色々探してみた
どれもぱっとしない
そもそも30年間趣味という趣味も無くなんとなく過ごして来た人間だ。今更何を始めろというのだ。

「このままじゃ仕事が趣味になるな」

そんな事を呟いているが
土日の休日は友人と遊んだり、自宅で映画鑑賞やスマホをいじったりはしているので、それなりに充実してる毎日ではあると自負してる

「他人から見たら俺ってどう見えるんだろう」

平日仕事して土日は休む、それの繰り返し。
何か誇れるものがあるわけじゃない、特段今の仕事が好きってわけでもない。

「やっぱ何か新しいこと始めなきゃな」

しかし自分は慎重派だ
大抵のことは行動より思考が勝ってしまい、行動せずに終わることが多い
今回もただの気の迷いで、明日になればいつもの日常に戻るのだろうと少し考えてしまっていた。

ブー♪ブー♪

ふとスマホが鳴った
もちろん音は出してないのだが、振動で電話が来たのを感じた

「母さんか」

スマホの画面を見て母からの電話だとわかった
通話を切り、LINEで連絡を入れた

「今電車、後でかけなおす。っと」

上京して5年はたったが、地元に1度も帰っていない。
母からの電話も久しぶりだ。

「そっか、そういや当分帰ってなかったな。たまには地元に帰って気分転換もいいかもな」

愉快な様子で男はさっそく、両親と地元の友達にLINEを入れた。


3/5/2023, 4:54:07 AM

お題「大好きな君に」



世界中の誰よりも俺は君のことが大好きだ


近所の近くに見晴らしのよい公園がある
その公園まで行くのには階段があるのだが、千段くらいはあるのではないだろうか
もちろん憶測で実際に数えたことはない
それだけ気軽には行きたくない公園なのだ

しかしその公園のフェンスから見える夜景がとても綺麗で、俺のお気に入りのスポットの1つだ。

「好きです」

俺は気持ちを言葉にして表した
時刻は深夜をまわっただろう。公園は静まり帰っており。数個の街灯が1人の男を照らしている。
そう、公園には俺1人だ

「うー緊張するー」

俺は明日好きな人に告白する
誰に言われたわけでも、何か特別な日でもない。
この気持ちを本人に伝えたい。
その思いが溢れすぎて、今日決心した。

「下見で来てみたけど、さすがにここに連れてくるのは露骨すぎるかな」

こんな公園に2人で来たら流石に告白する前に勘付かれそうだ。彼女とは幼馴染で仲は良いからついて来てはくれそうだけど。
それとももう勘付かれてる?それか1人じゃなく何人かで友達連れてくるか?いやいやそしたら告白しずらいよな?どーしよー
頭の中でぐるぐる考えが巡ってくる

「まあ計画なんて大抵思い通りにはいかないもんだよな」

そう自分を納得させ
明日はとりあえず彼女を公園に誘って見ることにした。

その日は帰っても、緊張で上手く寝付けなかった。

次の日の帰り俺は彼女に一緒に帰ろうと誘った
久しぶりに誘われて彼女は少し驚いた表情をした

「え、めずらしー!いいよ!」

彼女はいつも一緒に帰ってるであろう友達と教室で挨拶して俺と一緒に教室を出た
多分彼女は何か勘づいてる。
心臓の鼓動が急に高まった。

「今日はどーしたの?」

「いや、久々にお前と喋りたいと思ってさ。いやー学校じゃあんま喋る機会ないじゃん?」

「えー喋りかけてくれればいいじゃん」

お互い笑ったり、怒ったり、彼女との他愛ない会話がとても幸せだ
彼女と会話してる内に昨日した告白の練習を思い浮かべてた。気持ちが溢れそうだ

「あのさ、俺お前が好きだ」

自分でも今何言った?と疑問に思った。
考えるよりも先に言葉に出してしまったようだ
本当は今からあの公園行かね?って自然な感じで誘うつもりだった俺はかなり焦った。

「え、私を好きってこと?」

こいつ
聞こえてないフリでもしろよ
とか心の中で文句を言ってみたが何の意味もない

「いや、えっと」

言葉を濁してしまったが、もう腹を括った

「好きなんだよ。お前の事が世界一大好きなんだよ!」

緊張して声を張り上げてしまった。
恥ずかしい。大声の告白に加え自分の顔も熱くなってるのが分かる
目を合わせられない

彼女はそんな僕を見て笑ってた

「あはは、大声で叫ばなくても聞こえるのに」

俺は一瞬睨んだ
その顔を見た彼女は笑顔のまま喋り続けた。

「私も好きだよ。あっこれは幼馴染としてじゃなくて1人の男の子してね。ってなんか恥ずいね」

俺は嬉しさや驚きで呆気にとられ言葉が出なかった。
そんな俺を見て彼女は

「ねえ、もうちょっと一緒にいたいし、今からあの公園行かない?」

それ俺が言う台詞だったのにと思ったが
俺の返答は決まってる

「俺も一緒にいたい。行こう」



3/4/2023, 2:18:36 AM

お題「ひなまつり」



「ママーひなまつりってなーに?」

物心がついてきた私の娘は明日のひなまつりについて興味深々だ

「んーとね、ひなまつりの日はお人形さんを飾ってね、美味しい物をたっくさん食べる日だよ」

「いーなーお人形さん飾りたい!これも飾っていいのー?」

手にリカちゃん人形を持って娘が問いかけてきた。
ひな壇に飾るのは雛人形なのだが、ここは正直に言おうか迷ったが

「うんそーだね、リカちゃんも飾ってあげよっか」

娘も喜んだのでこれでいいだろう
現代は多種多様性なのだ、ひな壇に飾るものに拘る必要もない
私は押し入れにしまってあるだろう雛人形セットを探し始めた

「んーーここにあったような」

押し入れを探してもなかなか見つからない
ひなまつりに雛人形を飾るなんて何年振りだろう
今週は娘と夫と私の実家で週末を過ごすために久しぶりに帰省していた

「全然見つからない、お母さん捨てちゃったかな?」

押し入れは少し埃臭い、何年も放置していたのだろう。
スマホの明かりを頼りに、暗い押し入れに潜って1時間ぐらい探していた。

「あった!」

段ボールの中からは、懐かしい人形がでてきた。
埃は少し被っていたが人形は綺麗だ

「これがお雛様で、こっちがお内裏様だ!」

少し興奮気味な私は雛人形達を眺めながら、暗い押し入れで鼻歌を歌っていた

「〜♪」

「それ知ってる!私も一緒に歌う!〜♪」

押し入れの外から娘が私の真似をして歌ってくる
娘はちゃんと歌詞を付けてるのを不思議に思った。
どこで覚えたのだろう

私は微笑んだ
私も昔お母さんと一緒に雛人形を飾って、一緒に歌を歌ったな
懐かしさが込み上げてきて少し瞳が潤んだが、すぐ切り替えて

「明日は楽しもうね!リカちゃんもいっぱい飾ってあげよう!」

そう娘に伝え
押し入れの中で雛人形セットをまとめながら「うれしいひなまつり」を歌っていた。






3/2/2023, 2:08:23 PM

お題「たった1つの希望」



誰にも僕の声は届かない
暗くて狭い
おまけにこの場所の温度が低いせいか、体の震えが止まらない。

「いつになったら出られるんだ」

10メートルはあるであろう穴の底で膝に顔を埋め男が嘆いた。
もう2日はたったのではないだろうか、時間を知るすべが地上の明かりで判断するしかないため正確な時間は分からない

初めは脱出方法しか考えてなかったが、今は空腹や不安で頭がいっぱいだ。
幅は2メートルくらいあり、土も掘ったら崩れそうだ。

雨が降ってきた

「穴に水が溜まれば上に上がれるんじゃないか?」

しかし待てど待てども雨水は土に吸収されていく
期待はすぐに水に流されていった。
期待するだけ無駄だ。何か奇跡が起こらない限り僕が助かるはずは無い。
僕の思考は完全に停止している。
ただこの寒さと空腹に耐えるだけ。
幸い雨が降って来た。飲み水を確保出来たのでそれだけは天気に感謝した。

「誰かきてくれ」

ここは立ち入り禁止区域だ
誰かがくるはずもない
しかし、連絡手段も脱出手段も無い僕にはそれがたった1つの希望だった。

「うう…寒い」

雨は強くなっていく
体温の下がり方も尋常じゃない
自分の体は自分でよく分かる。
意識が薄くなってきた。
何も考えられない

「誰、か」

顔に何か当たった

「なん、だ?」

目を開けると目の前にロープが垂らされてる
上を見上げると何人かの人影がある
耳に意識すると雨音に混じって何やら人の声が聞こえる

「しっかりしろ!今助ける!」

僕は最後の力を振り絞りローブ引き付け、それを体に括り付けた
引き上げられてる感覚を感じ、僕は安堵した。

「手で穴を掘るのに夢中でこんなに深く掘るなんて、僕はなんてドジなんだ。」

雨音にかき消された男の声は誰にも届かない

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