『一筋の光』
周りを見渡せば仲間はみんな倒れている。
目の前には何か一手があれば倒せそうまで
追い込んでいる魔王がいる。
しかしその一手がない…
せめて注意を逸らせる何かがあれば…
残るは俺と魔王…俺の方が圧倒的に不利の中
世界を守るため諦めるもんかと策をひねる。
魔王は勝ち誇ったように薄い笑みを浮かべながら
最大限の火力でこちらに魔力を溜めていた。
早く何か…何か……。
そんな時、視界の端から魔王に向かって行く影が見えた。
「うぉぉぉ!!!」
それはタンクとしてこの戦いの要だった男だ。
タンク役の男は魔王に突撃し、拘束しようとしていた。
『小賢しい!』
魔王は魔力を溜めるのを中止しタンクの男を突き刺した。
それはほんのり数秒の出来事。
しかし俺にとってその数秒は戦場を変える一筋の光だった。
剣に力を込め直し、正義の光を纏わせ力強く魔王を
タンクごと貫いた。
タンクの男は笑っていた。魔王は悔しそうだった。
こうして1人の犠牲の元、世界に平和は訪れた。
しかし俺の心は平和とか程遠い黒いなにかが芽生えていた。
『鏡の中の自分』
鳥も鳴かない真っ暗な中、私は目を擦り体を起こす。
静かにベッドから降り、朝食などの身支度を済ませる。
体はまだ寝ていたいと訴えている。
仕事が無ければ本能に従っていただろう。
そして姿鏡の前に経つ時には私は社会人としての私だ。
身なりが整っているか最後の確認を終え玄関を後にする。
数時間後帰宅し同じく姿鏡の前に立つ私はもうただの女だ。
社会人という枠に囚われないただの人だ。
私の中で鏡というものは何かスイッチのような役割なのだろう。もしかしたら鏡の中にもう1人の自分がいて…なんて馬鹿げた事を考えているくらい疲れているらしい。
今日はもう休もうとベッドへ体を放り投げた。
『眠りにつく前に』
何年…いや何十年前線で相棒と共に戦ってきただろう。
私も人間である以上年齢には抗えない。
いや、この世界魔法という物で年齢を戻せるらしいが、
私はそういうものには頼らずに
真っ当に命を終わらせたかった。
相棒ももうボロボロだ。何度も熱を浴び叩かれ見た目は新品そのものに戻るが、やはり染み付いた血肉は芯を錆びさせていた。
私は思い出の、私が初めての相棒と出会い今の
私の原点の森へと足を運んだ。
この森の奥にはそれなりに大きな湖がある。
私はその湖に腹部まで浸かるように入り、横になった。
鳥や水の音が私の中に響いているようだった。
私は今ここで命が尽きるのをなんとなくわかっていた。
相棒の刃ももう錆び付いてしまっている。
静かに目を閉じて永遠の眠りにつく前に1つ考え事をしていた。
きっと国の為とはいえ沢山の命を奪った私に安らかな眠りを
神は与えてくれるのかと…
そんなことを考えながら相棒を大事に守る子供のように私は眠るように息を引き取った。
『永遠に』
この幸せが永遠に続けばいいのに…
なんて言葉、テレビでも耳にするし
少なからず思ったことがある人がほとんどだろう。
恋愛や友人関係、親との関係。
だが大抵そういうものは叶わない。
幸せだと思っている時はそんな事思わない。
その幸せが無くなりそうだからこそ願う願いなのだから。
永遠なんて続かない。命に限りがあるのだから
人間に永遠なんて不可能だ。
ただ限りある永遠に縋って生涯を迎えるんだろう。
私のきっとその1人だ。
生涯を迎えた後、輪廻というものがあるのなら転生などせずに輪廻の輪の1部で永遠に過ごせたらいいのにと思う。
『懐かしく思うこと』
大人になってから日常を過ごしているとほとんどのものが
マンネリ化してしまう。
食事や睡眠、仕事…これらの繰り返しになってしまう。
ならば何かを変えてみようと思うが
結局いつもしている事の延長線になってしまう。
休日の日、何気なく外に散歩へと向かった。
歩いてる途中、子供や高齢者など色々な人と出会ったが、
特に感情が動くことは無かった。
歩いていると喉が渇いたなとコンビニへと入った。
そのコンビニは何も変わらないコンビニだった。
一つを除いて。
駄菓子屋コーナーがあったのだ。
幼き頃の私が親にお願いして何度も足を運んだ駄菓子屋
のようなレパートリーのお菓子たちが並んでいた。
気づいたらコンビニの籠いっぱいにお菓子が入っていた。
これだけかって1000円行かないのだから駄菓子には
頭が上がらない。
私はワクワクして帰宅した。
帰宅してから幼少期の思い出を思い出しながら、
夢中で食べていた。
緑茶を片手にテレビを見ながら食べているとなんだか
懐かしいなと思ってしまっていた。