『逆光』
眩しくて
眩しくて目が開けられないから
そっと顔を逸らしたんだ。
君が背負う
その幾千ものライトが
その幾万もの視線が
怖くて。
見て見ぬフリをしていれば
君はずっと変わらない君で。
聞こえぬフリをしていれば
僕はずっと、僕であれた。
手を引いて走ってる先に
その先に光があると
信じてやまなかった。
振り返っちゃいけない。
本当は闇に向かってる、
なんて
口が裂けても言えない。
君を堕としたいなんて。
変わらぬ君は何も変わってなどいない。
変わり果てたのは君の周囲と
僕の心だ。
『美しい』
「鏡よ鏡、鏡さん……」
世界で二番目に美しい人が尋ねる。
彼女は私を盲信しているから、
私の言うことが誤りだとは思わない。
ねぇ、お互い、歳をとったものよ。
永遠に若いままではいられないし、
永遠の魔力なんてどこにもない。
私は嘘はつかないけれど、
きっと私だって間違えることはあるわ。
最近はもう、よく分からないの。
……ねぇ、永遠なんて無いのよ。
今でも、一番美しいのは貴女なのかもしれない。
私が間違っているのかもしれない。
それでも私は私の見た真実を語ることしかできない。
信じる貴女が悪いのよ。
私の言葉なんかなくたって、
自分が一番美しいのだと言い張れば良いのに。
私ね、貴女のこと嫌いじゃないのよ。
貴女は魔術に長けているのだから、
あの子の命を奪わずとも美しくなれたはずよ。
自分を美しくする術だとか、
若返りの術だとか、
他にもやりようはいくらでもあったでしょう。
でも貴女は、そうしなかった。
だって貴女は貴女のままで美しい。
貴女は貴女のままで、
一番であり続けたかったんでしょう。
嫌いじゃないわ。
私を盲信している貴女も、
己の美しさを自覚している貴女も。
だから精々、最期まで一緒にいてあげる。
貴女といるのは退屈しないから。
『三日月』
三日月の名を持つ、あの刀。
それを元に作られた彼のこと。
連想せざるを得ないよな。
私にとって彼と出会うことは一つのゴール地点だった。
彼は言わば伝説ポケモンで、
捕まえて仲間にすることが大筋の目的で、
逆に言えば捕まえるまではクリアとは言えない。
そんなポジションだった。
彼がいる本丸にすること。
特に決めていたわけではないけれど、
多分初めからそれが夢だった。
初めて彼と会った時、
まさか来るとは思ってなくて驚いた。
動揺して、信じられなくて、
でも何より嬉しかった。
別に推しなわけじゃない。
それでもやっぱり、特別な存在。
三日月を見ると彼の名を思い出す。
『君と一緒に』
君と一緒に、ここまで歩いてきたんだ。
私がこうして何かを書くようになったのは、
思い描いたものを文章として残すようになったのは。
そりゃ元から妄想が好きな子だった。
漫画の中のキャラクターともし会えたら…
なんて妄想、年齢一桁の頃からしてた。
でもある時、君が生まれて。
私は初めて妄想を書いたんだ。
文として、小説として、君のことを書いた。
最初は私の分身だった。
次第に一人のキャラクターになった。
私を元として生まれた、私の理想を詰め込んだ、
君が私に書くことを教えた。
描くことから逃げ出しても、
生み出すことをやめなかったのは。
書くことすらもできないのに、
決してそれを手放そうとしないのは。
君と一緒にいたあの日々が本当に楽しかったから。
きっともう、君が主人公になることはないけれど。
それでも君はいつだって一番近くにいる。
日の目を見ることのない、
君の苗字は『冬山』。
『変わらないものはない』
昔、昔ね。あるグループを盲目的に推していた。
彼らを悪く言われるのに耐えられなくて泣いた。
彼らの努力は必ず報われると信じていた。
グッズを買って、CDを買って、
生まれて初めて握手会に行った。
それがほんの六、七年前。
「一生ついていく」だとか、
「ずっと応援してる」とか。
「何があっても大好きだよ」なんて言ってたのに。
ついていけなくなったのはいつからだ。
かけられていた魔法が解けたようだった。
純粋で無知な少女はもう居なかった。
外から見た熱の渦は奇妙に見えた。
私が彼らを応援していたことは事実。
今だってそりゃあ、上手くいってほしいとは思う。
あの時、彼らは私に幸せを与えてくれたから。
だから彼らも、どうか末長く幸せであって欲しい。
変わらないものはないの。
あんなにも愛していたはずのものも、
今はもう奥底に眠る思い出なの。
きっともう、二度とあの頃のようにはならない。
彼らももう、あの頃とは変わってしまった。
それでも、形や意味は変われども、
彼らへの『愛』を失くしたわけではないのでした。