あの人は空に似ている。
満点の笑みはさながら太陽そのものであったし、
蓄積した想いに耐え兼ねて涙を流す
ところもまるで予測のつかない通り雨のようだった。
美術館で惹かれる絵画に出会った日には、
目に星が宿ったりもしていた。
パンケーキやガトーショコラやらの甘味にかける
粉砂糖の量がやたら多かったという点を含めたら、
雪を纏っていたとも言えるかもしれない。
流石にこじつけに思えるけれど。
「生地が見えないくらいがちょうどいいんですよ」
と微笑む瞳は優しい三日月だったような気がしている。
気まぐれで、強情で、
こちらの意見などものともしない。
手を伸ばしたとて掴めやしないし、
こちらが引いたとて何も変わらない。
征服なんて夢のまた夢。
それでも、たしかに目が離せない。
あの人の光を身一つで受けるあの時間が好きだった。
何時だって写真に収めたくなるほど美しく
時に神様も吃驚するほど残酷で
そして、
二度と手に入ることのないあの人は
たしかに空に似ていた。
2025/07/07[空恋]
星に願ったって叶わないなら
精々最期の悪足掻き
許せない
私ばっかり苦しいなんて
許さない
1人で幸せになろうなんて
私のものにならないのなら
誰も愛せない様にしてあげる
星なんかと比にならない
強力で執拗な魔法をあげる
左様なら、愛に満ちた貴方
「 。」
本当は望まぬ不幸
幸せでいてほしかった
笑顔でいてほしかった
永遠に私の光でいてほしかった
でも
許せなかった
幸せになる貴方を
劣情を持ってしまった
怒りすら感じるほど好きになってしまった
貴方に釣り合わない私を
御免なさい
どうか
愚かな私を許さないで
愚かな私を
一生
一生、覚えていて
「愛しているわ」
愛憎渦巻く
慣れない魔法に全てを注いだ
無垢な少女は月の生贄
それでも、
ムーンストーンは光らない
月に願ったって叶わなかった
魔法はそう簡単に頼るものではない
2024/05/26【月に願いを】
窓ガラス越し
降り止まない雨を横目に
慣れた手つきで珈琲を2杯注ぐ
前より味を感じなくなった
今日はなんだか電気を付ける気にならない
月明かりを頼りに椅子に座る
雨
君は雨が嫌いだった
雨の日はいつも
窓際のこの椅子に座って外を眺めていた
『降り止まなかったらどうしましょう』
なんて言っていたのを思い出す
その言葉を聞く度に
「止まない雨なんてないよ」
と慰めながら珈琲を入れてあげていた
幸せだった 人生で一番
救いだった あの時間が
なのに
なのに
もし、
あの日雨が降っていたら
君は外出なんてしなかったのだろうか
ずっと
ずっとここにいてくれただろうか
『やっぱり晴れの日が一番ね!』
今更降ったって何も変わらないんだよ
僕が虚しくなるだけだ
だから
だからせめて
「今日ぐらい晴れてくれよ」
一輪の白百合が揺れる
雨はまだ降り止まない
2024/05/25【降り止まない雨】
シルクの様な白色の髪
手入れを怠るは厳禁
レースに包まれた華奢な手
穢すことのないように
ライトピンクのクラシックロリータ
何時だって貴方が一番
最後の仕上げに甘いメイクを、
『可愛くない』
向き合った鏡に映るは現実
逃れられない
紛れもない真実
低さの増す声色
可憐さを失う身体
見下ろすことが多くなった
その全てが失望を意味する
何もかもが心と相反する
失われていく
培ってきた努力が音を立てて崩れていく
成長
現実
制限時間
逃れられない
今日も1枚鏡を割った
逃れられないのなら
眼を逸らす他ない
仕様がないことだ
"僕が僕でいるために"
「理想に犠牲は付き物だから」
チョーカーのリボンを短く切った
2024/05/23【逃れられない】