甘々にすっ転べ

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12/7/2023, 10:29:36 AM

#部屋の片隅で

息が乱れる日が増えたから。

ケチケチの財布をこじ開け
思い切って模様替えをした。
部屋の角には家具を設置するものだと言う固定観念をぶっ壊し、
棚を移動させ、
ヨガマットを敷く。

600円。

ハハッ、

気が引ける様なピンク。

の、割に。
壁沿いに敷いたからか、かなり居心地がいい。

「意外、」

そんで、失礼して壁に両足をあげる。
5分そのままでいると気が付く。

呼吸が浅くなっていた事に。

イケナイ、
良いジャンプは良い助走から。

良い余裕は、良い呼吸から。

だいじなのは腹式呼吸。

「出来たっ。」


12/6/2023, 1:00:43 PM

#逆さま

「第一回許せない逆さま選手権ー」

「いえー。」

「洗濯物。」

「おい、挨拶無しにジャブ喰らわすな。」

「旦那氏、洗濯物は裏返してくだされ。」

「ふっ、めんどくさいでごわす。では嫁子殿。ケチャップは蓋を下にしてドアポケットに立てて仕舞って下さいませ。」

「却下。どうせ傾く。あとで振りたまえ。では夫君。食洗機の箸は先端を下にしておくれ。しかし、スプーンやフォークは今のまま先端が上向で宜しい。」

「鋭意努力致します。では妻よ...今、着てるパジャマ裏表じゃね?」

「うそっ、!?」

「嘘じゃねえって、首無いもんほら、見てみ?」

「ぐっ、ふ、タグ前に付いてるわ、ありがとっ」

「いや、ずっと気になってたんよ。最初の"選手権いイェーイ"からずっと。はぁあーすっきりした。」

「良かったやん、んで洗濯物は?」

「ううっ、忘れて無かったか。」

「裏表逆さまにすると早く乾くし、汚れが落ちるんですーっ。」

「わ、かったから。全部?」

「全部、じゃなくて良いけど厚手のものとか。汗かいたなとかはひっくり返しておいた方がいいんじゃ無い?」

「了解。」

「他には?」

「無い?」

「無いねぇ、」

「短い選手やったなぁー。」

「優勝は?」

「パジャマやろ。」

「パジャマっ、今日なんか首、チクチクするなって思ってたんだよね。全然気が付かなかった。」

「俺はすぐ分かった。首が何時にも増して無かったから。」

「おだまりっ!」

「おだまりwww」

12/5/2023, 12:00:37 PM

#眠れないほど

冴え切った頭と血走った様な目で
テレビが反射する壁を睨み付け息を詰める。

うっかり見てしまった。

クリスマスプレゼント 彼氏 の検索下部に映る、
該当商品。

なんっだソレ。

筋肉ムキムキのマグカップと、
カートに何かが1つ入っているマーク。

まさかソレがクリスマスプレゼントじゃないだろうな。

盗み見た様なものだから
聞くに聞けないまま寝室へ向かった彼女を見送る。

俺は明日休みだから。
弁当と朝飯の用意を済ませる間も気になってしょうがない。

更には、美味いはずの缶の酒を煽っても頭にはムキムキマグカップが浮かぶ。

「せっかくの休日なんだけどっ、!?」


俺は、特にこだわりがあるわけじゃ無いが。

彼女がやってくれるなら
一度は俺だけの可愛いサンタに会いたい。
ベタベタな妄想を働かせる俺を殴ってくれても良い。
ちょっとだけでも、見たいっ、

勿論。
彼女がくれるなら何でも嬉しい。

但し。ちょっとソレは待って欲しいな。

どうする。
言うべきか言わざるべきか。

「... ... それが問題だ。」

盗み見たマグカップが気に入らないから
クリスマスプレゼントは一緒に選ぼうって言えば良いのか。

そもそも盗み見た様な状況なのが不味い上に、
プレゼントに文句まで付けるのか俺は。

クソーーッ。

笑えるバラエティが流れてる筈なのに
内容が全く入ってこない。

いっそ筋肉マグカップも思い出に残る。
面白いじゃねーか、と言う気持ちも出て来た。

なぁ。
俺は一体どうすればいい????
このままじゃ今日は眠れないぞ、

12/4/2023, 11:13:00 AM

#夢と現実

夢は幾つもあった
J・Kローリングの様な世界に飛び込みたかったし
警察官にもなりたかった

だがしかし
私は至って平凡で
自分を他人より少しばかり賢いと思っている
ただの平和主義者だった。

物語の様に
悪は分かりやすく悪では無かったし
努力だけではどうにもならない事がある事も知ると

私は瞬く間に平凡の一粒へと成った。

好戦的な他人は死に物狂いで働いている。
それを横目に
細々と生きていくのがやっとだった。

羨ましい限りだ

そして妬ましい

諭吉の数が私を惨めにする

けれど
私は健やかであった

今も諭吉の数を数えているが
死んだ様な目をして
神経をすり減らし貼り付けた笑顔で

いらっしゃいませ

とは言っていない。


ただほんの少し、
他人が羨ましいだけだ。

彼らは私より良くやっている。
何か良いことが彼らにもあれば良いのに。

12/3/2023, 12:25:57 PM

暗くなる前に彼女を門扉の前まで送り届ける。
そうすると取れる行動はもう他には無い。

釣書だけでは何も分から無かった。
写真は尚更、作り物の様な顔と姿だった。

それが実際会えば落ちるのは一瞬だった。
小さい背中、白い指、伏せ目がちな目。

「今度は、外で会いませんか」

みっともなく上擦った声だった。
しくじったかと思っていたが。

相手方から頂いた手紙には思いがけない返事を貰えた。

だからこそ
今日は彼女が楽しめる様に尽くしたかった。
だからこそ
彼女が門扉を潜る前に紡ぐであろう言葉を聞きたく無かった。

それなら
他に何と言えば良いのだろうかと考えて

「また会ってくれないだろうか。」

今度は上擦らなかった。
だが、気障だったろうか。

私は心配性だとよく上司に言われる。
それでこそ任せられる仕事だと仰ってくださるが、これは仕事では無く。

私、個人の問題だ。

「また、会いたいのです。いけませんか。」

もっと他に言い換えれば彼女も私も傷付かずに済む事は分かっているが。
私は嘘は吐かないと決めているのです。

真摯であるべきと決めて生きているので
こう愚かな聞き方をしてしまうのです。

申し訳ない。

だから断られたら潔く身を引く覚悟だ。
出来ていなくともそうすべきだ。
それが男だ。

「いいえ。」

「ぇ。」
 
「いけなく、ないと思います。」

「は。いけなく、ない、と言う事は。私とまた会ってくださると言う意味でしょうか。」

「今、お決めになりますか。あっ、の。お手紙だとつい郵便屋さんがここを通る度に気になってしまって、家事どころではなくなってしまうので、」

私は舌を噛んで頬が緩みそうになるのを耐えた。
可愛らしい人だ。
あまりにいじらしい事を言う。

「では、今度の」

私達は暗くなるまで門扉の前で話し込んだ。
せっかく早い内に街から戻ったと言うのに、これではご家族に面目が立たない、が。

「では、また。」

「えぇ、また。」

さよならは言わないで居た。
何と言っても新しい約束が出来たのだから。

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