宙ノ海月

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「声が枯れるまで」


昨日、親友が死んだ。

自分で屋上から飛び降りたらしい。

真夜中に、1人で。

親友の母親から電話があり、今朝、この事実を知った。

いや、違う。そんなわけがない。

昨日まであんな楽しそうに話していたのに。

また、明日ねって約束したのに。

信じることが出来なくて。

彼女が生きていると、まだ、生きていると。

死んでしまった、なんて。

そんなこと、信じることが出来るわけがなかった。

頭のどこかでは理解していても。

実感は、湧かなかった。


次の日、葬式が行われた。

白い服に身を包み、静かに眠る彼女がいる。

そっと、彼女の肌に触れた。

冷えきった肌は、到底人とは思えないもので。

「あぁ、死んでしまったんだな」って

理解してもなお、泣くことは無かった。

こんな、薄情な人間だったっけ。

骨になってしまった彼女を見ても、心が動くことは無かった。


また学校が、始まった。

いつも通り起きて、身支度をする。

こんなにも変わらないんだなって

彼女がいなきゃ、生活できないって思っていたのに。

いつも通り授業を受けて、部活をして。

変わったことといえば、少し周りの人が優しくなったこと。

目に見えた偽善に吐き気がした。

あと、少しだけ、日常が物足りなくなったこと。

話しかけてくれる他の人で埋めようとしても、どうしてもよぎってしまって。

でもいつかそれもなくなるのかな、なんて思ったらなんだか寂しくなって。

1人ある場所へ向かった。

それは、私が彼女とあっていた場所。

クラスに馴染めなかった私の、居場所だった。

今は使われていない、物置のようになっている教室。

旧校舎の2階、1番奥の教室。

ここなら誰にも見つからないねって、悪巧みをしたこともあったっけ。

私と彼女の思い出が詰まった、大切な場所。

ガラガラガラ

建付けの悪い扉を開けると、風が顔を撫でた。

風の吹く方では、白いカーテンが靡いていた。

ギシギシとなる床を歩いて、いつも使っていた机に触れた。

卒業まで、ここにいてくれると思っていたのに。

何となく、少し体重をかけた時。

カサ、と紙の音がした。

首を傾げ、机の中を覗くと。

私宛の、手紙が入っていた。

封を切り、手紙を読む。

『いつも、ありがとう。

直接別れを伝えなくてごめんなさい。

先に、行きます。

何も、いえなくて、ごめんなさい。

この世界に、私はいらないなって思ったから。

必要ないと思ったから。

君も、他の人といた方がいいよきっと。

私なんかよりずっと。

いつも、優しくしてくれてありがとう。

優しい君なら、先にいくのもゆるしてくれる?

もし、来世でまた会えたら。

次は、最期まで一緒にいようね。』

「...ぅ」

「...ゔぁ゙ぁぁぁぁああぁあっ!!」

「なんで、いってくれなかったの

苦しいって、つらいって...

そんなに信用ならなかったかなぁっ...

私は君が思ってるよりずっと、

君のことが、大切、だったよ。」


誰にも聞こえない叫びが、教室に響く。

手紙をクシャクシャになるまで握りしめながら、声が枯れるまで泣き叫んだ。


手紙に入っていたローダンセの花の香りが、彼女の周りを包み込んでいた。


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あとがき

受験いやです。どうしましょう。
息抜きに書いてみました。
お久しぶりです。
久々だったのでちょっと長め...かな?
どうですか?文章下手になってないですか?
なってないといいなぁ...
ではまた。
このあとも読書をお楽しみください。

10/22/2023, 1:47:24 AM