冬山210

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1/24/2024, 11:24:28 PM

『逆光』

眩しくて
眩しくて目が開けられないから
そっと顔を逸らしたんだ。

君が背負う
その幾千ものライトが
その幾万もの視線が
怖くて。

見て見ぬフリをしていれば
君はずっと変わらない君で。
聞こえぬフリをしていれば
僕はずっと、僕であれた。

手を引いて走ってる先に
その先に光があると
信じてやまなかった。

振り返っちゃいけない。
本当は闇に向かってる、
なんて
口が裂けても言えない。
君を堕としたいなんて。


変わらぬ君は何も変わってなどいない。
変わり果てたのは君の周囲と
僕の心だ。

1/17/2024, 3:27:08 AM

『美しい』

「鏡よ鏡、鏡さん……」

世界で二番目に美しい人が尋ねる。
彼女は私を盲信しているから、
私の言うことが誤りだとは思わない。

ねぇ、お互い、歳をとったものよ。
永遠に若いままではいられないし、
永遠の魔力なんてどこにもない。

私は嘘はつかないけれど、
きっと私だって間違えることはあるわ。
最近はもう、よく分からないの。
……ねぇ、永遠なんて無いのよ。


今でも、一番美しいのは貴女なのかもしれない。
私が間違っているのかもしれない。
それでも私は私の見た真実を語ることしかできない。
信じる貴女が悪いのよ。
私の言葉なんかなくたって、
自分が一番美しいのだと言い張れば良いのに。


私ね、貴女のこと嫌いじゃないのよ。
貴女は魔術に長けているのだから、
あの子の命を奪わずとも美しくなれたはずよ。
自分を美しくする術だとか、
若返りの術だとか、
他にもやりようはいくらでもあったでしょう。

でも貴女は、そうしなかった。
だって貴女は貴女のままで美しい。
貴女は貴女のままで、
一番であり続けたかったんでしょう。

嫌いじゃないわ。
私を盲信している貴女も、
己の美しさを自覚している貴女も。
だから精々、最期まで一緒にいてあげる。
貴女といるのは退屈しないから。

1/10/2024, 1:02:09 AM

『三日月』

三日月の名を持つ、あの刀。
それを元に作られた彼のこと。
連想せざるを得ないよな。

私にとって彼と出会うことは一つのゴール地点だった。
彼は言わば伝説ポケモンで、
捕まえて仲間にすることが大筋の目的で、
逆に言えば捕まえるまではクリアとは言えない。
そんなポジションだった。

彼がいる本丸にすること。
特に決めていたわけではないけれど、
多分初めからそれが夢だった。

初めて彼と会った時、
まさか来るとは思ってなくて驚いた。
動揺して、信じられなくて、
でも何より嬉しかった。

別に推しなわけじゃない。
それでもやっぱり、特別な存在。
三日月を見ると彼の名を思い出す。

1/7/2024, 6:16:53 AM

『君と一緒に』

君と一緒に、ここまで歩いてきたんだ。
私がこうして何かを書くようになったのは、
思い描いたものを文章として残すようになったのは。


そりゃ元から妄想が好きな子だった。
漫画の中のキャラクターともし会えたら…
なんて妄想、年齢一桁の頃からしてた。

でもある時、君が生まれて。
私は初めて妄想を書いたんだ。
文として、小説として、君のことを書いた。

最初は私の分身だった。
次第に一人のキャラクターになった。
私を元として生まれた、私の理想を詰め込んだ、
君が私に書くことを教えた。


描くことから逃げ出しても、
生み出すことをやめなかったのは。
書くことすらもできないのに、
決してそれを手放そうとしないのは。
君と一緒にいたあの日々が本当に楽しかったから。

きっともう、君が主人公になることはないけれど。
それでも君はいつだって一番近くにいる。
日の目を見ることのない、
君の苗字は『冬山』。

12/26/2023, 8:48:53 PM

『変わらないものはない』

昔、昔ね。あるグループを盲目的に推していた。
彼らを悪く言われるのに耐えられなくて泣いた。
彼らの努力は必ず報われると信じていた。
グッズを買って、CDを買って、
生まれて初めて握手会に行った。

それがほんの六、七年前。
「一生ついていく」だとか、
「ずっと応援してる」とか。
「何があっても大好きだよ」なんて言ってたのに。
ついていけなくなったのはいつからだ。

かけられていた魔法が解けたようだった。
純粋で無知な少女はもう居なかった。
外から見た熱の渦は奇妙に見えた。

私が彼らを応援していたことは事実。
今だってそりゃあ、上手くいってほしいとは思う。
あの時、彼らは私に幸せを与えてくれたから。
だから彼らも、どうか末長く幸せであって欲しい。

変わらないものはないの。
あんなにも愛していたはずのものも、
今はもう奥底に眠る思い出なの。

きっともう、二度とあの頃のようにはならない。
彼らももう、あの頃とは変わってしまった。
それでも、形や意味は変われども、
彼らへの『愛』を失くしたわけではないのでした。

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