コインを投げて落ちる瞬間、
その寸前まで表か裏かを選べるとしたら。
表なら
なにをする?
裏なら
このまま堕ちて行け
バケツをひっくり返した様に泣き
泥の様に眠り
落ち着いた頃、落ちたコインを拾い表にすればいい。
さぁ。
表ならなにをする。
散歩か菓子かパンかみかんにこたつにチョコレート。
さぁ。
コインが落ちる3秒前。
どっちに賭ける。
#光と闇の狭間
#距離
距離を取りなさいと友は言う
それなのに私はあっという間に線を飛び越えてしまう。
一生懸命で不器用で幾つになっても周囲の人間は皆、優しい人達だと思ってるバカな私。
こうして泣く度に心優しい友が
だから言ったじゃ無いかって肩をぶつけてくる。
人間は気に入った人間にしか優しくしない生き物だし、そもそも"気に入った"の定義があんたとは違うんだよと慰めてくれる。
それでも、優しい部分を見てしまったら。
だって、他人に優しくするのって凄いことだよ。
そう言って鼻をかむ。
あんたはすぐにそうやって誰かを気に入っては泣くんじゃないか。
優し過ぎるんだよ。
人間はもっと自分勝手だ。
あんたはそうじゃないだろうけど、
摘んだ薔薇を笑って渡すのは仕事でも、棘を取るかどうかは贈り手の自由なんだよ。
あんたはきちんと棘を全部隅々まで取り払ってしまうんだろうけどね。
じゃあ私の友はなんで私に優しいの。
「あんたがくれる薔薇が好きだからだよ。」
「そんな事、泣かなくて良い!」
あんたは悪く無い!
あんたは努力しただろ
あんたは頑張った筈だ
途中で投げ出しもせずどうしようか考えて、最善を尽くした筈だ。
あんたはめげなかった
あーすみません、わかりませんでしたー
そう言えば良い
言わなかったのはやってみようとして頑張ったからだ。
やらずに放っておくよりずっと良い
放って置けなかった
それだけで偉いだろ。
時間通りに終わらなかった?
明日やれば良いさ。
駄目なら誰かの手を借りると良い。
それも駄目ならもう君の手には負えないと言う事だ。
出来るわけがない。
君の容量はもう超えている。
それなのにまだ放り出さないのか?だろ?
泣かなくて良い。
どうみても、君はよくやってるじゃないか。
#泣かないで
#冬の始まり
「出来たぞ。」
ザクザク切った具材を鍋に入れて煮る、
肉団子と水餃子、豆腐、水菜、白菜、マロニー。
「キムチ鍋ーっ、!」
俺は豚肉派なんだけどな。
肉団子と水餃子に決まってる、と言われて食べてみたら言わずもがな旨かった。
「貸して貸して!」
こいつは何でか鍋を張り切って食う。
「じゃーんっ!」
機嫌良さそうに笑って皿を戻してくる。
旨そうな鍋が器に盛られてる。
いつも見た目なんか気にしない癖に。
なんでか鍋の時は俺の皿を取り上げて、こうして綺麗に盛って渡してくる。
実家の犬がこんなだった。
バカかってくらい可愛い。
タレ目で。元気でとにかくよく寝る。
「これやると冬が来たなって思うんだよねー。どう?私が注ぐと美味しいっしょ。」
「はいはい。旨いな。」
〆まだ続いた。
「ちょっと、寝よ」
うちに帰るや否やヒーターを付け、目の前に座る。
風を送る奴ではなく、もっと原始的な熱いやつ。
しかもこいつはオンとオフしかない。
温度調整がない金網で仕切ってある当たったら火傷するちょっと危ないやつだ。
その代わりマッハで点く。
「はぁぁーー生き返るぅぅっ。」
冷たい指先がジンジンして来た所でコートを脱ぐ。
だいぶあったまったきた。
ここからが勝負。
スタッと立って足元のカーペットの電源をオン。
キッチンへ向かいヤカンでお湯を沸かすと、そのまま自室で部屋着にチェンジ。
化粧も落とす!
仕事を連想させるものは今!ここで!
全部削ぎ落とす!
お湯が沸く頃には明日着る服の準備も復習も終えて。
ダッシュで行けばあったかいリビングへおかえり。
いそいそとマグに紅茶のティーパックとお湯を注いでヒーターの前へ。
じわっと深い紅が広がっていくのを眺めていく。
漸くひとくち飲むと、これで今日1日が終わった気がする。
あとは帰りを待って一緒に夕飯を作る。
「ちょっと、熱いな。」
オンとオフしかないヒーターのスイッチを回す。
ヒーターの赤がじゅわっと消えていく。
釣られて意識も傾きそうになる。
「まじちょっと、寝よ。」
言うてもまだカーペットが温いから大丈夫だろ。
寒くなったら起きれば良い。
このまま寝ても多分、怒られない。
カーペットはちゃんと付いてるもん。
トントントン、と包丁の音がする。
ぱちっと目が覚めた。だいぶ寝こけたらしい。
部屋は寒いどころか暖かくて、ふかふかで柔らかい何かが手元に収まってる。
「ふふっ、」
これ、テディーベアだ。
買うつもりもなく家具屋で抱きしめてみたら、あまりのフィット感に手放せなくなったクマだ。
恥ずかしかったけど年甲斐もなくねだってカートに乗せた戦利品だ。
それに、毛布まで掛かってる。
また文句を言って掛けてくれたのだろうか。
起きて夕飯の用意を手伝わないといけないのに。
あともうちょっとだけ、このぬくぬくを味わっていて良いだろうか。
「おーーい、起きてるだろ。バレてるぞ。」
#終わらせないで
〆前のと続けてみた。