宙ノ海月

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1/9/2024, 12:03:01 PM

「三日月」



0時。いつもの廃墟の屋上。

紫煙が、夜の街に溶ける。

特に何かあった訳では無い。

でも、刺激のない日々がつまらないのも事実で。

毎日毎日仕事をして、家に帰って。

恋人もいる。

一般的な、言ってしまえばどこまでも「平凡」な人生。

そんな中で、ふと考えて。

『生きている意味』はあるのか、と。

別に死にたい訳では無い。

でも、生きていても、楽しいことなんてない。

なんて言ってしまえば、怒られてしまうのだろうか。

ブラック企業なんて、今時珍しいものでもないし。

恋人からの愛なんて、所詮薄っぺらなものでしかない。

誰にも求められていない、この事実が心を強く締め付けた。

そんなものだと、割り切ってしまえばよかったのに。

「はは、」

このまま、いっそ、死んでしまおうか。

煙草を足で踏み潰す。

なんだか、どうでも良くなってきてしまった。

錆びたフェンスから身を乗り出す。

体が、ふわりとした感覚に包まれ……

パシッというような音がして、振り向くと誰かが手を掴んでいた。

「まに、あった……」

息を切らして言う彼に、見覚えはない。

「誰、ですか」

そう聞いても、答えてくれる気配はない。

「……」

沈黙が続く。

「……あの、なんで死のうとしたんですか」

「……なんとなく?」

「はぁ?」

「……でも強いて言うなら」

カチ、と煙草に火をつける。

「自分が生きることの必要性を感じなかったから、かな」

そう言うと、突然、肩を掴まれた。

「ぼくが、いくら貴方を見ているかも知らないで……
24時間365日いつでも貴方を助けられるのに。
僕は、あなたがいないと生きていけません」

あまり知らない人に、こんなことを言われるなんて。

ストーカー?少なくともヤバい人であることには変わりないはず……

脳で警鐘がなる。
だが、危険な好奇心が彼から逃げることを許さない。

ありがとうと言うと歪んだ笑みがこちらを向く。

少し生きてみてもいいかな、なんて。

思ってしまうのは既に少し壊れているから?

人の温かさを感じながら、苦い口付けを交わす。

嘲笑が、2人を見つめていた。




───────────────────────────

3時間睡眠+久々の文章
グダグダでごめんなさい……許して。
受験が終わったら、また戻ってきます。
では。

宙ノ海月

10/28/2023, 5:59:56 AM

「紅茶の香り」


わたしには、大好きな古本屋がある。

少し小難しい哲学書や歴史書から、有名な文豪の作品などが置いてあり、アンティークな雰囲気のあるお洒落な古本屋だ。

店内にはいつも、クラシックの音楽が流れていて。

少し小さいお店の中に、沢山の本が置いてある。

今日もまた、足を運ぶ。

チリンチリン

木製の扉の鈴がなる。

「ごめんください」

ゴロゴロと喉を鳴らしながら、黒猫がこちらにすり寄ってきた。

その猫を撫でていると、目の前に人影が現れた。

「いらっしゃいませ。」

「店長さん!こんにちは!」

慌ててスカートを叩き立ち上がる。

茶色のカフェエプロンをした、白髪のオジサマがたっていた。

「少し久しぶりですね。」

「そうですね…来たかったのですが、大学のレポートが立て込んでいて…」

「そうだったのですか!もしよければ、ここで作業していただいてもいいですからね。」

「本当ですか!ありがとうございます!」

一時の休息を思わせる優しいオジサマも、このお店が好きな理由の一つだ。

コト、といつもの紅茶を机に置く。

「では、私はこれで。ごゆっくりどうぞ。」

ふわり、と紅茶の匂いを漂わせ店長さんは裏に戻っていった。

ギシギシとなる椅子に腰かける。

ダージリンの匂いが、私を妄想の世界へと誘っていく。

今日は、どんな人生を生きようか。

本の背を撫で、1人紅茶を揺らしながら考える。

今日もまた、偽りの世界へ浸っていった。

10/24/2023, 9:13:03 AM

「どこまでも続く青い空」

今日、友が旅立つ。

船に乗り、生まれ育った島を出て都会に行くらしい。

何度か、行ったことはあるけれど。

息がしづらくて、とても苦しかったこと。

キラキラした町はとても綺麗だったこと。

それでも、やっぱり島に敵わないな、なんて思っていた。

友には、夢があるらしい。

それは、島では叶えられないものらしくて。

夢を応援したかった私は引き止めることも出来ず、ずるずると言えないまま、友が旅立つ日を迎えてしまった。

もうすぐ、会えなくなってしまう。

それがどうにも悲しくて、涙がこぼれそうになる。

でも、笑って見送って、って言われたから。

目尻に溜まる涙を拭き、船を見上げた。

ブォーーー

船の動き出す音がする。

友が、船からこちらを向いているのが見えた。

私は、深く、息を吸い込んだ。


「いつまでも、待ってるからっ!!
また、会おうね!!」


これで、聞こえただろうか。

ゆっくりと目を開け友を見上げると驚いた顔をしてこちらを見ているのが見えた。

そして優しく微笑み、こう言った。

「絶対、夢叶えてくるから!
それまで、待っててね!」

私は何度も頷きながら大きく手を振った。

船が見えなくなるまで、何度も、何度も。

船が水平線に消える。

どこまでも続く青い空は、静かに私たちを包み込んでいた。

10/22/2023, 1:47:24 AM

「声が枯れるまで」


昨日、親友が死んだ。

自分で屋上から飛び降りたらしい。

真夜中に、1人で。

親友の母親から電話があり、今朝、この事実を知った。

いや、違う。そんなわけがない。

昨日まであんな楽しそうに話していたのに。

また、明日ねって約束したのに。

信じることが出来なくて。

彼女が生きていると、まだ、生きていると。

死んでしまった、なんて。

そんなこと、信じることが出来るわけがなかった。

頭のどこかでは理解していても。

実感は、湧かなかった。


次の日、葬式が行われた。

白い服に身を包み、静かに眠る彼女がいる。

そっと、彼女の肌に触れた。

冷えきった肌は、到底人とは思えないもので。

「あぁ、死んでしまったんだな」って

理解してもなお、泣くことは無かった。

こんな、薄情な人間だったっけ。

骨になってしまった彼女を見ても、心が動くことは無かった。


また学校が、始まった。

いつも通り起きて、身支度をする。

こんなにも変わらないんだなって

彼女がいなきゃ、生活できないって思っていたのに。

いつも通り授業を受けて、部活をして。

変わったことといえば、少し周りの人が優しくなったこと。

目に見えた偽善に吐き気がした。

あと、少しだけ、日常が物足りなくなったこと。

話しかけてくれる他の人で埋めようとしても、どうしてもよぎってしまって。

でもいつかそれもなくなるのかな、なんて思ったらなんだか寂しくなって。

1人ある場所へ向かった。

それは、私が彼女とあっていた場所。

クラスに馴染めなかった私の、居場所だった。

今は使われていない、物置のようになっている教室。

旧校舎の2階、1番奥の教室。

ここなら誰にも見つからないねって、悪巧みをしたこともあったっけ。

私と彼女の思い出が詰まった、大切な場所。

ガラガラガラ

建付けの悪い扉を開けると、風が顔を撫でた。

風の吹く方では、白いカーテンが靡いていた。

ギシギシとなる床を歩いて、いつも使っていた机に触れた。

卒業まで、ここにいてくれると思っていたのに。

何となく、少し体重をかけた時。

カサ、と紙の音がした。

首を傾げ、机の中を覗くと。

私宛の、手紙が入っていた。

封を切り、手紙を読む。

『いつも、ありがとう。

直接別れを伝えなくてごめんなさい。

先に、行きます。

何も、いえなくて、ごめんなさい。

この世界に、私はいらないなって思ったから。

必要ないと思ったから。

君も、他の人といた方がいいよきっと。

私なんかよりずっと。

いつも、優しくしてくれてありがとう。

優しい君なら、先にいくのもゆるしてくれる?

もし、来世でまた会えたら。

次は、最期まで一緒にいようね。』

「...ぅ」

「...ゔぁ゙ぁぁぁぁああぁあっ!!」

「なんで、いってくれなかったの

苦しいって、つらいって...

そんなに信用ならなかったかなぁっ...

私は君が思ってるよりずっと、

君のことが、大切、だったよ。」


誰にも聞こえない叫びが、教室に響く。

手紙をクシャクシャになるまで握りしめながら、声が枯れるまで泣き叫んだ。


手紙に入っていたローダンセの花の香りが、彼女の周りを包み込んでいた。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
あとがき

受験いやです。どうしましょう。
息抜きに書いてみました。
お久しぶりです。
久々だったのでちょっと長め...かな?
どうですか?文章下手になってないですか?
なってないといいなぁ...
ではまた。
このあとも読書をお楽しみください。

10/11/2023, 11:32:09 AM

「カーテン」


「ただいま〜」

靴を脱ぎ、よたよたとソファに直行する。

ボフン

身体がはねる。自然と顔が柔らかくなるのがわかった。

このままソファに身を委ねてしまいたい...

そう思う気持ちを少しの理性で押しとどめ、起き上がる。

「はぁ...」

いつも変わらない。何の変哲もない毎日。

ロボットみたいだな、なんて毒づく。

決められたプログラムをこなすだけ。

それに、物足りていない自分がいた。

何か、刺激が欲しい。

何か、変化が欲しい。

何か、何か...

ザァアアア

「お迎えに上がりました。マイロード。」

夜風に靡くカーテンの裏。黒い服の怪しい男が立っていた。

大きく目を見開く。不審者?怪しい。近づいては行けない。

そう頭では理解しているのに。

心臓がはねる。足が向かっていく。

少し長い袖が風邪でなびく。

「お手をこちらに。」

警鐘を鳴らす頭を無視して彼の手を取る。

瞬間、視界は逆さになると同時に黒い羽に包まれた。

目を閉じる。体が柔らかい何かに包まれていくのを感じた。


『次のニュースです。
███県███市で■時頃、××××さんが行方不明とな りました。
部屋は窓が開いており、黒いカラスも思われる羽が発見されたそうです。
警察は現在捜査中で━━━━━』
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄

あとがき

書いていたデータ吹っ飛んだので短く書き直した版です。
リハビリみたいな感じだと思っていただけると...!
ファンタジー書きたくて!踊りませんかも今度書くのでその時のためにでもあるんですけど。
言葉使い変な気がしてならない...

あ、今後もっと更新されなくなるかもしれないので気長に待ってください...!(待っている方がいたら)
努力はします...
夜靡くカーテンも朝カーテンの隙間からはいる日差しも好きです。
なんだか幻想的じゃないですか?
でも朝は実際すごい起きたくないのに起こしてくるので言葉だけかもしれないですけどね!!

...終わりが雑で申し訳ないですが、このあたりで終わりたいと思います。
この後も読書をお楽しみください。

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