『鋭い眼差し』
今まで練習会場や試合会場で何度も戦う姿を目にしていた。
その相手の強さは手を合わせていなくても自分より
遥かに強いのは一目瞭然だった。
その相手が今目の前で私を鋭い眼差しで
今にも命を奪えるぞと語っていた。
私だってこんな所で負けるわけにいかない。
私は精一杯睨みつけた。
相手はそれを嘲笑うかのように
目元にほんの少し笑みを浮かべていた。
今から本当に命を懸けた戦いが行われるのだ。
油断したら負ける。
そう意気込み、私は最初に力強く踏み込み一撃を与えた。
その一撃で戦いは始まった。
『高く高く』
僕の友達は高い所をずっと飛んでいる。
翼を大きな羽ばたいてずっと飛んでいる。
僕はどこに向かっているの?って聞いたことがある。
「俺は誰も届かない所に行くだけだよ」
そう笑顔で答えた。
僕はかっこいいと思った。
僕は低い所しか飛べない。
高い所が怖いんだ…
けど今日は少しいつもより高い所を飛んでみようも思う!
『子供のように』
うちのリーダーは基本感情を表に出さない。
淡々と仕事をこなす人だ。
丁寧だし早いし、教えるのも上手い。
ただ教え方が少し怖いのが少し難点ではある。
リーダーが少し表情を出すとするなら困った顔だろう。
仕事が行き詰まってたり、私たち部下のミスの処理等…
仕事の多さに頭を抱えてる時は少し困った顔をしている。
それくらいで楽しそうな表情はあまり見た記憶が無い。
だから私は少し楽しませようと手紙を書類の間に挟めたり、
小さな造花をリーダーの机に置いたりしていた。
全て空回りだった…
そんなある時急にリーダーから呼び出された。
怒られるかなと思いながら入室した。
「本題に入りますが、書類に手紙が挟まっていたり、私の机に花を置いたりしたのは貴女ですよね?」
「あ、私ですねぇ…」
「どういう意図でやったのか分かりませんが、集中してください。」
「いや、リーダーに笑って欲しいなと…」
「わ、私にですか?」
その瞬間、リーダーの顔が少し赤くなったのがわかった。
「リーダーっていつも仕事一筋って感じで楽しいのかなって思ってたので、つい出来心で楽しんで欲しいなと…すみません」
「い、いやそれなら…良くないですけど、ありがとうございます。」
「え?怒らないんですか?」
「貴女がわざわざ私の為にしてくれた行為を怒るなんてしませんよ。むしろ嬉しいですよ」
その言葉と共に見せた笑顔はまるで子供のように明るい笑顔だった。
『放課後』
学校終わり、直ぐに帰らずに教室に居座り
友達と学校の事や趣味の事を話したりと色々な事をして、
学校に居れるギリギリの時間までずっと残っていた。
部活動があった訳では無い。ただ居るだけ。
普通帰ればいいのにと思うのかもしれない。
しかし私には放課後教室で勉強する訳でもなく
ただ居るのが好きだった。
そんな学校が廃校になると聞いた。
初めて聞いた時は悲しくて涙が出た。
私は最後にもう一度足を運ぼうと思った。
桜の木が1本植えてあり、
春には桜を散らせて生徒を見守っていた。
せめてこの桜は残って欲しいと思いつつ、学校へ入った。
何時間も過ごした教室は綺麗に机が並んでいた。
そして黒板には卒業おめでとうと悲しく残っていた。
私は気がついたら涙が流れていた。
昔の自分の席に着き、その黒板と見つめあっていた。
「今までたくさんの生徒を見守ってきたんだね。お疲れ様」
自然と口から声がこぼれていた。
数時間その場で過ごしたあと、私は学校を後にした。
次はどんな姿になるのか楽しみにしているね。
『カーテン』
綺麗な人だと思った。
クラスでも明るく誰とでも接している明るい子だ。
私にでもたまに声を掛けてくれる。
リーダーシップもある。
容姿もただただキレイの一言だった。
ある放課後教室に忘れ物をした。
教室に入ると一人カーテンを閉めた状態で窓を開け、
夕日を見ていた。
誰だろうと思い「あ、あの…」
ギリギリ聞こえるかの声で私は話しかけた。
その時少し強い風がカーテンを揺らし、
例の子がこちらを真顔で見ている姿があった。
その子は手招きし私を呼んだ。
私は導かれるように一緒にカーテンの中に入った。
そして耳元で囁かれた。
「私は良い子のフリをしてるだけだよ。」
その声は低く暗く淡々と話しているだけの声。
普段の声と同じ人とは思えない程だった。
私は怖くなりその場を走り去った、忘れ物など忘れて。
次の日、投稿するとその子は口元に人差し指を当て
しーっと笑顔でジェスチャーをしてきた。