いつからだろう
外に出ることがひどく恐ろしいと感じるようになったのは
何もせず、
自堕落に過ごす自分にこんなにも嫌気が差しているのに
起きた瞬間に、もう日は高く昇っていて
明日は、明日こそはと意気込みはできるのに
もう良いかなって
そう思う自分を、
最低で価値ない奴って
思う自分が貶して、
首を絞める
何も酷い目にあっていないのに
なんで、自分はこんなにも情けないんだろう
肌にカッターを滑らせても、
中で燻っているワダカマリは流れ出てくれないの
ただ痛いだけ
こんなことしたって、出れるようになるわけじゃない
分かってる、分かってる
分かってるの
だから、変に気を使わないで
前みたいに接してほしいな
グズグズになった私を
受け入れて
雷怖い?
大丈夫だよ。だってほら、光ってからすぐに音は鳴ってないでしょ?
実際に落ちたのはここからずっと遠くなんだよ。
だから、大丈夫。
何かあっても、私が必ず守るから。
毛布に包まって、縮こまった私の背中をさすって、
抱きしめてくれた。お姉ちゃん。
父さんと母さんは、酷い天気でも、忙しくてずっと家を開けていて。
ふたりっきりで過ごした、小さい頃の大切な思い出。
私とお姉ちゃんが過ごせた最後の思い出。
あの時と同じ酷い天気で、窓は軋んで、
激しい光に瞬間照らされる。
縮こまりながら、心のなかで数を数える。
お姉ちゃん。怖いよ。
助けにきて。
お姉ちゃんは来ない。来れるわけがない。
だって、もう会えないから。
自然と溢れてしまう涙をそのままに、
私は目を閉じ、自身を抱きしめる。
大丈夫。大丈夫だよ。
口に出した声は、お姉ちゃんとそっくりだった。
あのコは水から生まれたのかもしれない
夏は好きだけど、暑いのは苦手みたいで
机に溶けて、冷たいペットボトルを首すじに当てていた
憂鬱そうにしているあのコは、水が好きで、
水もきっとあのコのことが好き
じゃないとあんな風には泳げない
私は何だか引き込まれてしまいそうだから、水は苦手
それでもあのコが、楽しそうな姿が見たくて、
長い間、最前列で応援して、サポートしている
休憩中、火照った体を冷ましたくてプールに足を浸ける
あのコはスルリと上がり、私のそばに座った
ずっと泳いでいたあのコの手はヒンヤリとしていた
いつもそばにいて特段話すことも無くて、無言が続く
不意に、あのコが話しかける
「今日の夜さ、海いこうよ」
いつもと、声色が違う気がして、
あのコの眼を見る
こんなに暗かっただろうか?
見つめていると吸い込まれてしまいそうで、
目を逸らす
そんな様子を気にせずに、あのコはまた誘う
今日は予定があると、立ち上がって、あのコから離れる
「そっか」
そういったあのコの眼は、いつもみたいにキラキラしていた
あのコは、私の知っているあのコなのだろうか
いつもより早くの下校。
早く帰りたい気持ちと、まだあなたといたい気持ち。
大きな気持ちはもちろん後者で。
茹だるような暑さのなか、自転車をカラカラと押す。
コンビニで涼もうと、あなたは言う。
わたしはグレープ。あなたはソーダ。
目をキラキラと輝かせ、美味しそうに頬張るあなた。
わたしが選んだのは、コロコロしたのが数個入っているものだったから、
おすそ分けする。
嬉しそうなあなた。
ふと、目の前にアイスキャンディー。
おすそ分け!
カラリと笑うあなた。
一気に頬が熱くなったのは、夏のせいではない。
今もずっと、考えているんです。
こうやって泣いているわたしを、あなたが颯爽と現れて、
何処か遠い場所へ連れ出してくれないかって。
わたしがあなたを愛している様に、あなたも、わたしを、って
ありもしない可能性を何時までも求めて。
あなたにも、わたしにも家庭があるのに。
わたしは身重になってしまって、益々死ねなくなってしまった。
わたしが誰よりも、何よりもいちばんあなたを愛しているのに。
あの女と、あなたのお父上がバカみたいに駆け落ちしようとしたばかりに。
あなたのお母上のお気持ちが分からないわけでは無いんですよ?
でも、だからといって、わたしたちを引き離すだなんて。
あんまりです。
わたしたちのほうが先だったのに。
あの女の娘だからって、
他人から、あんな目で見られたのは久々で。
ねえ、どうして来てくれないの?
お母上の紹介で夫婦になった、あの素朴なのがあなたの好みなの?
どうしてあなたの家では笑いが絶えないの?
どうして?
今もずっと、考えているんです。
段々と大きくなるこの腹の中身が、あなたとの子ならって。
それなら、そばにあなたがいなくても、
わたしは笑えるんです。
早く楽になってしまいたい。
そうして、空からあなたを捕まえて、溶け合ってしまいたい。
あなたもきっと、おんなじ気持ちでしょう?