天使の輪を宿す白い髪
穢れを知らない青き瞳
純白のドレスに身を包む
字をなぞるその視線すら愛らしい
愛しい我が君
どうか
どうかそのままでいて
いつまでも
何も知らないままでいて
頑丈に閉められた窓
開くことのないレースのカーテン
日が差すことはない
まるで鳥籠
でもそれでいい
君の純白を守るため
外の奴らと君は違う
分かってる
分かっている筈なのに
時々、君が酷く穢れる夢を見る
『大丈夫だよ』
いつ何時も
君の声は美しい
悪夢なんて忘れてしまう程
僕の幸せは
今の君が成す全て
嗚呼
どうか
どうか
僕の理想の貴方でいて
どうかこの儘
「僕を幸せ者でいさせて」
鳥の想いも露知らず
何も知らないなんてどの口が
夢見る者に現実の声など届かない
どうか
どうかそのままでいて
いつまでも
其の儘夢に溺れていて
『一生、私を飼い慣らしていて』
今日も2人は
互いに理想を象り合う
2024/05/20【理想の貴方】
満点の青空
早咲きの桜
写真を撮る 春色の君と
青い春が似合う君と
肩を並べて笑う僕ら
今年もこの言葉を口にする季節が来た
「来年も一緒に撮ろう」
毎年満開の桜と写真を撮る
それが僕らの約束であり、
日常であった
今日この時迄は
突然の春嵐
桜を散らしていく
手から零れ落ちる淡い青春の1枚
気付けば写真は君の手の中
吸い込まれていく
同化していく
桜が、君を攫っていく
『ごめんね、左様なら』
残ったのはその言葉一つだけ
写真も記憶も何もかも
お気に入りのカメラを手に持つ理由すら
訳も分からず
1枚、今年の写真を撮った
「どうして、」
揶揄う様に桜が揺れた
今年の春は青くない
2024/05/19【突然の別れ】
金曜日の夜、
決まって恋物語を借りに来る彼女
艶やかな黒髪
星を閉じ込めた様な綺麗な瞳
誰もが欲しがる甘い声
万人をも惑わす可憐な笑顔
町外れの古びた図書館には似合わない、
まるで御伽噺に出てくるお姫様の様な人
「町にも図書館はあるでしょう」
「わざわざどうしてこんな所まで」
ふと問いかけた
彼女が本を借りに来てから2年の夜
思わぬ返答だった
『"貴方に会いたいから"』
『ただ、それだけよ』
たった二言
僕は魔法にかけられた
瞬きする度、一層輝いて見える
悪戯に笑う君は
どんなものより美しい
「ずるいな君は」
「そんな魔法の言葉、
君しか見えなくなってしまうじゃないか!」
お姫様だと思っていた君が
実は魔法使いだったなんて
何者でもない筈の僕が
実は魔法をかけられるお姫様なんて
どんな恋物語より素敵な_
2024/05/18【恋物語】
紅茶の注がれたティーカップ
宝石の様な煌めくタルト
お気に入りのレコードに針を落として
ランプは付けず、月明かりだけを堪能して
それは真夜中の小さな御茶会
週に1度、日曜日の夜
お客様はたった1人
いつか、貴方を招きたい
寝れない夜は何時も決まって
ダージリンを煎れてくれた貴方を
「夜は決して怖いだけのものではない」
と優しく教えてくれた貴方を
招きたかった
もう会うことはない、
真夜中の御茶会が好きだった貴方を
御茶会の最後は手紙を書くのが決まり
貴方が星になったあの日から
届けられない言葉は手紙に積もる
同じ言葉を繰り返す
まるで決まり文句の様に
「また貴方と真夜中を共にしたい」
いくら流れ星に願ったって叶わない
2024/05/17【真夜中】
『きっとね。』
記憶に残るは微笑んだ彼女
「愛があったって何も出来ないじゃないか」
「こんなに君を愛してるのに、」
もう何も出来ない
遺るは色褪せた写真1枚
暖かった表情も手も、今は何もかも冷たい
愛しているのに
愛していたのに
「あんな質問、するんじゃなかった」
Q.愛があればなんでも出来る?
A.愛が届く内は
2024/05/17【愛があればなんでも出来る?】