木々の間から日差しが差し込み柔らかな光のカーテンを作っている。
すると私は目を凝らす。
木陰の中で本を読むのが好きだった君。自然の光と風で過ごすのが好きだった君。
何処かに、君の後ろ姿が見えるのではないか。そんなやわい希望を捨てきれずに、今日も木々の間を懐かしむように、目でなぞる。
鋭い眼差しにこちらが動けなくなりそうだ。普段の優しい君らしからぬ眼差し。
的の中心を見定めると弦を引く。
キリキリ。引き絞った弦が音を立てる。
数秒。
音という音がやむ。
だが次の瞬間には弓が中心を射止めていった。
弓が的を叩いた音が反響しこだましている。
「ほら、練習すればこれくらいできるよ」
音がやめば満足げな顔で君が顔を上げる。
いつもの、優しい眼差しだった。
鷹を相棒に迎え、三年が経つ。
最初こそ意思疎通どころか腰が引けコマンドも満足に出せなかった。
今では互いの考えがわかる。風を読むより容易い。
腕を平行に保てば君が飛ぶために足に力を入れる。
飛べ。そう念じながら腕を送れば羽ばたき空を舞う。
高く。高く高く。
何一つ遮るもののない空を、飛び回る。
それを眩しさと愛しさで見守る。
顔を綻ばせる君。
君はいつも感情表現が豊かで目を離した隙にコロコロ変わる。
そんな君が好きで、いつも見ていた。
だからだろう。今の君は子供のように無邪気で、幸せそうに笑っている。
僕の前とは違う笑顔。
そんな顔ができたのかという驚きと眩しさ。
そして無視できない嫉妬が胸を焦がす。
友達がバイトを始めた。
そのため放課後はすっかり暇である。入学してから部活も入っていない為今更何処かに所属なんてめんどくさい。
自慢ではないが、おおよそ惰性となんとなくできたのだ。
この学校もそんな感じで決めたもの。
なら思い切って恋をするか。いや部活一つ決まらない人間にハードルが高い。あと、こう、ロマンというか理想があるのだ。
友達に習ってバイトを探すか。部活ほどではないがなかなか腰が重い。
ここで塾が思いつかないのではない。あえて除外してるので悪しからず。
放課後。
小学生時代は楽しかったな。
むぅ。そう唇を尖らせる。だからと言って今更あのテンションには戻れない。
もう何もかもが面倒だ。
それでも、友達からバイトを一緒にしないかとLINEが来れば浮上するくらいには落ちてもいなかった。
ちょっとだけ悔しいので一分後に返信したのは許されたい。
そんな放課後である。