最近片方の靴下が見当たらない。いいや靴下だけではない。
友達に貰った、ちょっと自分じゃ買わないお高いハンカチまで行方不明なのだ。
ベッドの下クッションの裏ソファーの脇。隙間という隙間を執念深く探す。遂に服のポケットまで探すも見当たらない。
「……ねぇ、どこいったと思う」
見つからなすぎて愛猫に話しかける始末。
お姫様は知りませんことよと言うように一言鳴くのみ。それもそうか。
もう探せる場所は全部見た。
一度頭を冷静にさせるため換気をしよう。いつもは猫の定位置の為たまにしか開けない窓がある。今日くらいいいだろう。そうカーテンを開ける。
するとそのカーテンの裏には探し物が詰まっていた。
私は犯人を尋問すべく部屋に戻った。
友達と二人で先輩の結婚式に来た。
先輩は野球部で私たちはマネージャーだった。それからもなんだかんだとご縁があり、大学こそ違えど会社が近かったため付き合いはあったのだ。
式には懐かしい顔も多く居心地の悪さはない。
幸せそうに笑う先輩とその花嫁。そしてその友達と雑談を楽しんでいる。誰がどう見ても幸せの構図。
私は小さいカバンからハンカチを取り出すと友達に差し出した。彼女は小さな声でありがとうと笑うとそれを受け取る。
「綺麗だから、思わず泣いちゃった」
そう控えめに笑う。
嘘つきめ。
そんな悪態を飲み込み私はそっと彼女に寄り添った。
踊れ踊れクルクルと。
手を広げ足を伸ばし跳ね上がる。
君の手を握り瞳を絡めあい。
鳴り響く鼓動は緊張からか、踊っているからか。
わからぬまま踊る踊るクルクルと。
いつの間にやら君の方が楽しげに踊る。
君の楽しげな声にココロオドル。
ココロオドル
予想外れの雨が降った。
それも叩きつけるような大雨だ。
私の傍で愛犬の芝犬がお座りをしている。その後頭部はなんだか悲しみを訴えているようだ。
「今日散歩なしだね」
顔を上げると外と私を二度見てから諦めたようにお気に入りのクッションに伏せている。傷心のご様子。
側に腰を下ろし撫でてやる。
この子はご不満だろうが私はこの束の間の時間が愛おしかったりする。
思い出の味と言われて思い出すのが兄貴の作ったおにぎりだ。
小2の時、腹が減って泣きじゃくる私を泣きやますために作ってくれた。味は市販のふりかけだけど味がついてるとことついてないとこで分かれてた。
形も小さい手でぎゅうぎゅう力を込めるから凸凹したおにぎり。
それでも当時の私を泣き止ますには十分だった。
たまに作ってくれるおにぎりはすっかり綺麗な三角でついでに海苔なんかも巻いてくれる。
そうだね。愛情は変わらず込められてるね。でもあの歪なおにぎりが恋しくなる。
そんな兄貴も本日結婚式を迎えます。
おめでとう、兄貴。
力を込めて