あのコは水から生まれたのかもしれない
夏は好きだけど、暑いのは苦手みたいで
机に溶けて、冷たいペットボトルを首すじに当てていた
憂鬱そうにしているあのコは、水が好きで、
水もきっとあのコのことが好き
じゃないとあんな風には泳げない
私は何だか引き込まれてしまいそうだから、水は苦手
それでもあのコが、楽しそうな姿が見たくて、
長い間、最前列で応援して、サポートしている
休憩中、火照った体を冷ましたくてプールに足を浸ける
あのコはスルリと上がり、私のそばに座った
ずっと泳いでいたあのコの手はヒンヤリとしていた
いつもそばにいて特段話すことも無くて、無言が続く
不意に、あのコが話しかける
「今日の夜さ、海いこうよ」
いつもと、声色が違う気がして、
あのコの眼を見る
こんなに暗かっただろうか?
見つめていると吸い込まれてしまいそうで、
目を逸らす
そんな様子を気にせずに、あのコはまた誘う
今日は予定があると、立ち上がって、あのコから離れる
「そっか」
そういったあのコの眼は、いつもみたいにキラキラしていた
あのコは、私の知っているあのコなのだろうか
8/23/2025, 5:14:12 AM