よく思うことをお題に沿って言う。情報交換の時だけ正直なことを言えば良くない?
別に自分のことで話すことなんて無いし、聞くこともないよ。
友達と話すのだって、情報交換だけだもの。
あの鯉かわいい。
アイス食べたい。
これ初めて食べたなあ。
美味しい?
美味しいよ。
そっか。
うん。
次どこ行く?
薔薇園行こう。
そうだね。
綺麗だなあ。
写真撮るね。
私も撮るよ。
綺麗だね。
うん。そういえば前にネモフィラ見に行ったんだよ。
へえ。写真見せてよ。
うん。いいよ。どうぞ。
ありがとう。
これが情報交換だよ。
でも、なんだか普通の会話だね。
楽しい会話もただの情報交換だ。
嘘をついた時は、相手が察さないのが悪い。うんそうだね。悪い悪い。嘘つきでも悪くないよ。
悪くない。
悪くない。
お題【梅雨】 フィクション
ぽちゃりと音を立てて水溜まりに雨水が落ちた気がした。
病室のベット、私はひとりで小説を読んでいたけれど、なんだか飽きてきて、窓の外を見た。
ザーザーと雨が降っている。せっかくセットした前髪も潰れている。梅雨なんていいことないよ――
「中村さーん!ねえこっち来て遊ぼうよ!」
私を呼んだのは、同じ病院で入院中のヤツ。北川春奈だ。私は正直言って大嫌い。早く病状が悪化して死んじゃえばいいのに。
「…いやだ」
「は?なんでよ。せっかく遊んであげようと思ったのになあ」
笑いながら私に言うけれど、私にはその笑みでさえ鬱陶しいのだ。道路にできた水たまりのように、轢き殺されちゃえばいい。
「…分かったよ」
早くお話を終わらせた。そのひとつの思いだけで、私はベットから降りて、春菜の方へ歩いた。
ガッシャン。
「は?」
私が大切にしていた金魚の、凛。凛とした顔にぴったりな名前だろう?その凛の入った水槽を落とされたのだ。春奈のヤツに!
「あはははっ!なによ。金魚が息絶えただけじゃない。観賞用の魚なんてただの絵よ!」
絵?確かに、見ていて落ち着くし、私まで可愛くなれた気がする。でも、エラで呼吸をしている。人間と同じように生きている。お友達なのだ。たった一人のお友達。
「っざけんじゃねえよ!」
私は春菜の頬を叩いた。死ね!死ね!お前なんてお前なんて!
私は、凛のおうちの割れた欠片を手に強く持った。てから血液が出てきている。これを春菜の目に刺せば!死ね!死ね!
「雪!」――
私は駆けつけた看護師さんに捉えられて、ベットに戻った。
「なんであんなこと――」
「あんなことって何?あいつが行けないんだよ。あいつが!」
看護師さんの言葉を遮った。何も知らないくせに。あんなことって何?わたしの友達を殺したんだから、死刑だろ?死刑!死刑!
「落ち着いて。私は二人の間に何があったか知らないけど、やりすぎだよ。私が来なくちゃ、春菜の目にガラス。刺してたでしょ?」
「知らないなら言うなよ。いい人ぶってる大人なんて大っ嫌い。お前もあいつと同じじゃん」
「そう?」
看護師さんは、わたしの頬を叩いた。痛い。痛い!
「は?何してんの!」
「自分だけが辛いわけじゃない。自分だけが悲しい思いをしているんじゃない。この世界は自分中心に回ってない。お前はブスだ!お前はデブだ!お前は心が狭い!お前は優しくない!お前は――」
「キャー!やめて!やめて!」
なんなの?こんなの看護師さんじゃない。こんなの!こんなの。
「…かれこれ5年はここに居座ってるけど。まだ気づかない?ここは現実じゃない。裏の世界だよ」
う、ら?わかんない。わかんないよ。ここまで言われても思い出せない。ここはどこ?ていうかなに、裏の世界って。
「ここは西瓜。雨は西瓜の汁。私は種」
西瓜?なにそれ。やば。なんだ、笑いを摂るために言ってたんだね。あはは!やばい。
「西瓜?あははっ!看護師さんおもしろーい」
「…まだ気づかないんだね。貴方は好きだった人に振られた女の子。そして自殺した。その軽い命を背負った人間は軽い命を背負った人が食べる西瓜のゴミでしかない」
「…白雪 彩葉」
「ふふ、そうだよ。君の前の名前だね」
やだ。うそ。なんで!私は、私は!そんなわけない!自殺なんて!
「っ人間じゃないくせに!簡単に死を選んだ私をバカにしてたの?!人間じゃないくせに!人間じゃないくせに!」
人間じゃないくせにと、看護師さんの喉に穴を開けるように何度も何度も言う。
「そうだよ。私は人間じゃない。お前みたいな愚かな人間じゃない」
「何それ。あの時の私は死にたいほど辛かった!なのに、なのに!」
「…私は、彩葉の心だよ。黒く染った、スイカの種のような心だよ」
…あ、あ、やめて。なにがなんななのか分からない。どういうこと?やだ。早く出して!私をここから出して!
「さっき言ったことは彩葉が自分に食べさせようとした言葉。…ごめんね。私がスイカの種じゃなかったら、彩葉が飲み込んで、その言葉の反対の意味を受け取ってたのに。ごめんね、ごめんね、私が種でごめんなさい」
なに、やだ、どういうことなの?あれ、看護師さんの顔が分からない。顔は見えているのにどういう顔なのか心にキザめない。
「次に行っても雨を嫌いにならないで。西瓜を、種を、人間を、看護師さんを、お友達を、嫌いにならないで」
今日は今日とて憂鬱だった。
友達がどんどん離れていく。もう嫌いだ。
あー、やだやだ。なんでいつも早く帰りたいって思っちゃうんだろう。来週からは必ず放課後勉強しなきゃだし。あーもうやだやだ!
でも、こんな嫌な日々でも、嬉しいことがあった。それは、自転車に乗って家に帰ろうとしているときなんだけどね。犬種は分からないんだけど、可愛いわんちゃんをお散歩していたお婆さんが、おかえり〜!って言ってくれたの。それに私は、ただいまです!って言いたかったんだけど、なんだかいえなくて、こんにちはって言ったんです。そしたら、お婆さん。お姉さん優しいね。ってワンちゃんとお話してた。
その瞬間、自転車で轢き殺した水溜まりの水の音が私の耳に大きく響いたんだ。嬉しかった。褒めてくれたんだもの。毎日言って欲しい。優しいねって。可愛いねって。偉いねって。みんなに褒められたいだけなんですよ。
愛されたかっただけで、他人でもいいから愛して欲しいだけなんだ。嬉しくて嬉しくてたまらなかった。抱きしめて欲しいだけで、私の骨が砕けるほど、抱きしめていいから、強く抱きしめて欲しい。見た目と勉強にしか気を使ってない私でも、愛されたくて。あなただけが全てだって言われたかっただけです。それだけなんです。
嫌われたくないから本当のことなんて言わなかったし、ずっとずっと笑顔でいた。そしたら気安く話しかけてくれる子ができた。それだけで嬉しかったんだ。でも、時が経つにつれて、どんどん離れていく。みんなみんな離れる。
みんな友達がいるのに、自分だけいなくて、自分だけがおかしいみたいで。なんだかみんなが羨ましいんだ。もうみんなみんな死んじゃえ!もうみんなみんな大っ嫌い!小説を書いているだけでいいよ。ずっと寝てたいな。しょうじきしんどいって思っても、言葉に表せるしんどさじゃなくて。何得なくしんどいんです。そんな曖昧な問題を抱えたヤツが助けてだなんてただ迷惑だろ?
「辛いや」
私は部屋でポツリと呟いた。これが人の前で言えたら、どれだけ気が楽になるんだろう。慰められなくても、冷たくされても、何を言われてもいいから言いたい。どうせみんな何も言わないだろうし、そこまでお前を見てないって思われちゃいますよね。
みんなどうして他人のことを思えるのか不思議だよ。私は自分のことばっかりだもの。
何が違うんだろう。私だって、同じように、優しくしてくれる親の家に生まれて、そして、そして、どこが間違ってたの?もう苦しいんだ。暗い暗いお部屋の中で寝転がりながら書くこの分はいつか笑って読み返せるのだろうか。
私は、本当の自分でいた方が愛されるのかな?
それなら
愛想笑いなんて死んじゃえ
作り声なんて死んじゃえ
優しさなんて死んじゃえ
他人を思う気持ちなんて死んじゃえ
みんな死ななくていいよ。私は明日からでもかわれるのだろうか。無垢な子なんてこの世にいないよ。
みんなみんな、心のどこかは絶対に黒いもん。自分だけおかしいわけないよね。そうだよね。
また
前に進める
ーーー
今日の給食は美味しかったですよ。
お題「終わりなき旅」
私は、なぜ人を救えれるような人になりたいと思ったのだろう。
最近になって、ジメジメした季節になった。汗の匂いが漂う教室で、私はお気に入りのお花のスプレーをふりかけている自分を好きになる。
私は、あの夏を思い出す。ベランダから見える花火を見て、その後、自分も花火をして、衒う花火と一緒に私も輝けていた。
夏しか私を輝かせてくれない。そんな夏がある。大好きな夏の横に、いいや。横にすら居られない私は、いる。
絵が好きだった。自分の世界に浸れるから。上手だと言ってくれるから。けれど、絶対にここにこれを書いて、これはこの色で塗れ。そんな命令を出されるような時間は嫌いだった。
運動が好きだった。成功すると嬉しいから。けれど、誰かと戦ったり、協力して争うようなものは嫌いだ。自分が失敗したら、下手に励まし合うから。
勉強が好きだった。自分がやっとちゃんとした人間になれた気がするから。けれど、私より努力している人、していない人との距離が近いから。私の努力は不足していると感じて、やる気が起きない。
なんだか、好きなものがどんどん減っていく。そんな私が嫌いだった。でも、一つだけ好きなものがあった。
小説が好きだ。自分の世界に浸れる。小説に助けられた人もいるけれど、私には助けられるようなじんせいをおくっていない。
けれど、やっぱり好き。人を助けられるような人はどんな人なのかを知れるんだ。
それは、自分も辛い思いをした人や、人生とはなんなのか、現実味のある小説を書く人が多かった。それに比べて私はなんだろう。
対して辛い思いもしていないし、救えられたこともない。だけど、必死に幸せになろうとしている。
何冊も小説を生み出しているのに、心がひとつにまとまらない。
早く人を救いたい。早く誰かに見てほしい。早く将来の夢が欲しい。早く友達が欲しい。早く、早く!
なにが愛していた人が幻覚の人物だ!普段している臆病な行動に注目して進む小説なんて誰も読まないだろう?
ビリビリと破る原稿用紙を汚く丸めて、紙袋に入れる。それは、前からの事で、何冊も小説を書いても泣いて破る私を後々、後悔した私の工夫。その後、紙袋から敗れた原稿用紙をテープで繋ぎ合わせて、棚の奥底に並べるのだ。
最近になって、量が増えてきたけれど、わざわざ確認して捨てるのは、また泣いてしまうだろうという恐怖から捨てられない。
いつになったら自分で読める小説をかけるのだろうか。もう、誰かを救いたいだとかどうでもいいんだよ。自分を救いたい。自分を愛することしか出来ない。誰か愛して欲しい!愛せよ。
これだけ小説を生み出しても、心の無駄な黒い煙は、綺麗な煙と分離してくる。
私を1番に思ってくれるモノが欲しい。恋人が欲しいわけじゃない。友人が欲しいわけじゃない。ただ、私を思ってくれるモノが欲しい。
私が死ぬまでに、そのモノは、見つかるのだろうか。あとはざっと、九十年しか生きられない。
死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。まだ生きたいよ。千年は行きたい。千年生きられなくちゃ、見つかる気がしないんだ。
終わりなき旅を手に入れるにはどうしたらいいんだ。死んだら全部終わりなんてやだよ。死んでも小説書けるかな。しんでもこの生活?死んでもこの顔?なら尚更死にたくない!
きっと、この人生を終わりなき旅と言えるのは若いからだろう。辛いからだろう。私は、若い。でも辛くない。
「ごめんね」
気づいたら口によく出している。
春夏秋冬。何百日経っても、治らない癖。
私は、人へかける言葉、一言一言に怖がっているようじゃあ、本当の友達というものが、その中にいるのだろうか。
私にとっての友達はなんなのだろう。
本音を話し合える?それなら、居ない。
相手のことをよく知っている?それなら居ない。
分からない。でも、ということは、相手も本音を話していないんじゃないの?自分のことをよく話してくれていないんじゃないの?
なんだよ。お互い様じゃんか。みんなみんな、同じじゃんか。
顔、声、体型、考え方、国籍、性別、それぞれ違うだけで、みんな同じようなものじゃんか。
頭のイイあの子も、可愛い、カッコイイあの子も、運動ができるあの子も、気の強いあの子も、みんなみんな、同じなんじゃないの?
考えすぎてただけだったのかもしれない。
本当、偽物なんて言葉のない、ただひとつの友達。
知り合いで、タメ口で話し合えるだけの関係なんじゃないの?違うの?それじゃあ、私には友達なんて居ない――
私は、教室で小説を読んでいるとふと思ったんだ。
本当は小説なんて大好きってほどでも無いの。
けれど、みんなと馴染めなくなってきたこの頃、小説を読む日が続く。
なんだか、相性?考え方?が合わない気がする。
前までは、2人で仲良くしてたのにね。いきなり、部活が一緒なだけで仲良くなっちゃってさ。まあ、前から仲良かったのは知ってたけど。ていうか、あの子が行けないんじゃないの?
誰とでも仲良くできてて、私が知っている中では、2人はあの子を1番の友達だと思ってる。
なんでよ。せめてひとりと仲良くしててよ! 私に笑顔で話しかけてくれる時、罪悪感?わかんないけど、心がぐちゃぐちゃする。その子に好意なんて持ってない。でも嫌いでもない。
なんだよ。私とあの子が話してた時、嫉妬したって、私を殺したくなったって、笑って言ってたけど、気持ち悪い。
何が嫉妬だよ。楽しそうに話してたの?私。ただの愛想笑いだよ、ばーか! 彼氏いる癖に、何が嫉妬しただよ。二股かよ。
こんなんだから好かれない。私はみんなが好きだ。男女問わず、みんなに好かれたいから。どんなに嫌いな奴でも笑顔で話すし、話す時は好き、嫌いなんて考えない。めんどくさいとか思えない。
でも、あのこと話すとやっぱり、嫌いだと思ってしまう。
「ごめんね」