シロイヌ

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 「手がちべたい...」

 部屋に入るなり、真っ赤になった手をこすりながら君は言った。その手に触れてみると、まるで温度を失った氷のようだった。

 手も耳も頬も、外界と触れる部分の全てが赤い君をみていると、凍てつく寒さの中で凍える君が目に浮かぶ。何もしてあげられなかったことがとてつもなくやるせない。

 せめて、君の手から伝わってくる冷たさと引き換えに、君の手へ温かさを伝えたい。熱力学第0法則があるのなら、触れ合うものの温度は均一にならなければいけない。君だけが冷たくていいわけがない。

 寒さが身に染みるときには、温もりもまた身に染みる。冷えきった君に少しでも温もりをとどけられたら嬉しい。
 
                遠い君へ

1/11/2024, 12:00:58 PM