(今回はお題と関係ありません)
あんなに暖かい物語を描く人が。
誰かの心をそっと照らす人が。
曲がった背筋をしゃんと伸ばしてくれる人が。
どうして、そんな痛ましい最期を迎えなくてはいけなかったのですか。
◇
人は、いつ誰が死んでしまうかも、いつ誰が死にたくなるかも、わからないものだと思います。
「あのひとがどれだけの苦しみを抱えているか」なんてことは、想像することはできても、すべてを理解することなんてできないでしょう。
だからわたしは、人の「死にたい」という気持ち自体を、どうしても否定できないのです。
だけど、それでも、どうかせめて今日をやり過ごしてほしいと思います。
「明日はいい日になる」なんて言いません。きっと明日も曇り空です。残酷で無責任なことを言っているのは重々承知しています。
でも、死にたい気持ちはずっと消えないとしても、蜘蛛の糸みたいに細いよすがが見つかるかもしれない。明日は今日より、ちょっとだけ体調がいいかもしれない。
どうか、ひとりでも多く今日一日を生き延びてほしいと思います。
今日考えたことでした。
うまくまとめられなかったので、またいつか似たようなことを書くかもしれません。
本だって、洋服だって。今はなんでもインターネットの通販で買える。
それなのに、わざわざ街に出掛ける理由ってあるんだろうか。
「そんなの、あるに決まってんじゃん!」
私の疑問に、親友が食い気味に答えた。
「もちろん『楽しい』から!」
「……自信満々にうっすいこと言うね」
冷めた目をする私に、親友は不満そうに口を尖らせた。
「えー、薄いかな? 真理じゃない?」
「今の時代、街に出掛けることに意味なんて無いと思うけど」
私がそう言うと、親友はなぜかにやっと笑った。
「……そんなこと言うけどさ、いつも誘ったら来てくれるもんね?」
「……だって、『楽しい』もの」
街は今日も賑わっている。
『街へ』
「だってね、最初は優しかったんだよぅ……。お姫様みたいにエスコートしてくれて、素敵なレストランに連れて行ってくれて、プレゼントだって……」
夜のバーにて、先輩と俺とふたりきり。
先輩は、泣きすぎて鼻声になっていた。別れたばかりの元彼にもらったネックレスを、未練がましく見つめている。
「でもね。もうわたしはいらないんだってさ。ひどいよねぇ」
「……ひどいっすね」
正直、付き合い始めたと聞いた時から、「なんであんな奴と」とは思っていた。同性の間では、女癖の悪さで有名な男だったからだ。
苛々した。
そんな男に、そんな見せかけだけの優しさに引っかかる、先輩に。
「……でも、先輩も先輩で悪いですよ。男を見る目をもっと磨いた方がいい」
言ってしまってから、後悔した。
「君は、いつも厳しいなぁ」
見ると先輩は困ったような、寂しそうな顔をしていた。
ごめんなさい。あなたに、そんな顔をさせたかったわけじゃないのに。
でもきっと。もう手遅れなのだ。
俺は、手元にあったグラスの酒を飲み干した。
「そうですよ。俺は厳しいんです」
『優しさ』
「大丈夫。心配いらないわ」
さすが高名な霊能者は、言葉にまでパワーがあるものだ。さっきまで私を苛んでいた不安は、彼女のひとことを聞いただけで、すっと溶けるように消えていった。
私の向かいには、着物姿のふっくらとした中年女性が座っている。彼女は柔和にほほえんで、言葉を続けた。
「『一週間くらい前から何かに取り憑かれているみたいだ』とおっしゃっていたけれど……これは、あなたに悪さをするものではありません」
「と、言いますと……」
「あなたを護っているのよ。彼女……そう、女性なのだけれど……こう言っているわ。『遠く離れた彼岸からも、あなたをずっとずっと見ているよ』って。よかったわね」
そんな風に、私のことを気にかけてくれる人がいたなんて。思いがけないことに、心が温かくなった。
「それは、いったい誰なんでしょうか?」
霊能者は、優しい声で答えた。
「あなたの、『お母さん』だと言っているわ」
鳥肌が立った。
「あの……母はまだ生きていて、今も一緒に住んでますが」
『安心と不安』
たまには自分の話を。
『こんな夢を見た』
何年経っても、いつまでも鮮明に覚えている夢があります。
私は、マンションの外階段をひとり駆け降りていました。自宅ではない、見ず知らずのマンションです。
経験がある方はわかると思うんですが、ああいう階段、急いで降りるとすごく目が回るんですよね。
でも、後ろから恐ろしい「何か」が迫ってきている(気がする)ので、ゆっくりしているわけにはいかない。
仕方がないのでぐるぐるぐるぐる、目を回しながらも駆け降ります。
夢にありがちな話ですが、いつまでも一階にたどり着くことはありません。
とうとう階段を二段飛ばし、三段飛ばしで転げるように降りはじめ……。
……スピードが出過ぎたんでしょうか。気がつくと私は階段から放り出されて、どこからか取り出したパラシュートのようなものを使って、ふわふわと空中を落下していました。なんだそりゃ。おしまい。
余談。
ずっとユーザー名を変えようと思っているのですが、よい名前が思いつきません。そのうち変えます。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。