作者の自我コーナー番外編
実は推しのメンカラを理由に好きになった色はない。小さい頃から水色が好きで青が好きだった。ピンクも本当は好きだったけど、少し逆張りな性格もあり、単純に水色の方が好きなこともあり、持ち物はほとんど全て水色だった。ピンクのものを今更持てなかったというのもある。水色が好きで通してしまったから親が買ってくるものも自然と青色系統が多かった。
だから苦肉の策として両方の要素を持った紫を好きというようになった。元来ビビットな色が好きでは無い。パステルカラーが好きな小学生時代、可愛いよりもかっこいいに憧れて、女の子らしい色を好きな色にあげなくなった中学、高校。
群青色や紺が好きなのは本当だけど、ふと、パステルカラーに身を包んだ『彼女』を回顧してしまう。
まだ、ピンクが好きとは言えないまま。
『1年前』
来年のことを言うと鬼が笑うという諺があるがほんまやったなぁと思う。1年前に計画していたことはほとんど全て覆ってしまった。世間の目が変わった。在り続けると思っていたものがなくなった。1年前には想像もしていなかったことだ。
永遠なんてないというのは、以前身に染みて学んだことで。
そこから俺たちは長期スパンで物事を考えなくなった。いつ何が起こるか分からない、世間も人も。だから、1年1年を積み重ねて行こうとしていたのに。1年後すらダメなのか。
世間の荒波に揉まれて、色んな友人が去ってしまった。
気づけば年長みたいなポジションになって。
なんでよりにもよって今やねんと愚痴りたくもなるけど。
それによって得たものもあるっちゃあるから。これからトントンにしていけばいい。
いや、トントンじゃ足らんなプラスにせえへんと。
唯一変わらなかったことはアイツらがいるということ。
俺の隣にはこいつが居るということ。二つあったわ。
かつて俺たちが歌った10年後は想像していた10年後とは違うけど、俺たちは共にいる。それだけで充分だ。
きっと、それは次の10年後だって変わらない。
長期スパンで考えへん話どこいってんってなるけど
もう30年近く居るんやし、今更10年増えたところで変わらんやろと思ってる。鬼なんか勝手に笑い殺しとけ。
最後に手を繋いで笑っているのは俺たちだ。
作者の自我コーナー
いつもの。永遠なんてないけど、この2人は永遠だと思ってしまう。
人間生きていたら誰だって人に言えない秘密の一つや二つ、三つや四つ、いや五つ…これ以上はキリがない。
とにかくみんな隠し事は持っているものだと思う。
その中でも別にバレても問題がないものと、これだけは墓場まで持っていかなきゃいけないものに分かれている。
この仕事はその別にバレても問題ないものをいかに出し惜しみしていくかだ。なんせ初出し情報に価値がつく世の中。
最近何にハマってる、誰とご飯に行った、どこで遊んだ。
俺のアレルギー情報なんて誰が興味あるねんと言いたいが、中には変わった人間もいるもので需要があるらしい。
自分にまだ需要があるということなのでまあ有難いことだ。
「風呂」
「ん」
このタオルでがしがしと頭を拭く美丈夫は『それ』ではない。
バレたらそれはそれで終わるが、そもそもこの関係自体、人に言っているから成り立っているものだ。
つまりこの秘密は共有されている。
では俺にとって『それ』が何か。言えないから秘密なのだ。
なのでヒント、人来る前に風呂場の掃除しといた方がいいよ。
あんたの歯ブラシ変わってないけど、ゴミ捨ててあったね。
つけまつげって虫みたいやね、気持ち悪くて声出たわ。
別に俺は気にしないけどあんたは気にしいだから困るでしょ。
全部捨てといたよ、黒い袋にまとめて。『それ』も纏めて。
もうちょっと匂わした方が牽制になるんかなとは思うけど。
「流しといた」
「ん、髪乾かしたる」
「ありがとう」
この平穏を守れるなら。全て飲み下そうと思うのだ。
『誰にも言えない秘密』
作者の自我コーナー
いつもの。ちょっと暗い話になりました。
気付かないふりをするのは、健気、なんでしょうか。
黒いゴミ袋って最近見ない気がします、あれ以外に。
「おはよーございまー、なんやお前かい」
「なんやとはご挨拶な。そっちこそ早いやん」
「そら、急に隣が涼しなったからな。黙って帰ることないやんけ」
「昨日の格好のまま出社なんかできるかいな」
それもそうだ。昨日が休日ならまだしも週の真ん中で、それも
明らかによれたシャツなんか着てくれば、朝帰りですと言っているようなものだ。
でもなにか引っかかる。それが何かは分からないが。
「おはようございます〜、あー今日暑いわぁ」
そう言って入ってきたのは同期の大倉。もう既にネクタイは外されており、シャツの袖を捲りながら愚痴を吐く。
「起きた時寒かったからさ、長袖着てきたんやけど駅着いたらもう日出てきて暑いやん。満員電車地獄やったわ〜、ほんま着てくん失敗した」
「クールビズやからネクタイは付けんでよかったのにな」
「ほんまそれ………うっわ、何その格好。暑ないん?村上くん」
「……そうや」
それだ、俺が感じていた違和感は。身だしなみが整いすぎてるのだ。流石にジャケットは着てきてはいないが、シャツは第1ボタンまで閉められておりネクタイもキッチリと締めている。
腕捲りすらしていない。家では冬場でも半袖Tシャツの男が、だ。それもお天気お姉さんが夏日だと言っていた今日。
「それや、なんでお前長袖やねん。いつも半袖やのに、ネクタイまで」
「それは……」
「見てるだけで暑いねん、脱げ!」
「わっ、大胆!!」
「……れのせいで」
「あ?聞こえへん」
「誰のせいで半袖着られへんと思っとんねん!!!!」
うわ、ゴジラが火ぃ吹いた。長い付き合いやけどこいつの沸点未だに分かれへん。顔真っ赤で鬼みたいやな。
「ドアホ!!」
「どこ行くねん」
「頭冷やしに行くんじゃボケ付いてくんな!」
バタンと乱暴にドアが閉められる。
「こっわ……アイツなんやねん」
「んふふ、耳まで真っ赤やったね」
何故かニヤけている大隈。あいつキレてるんとちゃうんか?
「え、ニブニブやん。鈍感が可愛くて許されるのは真ちゃんだけやで」
「……もしかして、あいつ恥ずかしがってるん?」
「照れと怒りが半分半分ちゃう?原因が覚えてへんねんもん」
胸に手を当てて考えてご覧よ、と茶化す同期を一発しばいた後、昨日のことを思い出す。
……なんやねん、昨日は可愛かったのに。キスマつけるのへたくそやから全然つけれんで、俺も付けたい言うて駄々こねて…
あ、そうや。それで噛み跡やったら付けれるんちゃうかって。
つまり、あの下には俺の歯型が付いている。
そう考えただけで腰周りが重たくなった。
あかん、何考えてんねん職場やぞ。
「その様子やったら無事に思い出せたみたいやね、けだもの」
「返す言葉もございません……って、なんでお前が分かんねん!」
「昨日2人で帰ってたし?というかいつも半袖の人が長袖着てるだけで怪しいやろ。全然気づかずにデリカシーないこと言うた人もおるけど」
「ほんま面目ない……」
「それは信ちゃんに言うて。でもそのニヤケ面何とかしてからな」
「え、俺ニヤけてる?」
「めっちゃキショい」
薄々気づいてたけどお前って俺に厳しない?
作者の自我コーナー
いつものパロ。みんなオカン派だけどオカンはオトン派。
ガサツってよく言うけどそっちもそっちでデリカシーないとこあるよねっていうお小言
『すぐにどこかに行ってしまう星よりもずっとそこに在る月の方がよっぽど信用出来る』
いつも月に向かって手を合わせる彼に理由を聞いたらこんな謎の理論が返ってきた。そもそも願いが叶うなんて迷信に信用も何もあるのかと思ったが、やたらと真っ直ぐ目で言われてしまって何も言えなくなった。
『月の形によって願い方を変えるんだよ』
『新月ってのはこれから満ちるだろ?だからこうしたいからこう願うっていう、まあ言わば決意表明みたいなものだよ』
彼の願いは随分と具体的なものらしい。努力家の彼がそんなに神頼みならぬ月頼みしてまでも叶えたい願いとは一体なんだろうか。
『満月は満たされた前提なんだよ、つまりまもなく願いが叶う訳だ。だから願いが叶った前提で月に報告して感謝する』
胡散臭い話だ。
でもそう言って月に祈りを捧げる彼は月光に照らされて綺麗に見えた。色白な肌が透き通って見えるくらいに。
怖くなるくらいに美しかった。
朝目覚めると、彼がいなくなっていた。
ぐしゃぐしゃのシーツはすっかり冷たくなっている。
ベッドサイドには見覚えのない箱が置いてある。
中を開けるとメモとペアリングが入っていたようだった。ようだったというのは、その中の1つが消失していたからだ。
内側には彼と出会った日付が記されている。
メモにはへたくそな字で『君は僕の太陽』なんてらしくないことが書かれていて。
…そうだよ、だからずっとお前を傍で照らしてやりたかった。
だからお前は月なんかじゃなくてずっと隣にいる『お前の太陽』に願えば良かったんだ。そうしたら、毎日願わなくてもたった一言で一生分叶えてやれたのに。
夜になったって俺はあいつを返してくれなんて願わない。
もうそんなものは無いからだ。夜空にぽっかり空いた真白い穴を睨みつけた。
『月は永遠に失われた』
作者の自我コーナー
いつものだけどメルヘンチックな話。
月と太陽なんて言いますが、あの二人はどっちも月で太陽。
『君が太陽で僕が月とかそんな単純じゃない』って言ってますし。