シロイヌ

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1/13/2024, 2:42:03 PM

 君の隣にいる夢をみていたい。
 
 君の綺麗な髪が風になびいて、心地よい香りが感じられる。そんな情景を思い浮かべては現実を理解する。君の隣になんていられない。

 もし、君の隣にいる夢を見れたなら、どれだけよかっただろう。想えば想うほど夢に現れてくれなくなるのはなぜだろう。

 もしかしたら、今のこの世界が夢なんじゃないだろうか。君に会えないこの世界は、夢見の悪い日の作り物にすぎないのではないか。そうだったらいいな。そうしたら、この夢が醒めれば君の隣に。

 だけど、何もかもが思い通りはいかないこの世界を現実と呼ぶのだ。だから、君の隣にいる夢を見ていたい。

                遠い君へ

1/12/2024, 1:55:45 PM

 「そういえば、今日は私の誕生日でしたね。」 

 君が大人への階段をまた一段登った日。贈った髪飾りをそっと撫でながら、嬉しいと言ってくれたっけ。

 これまで君に贈ったプレゼントの数は、君が一歩ずつ大人になっている証。時の流れとともに、次第に大きくなっていく。

 少し前まで、あんなに小さかったのに。時の流れは面白い。君の成長をもっとみたいと思う反面、ずっとこのままでいてほしいとも思う。いつか、この手からひとり立ちする時が来ると思うと、嬉しいようで少し寂しい。

 今この瞬間の君を焼き付けておこう。君は成長していくけれど、今の君を思い出せるように。
 

1/11/2024, 12:00:58 PM

 「手がちべたい...」

 部屋に入るなり、真っ赤になった手をこすりながら君は言った。その手に触れてみると、まるで温度を失った氷のようだった。

 手も耳も頬も、外界と触れる部分の全てが赤い君をみていると、凍てつく寒さの中で凍える君が目に浮かぶ。何もしてあげられなかったことがとてつもなくやるせない。

 せめて、君の手から伝わってくる冷たさと引き換えに、君の手へ温かさを伝えたい。熱力学第0法則があるのなら、触れ合うものの温度は均一にならなければいけない。君だけが冷たくていいわけがない。

 寒さが身に染みるときには、温もりもまた身に染みる。冷えきった君に少しでも温もりをとどけられたら嬉しい。
 
                遠い君へ

1/10/2024, 1:08:09 PM

 「もうお姉さんですから。」
 
 16歳の頃、君はそう言った。もう大人なのだから、子供扱いしないでほしいと。

 あと数年。君が本当の意味で大人になるまでの時間。きっとあっという間に過ぎ去ってしまうのだろう。

 ずっと見守ってきたはずなのに、気づけば君は立派な大人になっていた。少しの寂しさはあるけれど、君が無事に成長してくれたことが何より嬉しい。

 残りの数年、たまに子供扱いすることを許してほしい。

                遠い君へ

1/9/2024, 1:33:28 PM

 「今日は月が綺麗ですね。」

 紺色の空に浮かぶ三日月を見上げながら、君はそう言った。

 細くて今にも消えてしまいそうなのに、見えない月の縁に確かにしがみついている明るい弧。その儚くも力強い姿に胸を打たれる。そう伝えた。

 「見えないから綺麗なんです。」

 君はそう答えた。

 三日月の夜、月はその縁の一部分しか姿を見せてくれない。未知の領域が多いからこそ、無限の可能性を秘めている。だから、三日月は想像力を掻き立てる。
 
 君の言葉の意味を自分なりに解釈してみたけれど、君のことは何もわからなかった。だから、もっと君のことを知りたいと思った。

 今日は、三日月が綺麗だった。

                遠い君へ

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