エグチーセット

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10/21/2023, 4:25:42 PM

目が覚めた僕は狭い窓から光を見つめる。
ここに閉じ込められはや三日。
眠気と空腹、そして行き場のない怒りだけが今の僕である。
今日だって自主的に起きたわけではない。鉄格子の向こう側から大きな音によって起こされたのだ。
正直に言えば限界だった。
たかだか三日とは言え全てを疑われ試すような物言いばかり。いい加減にしてくれ、うんざりだ。そう怒鳴り散らしたい。だがここでそれをすればますます立場が悪くなるだけ。
それでも諦めてはいない。
この声が枯れようと無実を訴え続けなければ。
「来い」
無機質で大柄な態度の看守が呼びつける。
今日こそ。すり減る神経と毟り取られる希望に目を凝らすように後に続いた。

10/20/2023, 10:50:33 AM

思考がぼんやりとする中、耳元でピスピスと笛を中途半端に鳴らしたような音がする。
それはこめかみや頬に押し当てられより存在感を増していた。眠気が遠のくにつれよりはっきりと存在が顕になる。逃げるでも引き寄せるでもなくじっとしていれば少し困惑しているのか右往左往しだす。ちょっとだけ笑いそうになり歯を食いしばれば生え際に鼻先を押し当てよりピィピィと鳴き出した。
たまらず寝返りをうちながらその正体を両手で捕える。
捕えられた方は嬉しそうにご自慢の尻尾を振っていた。ご機嫌で何よりである。
「おはよ。おなかすいたね」
それに同意するように手の中で嬉しそうに体をくねらせる愛犬。
始まりはいつも君が一番のりだ。

10/19/2023, 4:47:57 PM

「おはよう」
朝ぼんやりとしながら外を眺めていたらいつのまにか君がいた。
一気に目が覚める。何か話さなければ。それでも話したい内容がまったく思い浮かばない。
話したい内容なら、寝る前にあれだけ考えていたのに。
「おはよ。はやいね」
「そっちは相変わらず眠そうだね」
寝ぼけた頭と君を前にして気持ちだけがから回っている。
結局、愛想笑いで君を見送ることに。
かと、思えば立ち止まって外を見ていた。
なにか外にあるのか。そう目を凝らす。
「……何か見えんの?」
「いいや。……うん気のせいかも。またね」
思わず聞いてみたが要領を得ない返答。
またね。落ち込みかけていた気持ちが浮上する。
しかし、君がいた場所から嗅ぎ慣れた香りがした。
そう、ちょうど私がつけている香水のような。
思わず私は君を追いかけていた。

10/18/2023, 2:01:48 PM

何時迄も続くのではと錯覚しそうな季節。それもなんだか和らいだ気配を感じた。日陰を探して無駄に日光から逃げていた日々とおさらばである。
二日三日と日中の過ごしやすさに感謝しかない。
しかし今日はどうだ。
お気に入りのカーディガンを羽織り歩けば汗ばむ。
どうやら秋晴れ詐欺に遭っているようだ。
まったくここ最近の気候に振り回されてばかりだとカーディガンを脱いだ。

10/17/2023, 2:29:18 PM

「ねぇ、覚えてる?」
そう聞かれるたびに僕は忘れたよと答える。
君はそうと答えてすぐ他に夢中だ。
君が僕に割いた時間を、忘れるはずがない。忘れられない。
覚えているかと聞かれるたび、嬉しいはずがこんな答えしか返せない自分が憎らしい。それでも、こんなあけすけな自分を出せるはずもなく。
だから決めたのだ。
次に聞かれたら。
「ねぇ、覚えてる?」

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