キッカケは下らないことだった
私が気に食わなかったんでしょ
無視
暴言
暴力
どんどんエスカレートしていって
曇った顔をしてた奴らも
あんたと同じようにニタニタ笑って
何度飛び降りようと思ったか
何度あんたの首を折りたいと思ったか
知らなかったよね
私も笑ってたから
イジりの延長だと思って
自分のほうが上だって
誤解させちゃった
これが最後
あんたと私にはお似合いだよね
大丈夫
一緒に地獄に堕ちてやるからさ
だからみっともなく泣くなよ
気持ち悪い
あなたはずっと、私にとって雲の上の存在で
憧れて、あなたのようになれたらとどれほど思ったことでしょう
手を伸ばして、あなたに触れたくて
でもきっと、あなたに触れることは私なんかにできない
そう思いつつも、あのとき見たあなたが焼きついて離れなくて
ここまで生きてきました
あなたは大袈裟だと言うでしょうが
私は、あなたの枷になりたかった
あなたの生きる意味になりたかった
あのとき、私の思いを伝えられていたら
あなたはもっと、歳を重ねることができたでしょうか
未だ、天で待ってくださっているのなら
改めて、面と向かってあなたを呼びたいのです
わたしの親友は、天才だ
小さい頃から歌でも絵でもとにかく何でも
やったらすぐに上達して、周りを追い越して一番になる
私は、きっといわゆる凡人で
何をやってみても、それなり
上達できても、周りは追い越せない
親友のことは好き
でも、自分には何もないんだなって
私のほうが先に始めてたのに
とか、悪い方にどんどん考えて
突き放したこともあった
棚の隅にすぐに見えないように
スケッチブックが何冊もあった
パラパラと目を通せば、
決して上手くはないけれど、
楽しそうな絵がたくさん
たくさんあった
見漁っていくと、
スケッチブックは中学の頃で終わっていた
残り数ページはまっさらで
机にあるペンが目についた
また、描いても良いのだろうか?
ずっと流させれるままに生きてきた
楽な方に楽な方に
生温い風が僕の頬をなでる
今は春だったか
季節の感覚もあやふやで
暗闇の中犬が僕をじっと見つめていた
「来て?」
そう言って手を伸ばす
いつもの様に笑えているだろうか
犬は戸惑うことなく恍惚とした表情で僕の手を取った
君はずっと ただ僕を見つめていたね
墜ちていくなか
撫でつける風と身体が溶け合うように感じながら
下へ
下へ
すべての人が、皆が皆生涯を終えるまでにだいそれたことが
できるわけじゃないんだよ
だから、いつまで経っても夢を追いかけることはできないんだよ
寝る間も惜しんで、頑張って、このまま好きなことを続けたくて
両親に思いを伝えたらそう言われた
才能がなかったんだ
そう気づけたのは、結局諦めて普通に大学に行って、就活して、
仕事を始めて、好きだったことを主観ではなく客観で見れたときだった
それからは、好きなことは手に付かず、
ずっと仕事のことを考えて、仕事に打ち込んだ
仕事に慣れて、1人である程度できるようになった頃
同じように夢を追っていた友人から合コンの誘いがあった
友人は金銭的に苦しいながらも、前と変わらず陽気なやつだった
断ろうとも思ったが、久々に話したいと思った
そこで僕はあやさんに出会った
あやさんは友人の知り合いで
落ち着いた雰囲気の女性だった
長居する気は無かったので、2次会に移る前に
友人に挨拶だけして帰ろうとしたら、
あやさんも帰るようで、途中まで一緒になった
当たり障りない話をしていたら、趣味の話になった
あやさんは今も僕が熱中していたことを休みの日にやっているらしい
苦戦はしているが、段々と上達していくのが楽しいと言っていた
あやさんがあまりに楽しそうで、酒が回りだしたせいか
僕もやっていたとあやさんに伝えた
あやさんは目をキラキラと輝かせて、練習に誘ってくれた
でも、僕は才能が無いから
そう断ると、あやさんは目を丸くして
どうしてそんな事言うんですか?好きならやったって良いんですよ?
と、やけにハッキリと言った
正直面食らってしまった
それから、才能がないなら続けたって意味がないと、
僕は、あのときの両親と同じような考えになってしまったんだと
気づいてしまった
ぼーっとする僕を真正面からあやさんは見つめて
あなたがやってきたこと、好きだったことを
あなたが否定してどうするんですか?
今のあなたは、過去のあなたがいて成り立っているものでしょう?
僕のことなのに、あやさんはじわじわと涙を浮かべながら怒っていた
初めて、僕のしてきたことが心から肯定されたような気がして
僕の視界をぼやけてきた
これはきっと酔いのせいでは無い
僕は久々に、過去の僕の方を見ることができた気がする
メジャーデビューしたりしてないけど、死ぬまで好きなことやりてぇなって
今、思えてるぞって
過去の僕は、きっと苦虫を噛み潰したような顔するだろうが、
まぁ、いっか!って言ってチューニングを始めると思う