冬山210

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『美しい』

「鏡よ鏡、鏡さん……」

世界で二番目に美しい人が尋ねる。
彼女は私を盲信しているから、
私の言うことが誤りだとは思わない。

ねぇ、お互い、歳をとったものよ。
永遠に若いままではいられないし、
永遠の魔力なんてどこにもない。

私は嘘はつかないけれど、
きっと私だって間違えることはあるわ。
最近はもう、よく分からないの。
……ねぇ、永遠なんて無いのよ。


今でも、一番美しいのは貴女なのかもしれない。
私が間違っているのかもしれない。
それでも私は私の見た真実を語ることしかできない。
信じる貴女が悪いのよ。
私の言葉なんかなくたって、
自分が一番美しいのだと言い張れば良いのに。


私ね、貴女のこと嫌いじゃないのよ。
貴女は魔術に長けているのだから、
あの子の命を奪わずとも美しくなれたはずよ。
自分を美しくする術だとか、
若返りの術だとか、
他にもやりようはいくらでもあったでしょう。

でも貴女は、そうしなかった。
だって貴女は貴女のままで美しい。
貴女は貴女のままで、
一番であり続けたかったんでしょう。

嫌いじゃないわ。
私を盲信している貴女も、
己の美しさを自覚している貴女も。
だから精々、最期まで一緒にいてあげる。
貴女といるのは退屈しないから。

1/17/2024, 3:27:08 AM