誰よりも、ずっと一緒に居た。もはや家族よりも長い時間を共に生きている。だからもう好きとか嫌いとかそういう次元じゃないと思っていた。
そんなに長くいると、会話をせずとも意思疎通ができる。
あいつは顔に出やすいから、というのを差し置いても俺はあいつの事を知っている。誰よりも、ずっと。あいつよりも。
でもそれはあいつだって一緒だ。あいつだって俺をわかっている。自分の限界には気づけないくせに、俺の機嫌は察せる。
だから、俺の気持ちもわかっていると思っていたのだ。
誰よりも、ずっとわかっていたはずなのに、忘れていた。
あいつは自分のことになると鈍感だった。
『誰よりも、ずっと』
人の決死の告白「ええよ、どこ行くん?」で済ませやがった!
そんなお決まりのボケをホンマに言うやつ居るのかと思っていたが、めっちゃ近くに居た。灯台もと暗し、ちゃうねんアホ!
作者の自我コーナー
いつもの。ギャグっぽくなりましたが、鈍感なのは自己評価が低いからです。いつか王子様が呪いを解いてくれるといいんですけど、あの人照れ屋だからなぁ…。
「ねぇ、まじー」
「ん?」
「もう12年なんだって、干支一周しちゃったよ」
「へぇ……」
「リアクションうっすい!凄くない?時間経つの早くね?」
「いやだってもう終わってるし。今まで継続出来てたら凄いけどさ記録は8年で止まってるからね」
「それはそうだけどさ……時間の流れって怖いよねって話じゃん」
「つうか、あれから12年だけど俺とお前は出会ってそんなもんじゃないだろ。あれが確か……18年前か」
「その前にも出会ってるだろー?共通の友人の紹介でさ」
「あぁそうだった……でも覚えてないくらいの付き合いの長さってことでしょ?12年なんて大したことないよ」
「でもさぁ、寂しいじゃん。あの時はコンビみたいな扱いだったのに」
「あー、相方だからなんでも知ってるだろ?みたいな感じで居場所とか聞かれたな。俺はGPSかっちゅーて」
「俺はまじーのことなんでも分かるけどね」
「誰に対してのマウントなのそれ」
「今は……俺の相方って誰なんだろ。誰って思われてるんだろ」
「俺でしょ」
「でも検索トップは……」
「他なんてどうでもいいでしょ。現に俺がアナタの隣にいるんだから」
「……まじーってときどきオレ様だよね」
「事実を述べたまでですけど?」
『これからも、ずっと』
(公私ともによろしく相方)
作者の自我コーナー
いつもの…ではないですが、私の大好きな二人です。
てことは、干支一周する年月私も彼らのことが好きなんだなぁ。
まだ放課後すら無縁の幼い頃に、よく遊んでいた子がいた。
補助輪がやっと外れて少し遠くに行けるようになって、
おばあちゃんに連れられて行っていた公園に一人で行けるようになった。歩いて12,3分くらいの、春は桜が咲く大きな公園。
そこで私はその子にであった。
その子はいつもブランコに乗っていて、
隣のブランコに私が座ったのがはじまり。
遠い記憶だから、どうして仲良くなったのかも何をして遊んでいたかも覚えていないけれど、家からこっそりお菓子を持ち出して二人で食べてたなぁ。チューイングキャンディとか棒付きキャンディとか、あの子はよくサイコロの形をしたキャラメルをくれた。スナック菓子はなかったな。
子どもながらに汚しちゃいけないと思っていたのかもしれない。
私が公園に着く前にはブランコにいるから、多分、近所の子。
弟が生まれたばっかりで、お母さんが構ってくれなくて暇って言ってた。名前はひなちゃん。知ってることはそれくらい。
でも、ひなちゃんと居るのは楽しい。それだけで良かった。
ひなちゃんは人見知りで、私以外と遊ばない。でも私が他の子に声をかけて鬼ごっことか、だるまさんとかに誘えばひなちゃんはブランコから降りてくれる。それが、優越感があった。
私のともだちって感じがして。
いつでもブランコに乗って待っているから、
1度、先に公園に待ち伏せしてひなちゃんを出迎えようと思って早めに行ってみたけど、その日ひなちゃんは来なかった。
それからひなちゃんと遊ぶ時間が伸びていった。
もともと待ち伏せしたのだって、もっと長くひなちゃんと居たかったからだ。1時間遊んだらバイバイしていたのが、16時まで、17時までと伸びていった。
信頼されているのか門限を決めなかった母親が心配するほど、夕日が沈むギリギリまで私はひなちゃんと遊んでいた。
『暗くなる前に帰ってくるのよ』
そう言われていたのに、あたりが寒くなってきたからか、日が落ちるのが早くなってすっかり空の上の方が暗くなっていた。真っ白い三日月が見えてくる。夜が来てしまう。
『帰らなきゃ』と思ってひなちゃんに声をかける。
すると初めてひなちゃんに引き止められた。
「もうちょっと一緒にいたいな」
いつの間にか、公園には私とひなちゃんしかいない。
学校帰りのお姉さん達の声も聞こえない。
いやというほど静かで、まるで私とひなちゃんしか居なくなってしまったみたいだった。
風で揺れる木がなんだか怖くて、大好きなひなちゃんのことを怖いと思ってしまう自分がイヤで、
「ごめん!わたしかえる!」とブランコから降りる。
するとひなちゃんは眉を下げて「困らせてごめんね、バイバイ」と手を振った。
ひなちゃんを傷つけてしまったことがショックで、居てもたってもいられなくなって、自転車に乗るのも忘れて走り出す。
大通りに出ると下校中の小学生のガヤガヤした声が聞こえてきて、ほっとした。
『夕日が沈む』
家に帰るとお母さんが泣きながら抱きしめてきた。
いつもの公園にもいないから心配したと怒られた。
じゃあ私はどこにいたんだろう。
あれからあの公園に行っても、ひなちゃんには会えなかった。
あの子は誰だったんだろう。
作者の自我コーナー
夕方は誰そ彼時とも言いますよね。そんなお話です。
どこがとは言いませんが実体験を基にしました。
居ませんでした?公園でしか会わない友達って。
私はよく年下と遊んでいたので、高学年の時仲良くしてた子が学校に入学してきたみたいなことがざらにありました。
光に当たると茶色く見える瞳と目が合った。
グッと顔が近づいてチュッと音を立てて離れる。
俺の驚いた顔に満足げに形の良い唇が弧を描く。
いつもなら耳まで赤くして逸らすのに、
一体どこでスイッチが入ったんやろか。
随分と長い付き合いになるけど、未だに分からへん。
たわいの話をしていただけなのに、
そりゃ柔こい笑みを浮かべるから見とれてしもたけども。
それのどこに温かい目がギラギラと輝く要素があるんや。
いつもより低い声が名前を呼んだ。腰がずくりと重たくなる。
耳許で煽ってるん?と囁かれる。
なんも言うてないのに、そんな器用なこと出来るかいなと睨んだ。
『君の目を見つめると』
君のスイッチが入る、僕のスイッチが入れられる。
(相互作用)
作者の自我コーナー
いつもの
ちょっと背後注意な話ですね。
ずっとお互いの顔が好きを公言してる方達が好きです。
あいつの目ってめっちゃ綺麗やねん!
きゅるきゅるしてて子犬みたいで可愛いがどうしても先行してまうんやけど。
キラキラと澄んでいて星空みたいやなって、思う。
全然ほんまの星には興味無いんやけど。
それを本人に言うたら、あいつは「それはあんたがほんまの星空見た事ないからや」って言いやがった。
素直に喜べや。褒めてんねんぞ。
「満天の星空って綺麗やねんで」
と風景を思い出しているのか、目をキラキラと輝かせる。
「いつか見てほしいわ、感動するくらい綺麗やねんから」
それやったら常に俺は感動してるわ。
汚い大人たちを見ても、全く濁らないお前の瞳に。
そして、月日は経ち。
俺はなんだか気恥ずかしくなって、あいつの目を見れなくった。いや、見てはいる。
目を合わせられなくなった。でも好きなんに変わりはないから、気づかれないように見ている。ガン見。でも俺が盗み見上手いんか知らんけど、あいつ全然気付かへんねん。
しょうもないスキルだけは身に付いていく。
汚い大人になっても相変わらず、こいつの目は濁らへん。
綺麗なもんや。肺とスケジュールは真っ黒やのに。
そんなある日、友人達とキャンプに行った。
あいつも一緒や。俺とあいつが友人やからなのか、俺とあいつに共通の友人が居るからなんかは分からん。
みんなでテント立てて、BBQして、酒を飲んで、片付けして、酒飲んでおやすみー言うて、酒飲んで、ふと空を見た。
確かに空気が澄んでいるから、空が綺麗だ。
でも目が慣れていないからかそんなに星は見えない。
「綺麗やな」
いつの間にか隣に来ていたあいつが星を見上げながら言う。
思わず息を飲んだ。星空だ。
あいつの瞳にはこんなに沢山星が見えているのか。
確かにこれは、
「綺麗やな」
流石にお前の瞳が、とはクサすぎて言えへんかったけど。
『星空の下で』
作者の自我コーナー
いつもの。
何だかずっと目の話を書いている気がします。
それほど彼らにとって目がキーワードなんですよね。
目が澄んでいたらきっと星空もより綺麗に瞳に宿るんだろうなぁ。作者の目は充血気味ですが。
こんな時間まで書いてるからですね。