木綿

Open App
8/18/2023, 1:54:30 PM

はじめは背中だった。
時間をかけてゆっくりと、生きる姿を。
善し悪しの基準。ものを見る角度。
ひととは、どんなものなのか。
見つめて、知って、幼いそれはぼくに成った。

ふとした事で、誰かが笑う。
表情が反射して、その表情をきみへと綺麗に照らす。
それは瞳を通ってこころへと。
まっすぐに、屈折せず輝きをくれる。
こころは
そのまま心にオーロラをかけるのだろう。

みんな、誰かの言葉や感情越しに
毎日虹色のベールを見ているのだ。


「鏡」

8/17/2023, 10:21:42 AM

口に手を当てて笑う癖。
人より通る声、才能の存在を体感した日。
劣等感が幕を引いては俯く瞬間。
失いたくないのに、帰らないもの。泣いても、なにも、何一つ変えられない風景。

幸せだと、感じたひとコマ。
愛しているよと、頬を撫でる手の温もり。
きみのえがお。何気なく過ぎた今日という一日。
ご飯が美味しかったとか、誰かの話に笑ったとか、思い返しては小さく笑い、振り返る場面。

続く足跡。綴る軌跡。
全てが細胞のように、新たな僕を作り明日を呼ぶ。

いつだって、ぼくは僕として。
歩いて、笑って、泣いて、怒って。
十二単のように姿を変えて。
たとえ向かい風の中でも



「いつまでも捨てられないもの」

8/16/2023, 10:19:52 AM

生きる。
日めくりカレンダーのように過ぎる時を。
無造作に、ただ。ただ流れる日々を。

夕焼けが急かして、ぼんやりと飴玉みたいに溶けだした緋を見つめる。
揺れる電車、変わる信号。見つめる、その向こう側。
小さな、かすかな。
目をこらさなければ見えない程の、そんな、自分だけの宝物がそっと、そこに。まぶたにひかる。

些細なことに、笑う誰かの「ありがとう」

それを思い出すと、ふいに唇が弧を描いたのがわかった。

ああ、あれは。

僕だけの、一等星だ。

「誇らしさ」

8/15/2023, 3:12:00 PM

月が揺蕩う。
水面はこぼれたよるのかけらを、空から拾って
煮詰めた孤独のような黒でゆらゆらと
飲み込んでは、また降るかけらを拾っていた。

静寂に寄せる波が足もとの、砂をさらってはもどす
揺蕩う月が、ほんの少しの光をあつめて
海月のように揺れる。

ああ、この潮の香りに
溶けてしまいたい

そしてこのまま。
このまま。



「夜の海」