NoName

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3/17/2026, 2:44:05 PM

泣かないよ。
私の前で転んだ君が起き上がって言った一言。
痛そうに目に涙をためている。
少し前までは泣いていたのに。今はもう立派な大人に見える。
小さな小さな体。そんな小さな体を反りあげて。
胸を力いっぱい張り上げている。

大丈夫?もういたくない?

泣きそうな君に私は問いかけた。

うん。いたくない。ぼくつよいもん。そうくんつよいもん。

今にも泣きそうな顔。
昨日まではすぐに泣きついてきたのに、自分で立派に立ち上がっている。
嬉しいような、どこか寂しいような、そんな気持ちが湧いてくる。

おかあさん。ぼくもう、なかないよ。
だってそうくん。もう大きいもん!

眩しいくらいの笑顔を私に向けて君は大きな声。
たしかに昨日よりも君が大きく見える。
笑顔の眩しい君。
お母さんの方が泣いてしまいそうになるよ。

でも、お母さんもそうくんと同じで、もう、
泣かないよ。
そうくんとは、毎日笑顔でいたいから。

そうくん。帰ろうか。

うん!

帰ったらまずは、泥を落として傷の手当と、絆創膏をしようね。そうくん。

自分で立てるようになったの。偉いね。
そうくん。

3/16/2026, 4:07:03 PM

待って!
ついて出た言葉。
君は足を止めてこちらに振り返る。
少し面倒くさそうにしながらも、僕を心配してくれている表情。

小学生の僕には少しきつい表情だったけれど、今の僕にはあの時の君の心が少しならわかる気がする。
本当は僕を思う優しい心で一杯だったんだよね。
心配とか、そういう言葉では表しきれない君の心。

僕はそんな君が大好きでたまらない。

僕はいつも怯えていた。
周りの言葉に、怯えていた。
昔皆で行った肝試し。僕は怯えてその場にしゃがみこんだ。
そしたら君は、
こんなのが怖いの? だって。

僕は、怖いものは怖いんだ!って、言い返したっけ。
小学生から一緒の君には、何も怖いものはないんだって、ずっと思ってた。
でも、白いドレスを着て立つ君は、肩を震わせていた。僕の隣で。
僕は意外だなって、思うのと同じくらい、自分と似ているところがあることに、喜びを感じたよ。
そっか。君はこういう時に、"怖がり"なんだね。
って。

その日以降も僕は、君の怖がりな所をいつも隣で眺めてた。
どことなく可愛らしくて、愛おしい。
とても…幸せな時間。
沢山見てて気づいたよ。
君は怖がりじゃなくて、強がりだってことに。
皆に弱い所、見せられないって言ってたの、君が酔った時に聞いちゃった。

これからもお隣でよろしく。
僕の強がりなお嫁さん。


        僕は君の隣の《怖がり》な夫くん

3/15/2026, 1:07:29 PM

夜。僕達は空を見る。

空にはいつも一つの惑星の周りを回る光が見える。

明るい空に僕達は願いをこめる。

祈るように。短く三回。

綺麗な空に僕達は願いを伝える。

年に何度か現れる光に向かって。願いを伝える。

叶えてくれるかな?

明日には叶っているのかな?

叶っているといいな。

願いを伝える度にわくわくが止まらない。

叶えて。僕達の願いを。

叶わないと言われた僕達の願いを。

いつの日か伝えた願いを。

何度も。何度も。光が見える度に伝えた。

そしたらね?

今日、僕達の手の中に沢山落ちてきたんだよ。

あぁ…これが星ってものなんだ。

とっても綺麗だなぁ。

空にあった沢山の光は、星として僕達の腕の中で溢れていた。

僕達の願い。叶えてくれたんだね。

僕は腕の中で溢れるその星達を。

優しく抱きしめた。

沢山の星は。とても暖かかった…。


                  星が溢れる

3/14/2026, 10:32:37 AM

毎日同じ景色。毎日同じ人物。毎日同じ行動。
どれだけ繰り返しているのかわからない。
つまらなくてたまらない光景。

でも時々、つまらない光景に新しい灯りが灯る。
その灯りは私だけを照らしてくれる。
私はその灯りによく話しかける。
「今日は外をさんぽしたんだよ」

「今日は初めてお寿司を食べたの」

灯りは何も言わない。

何も言わないけれど、優しく私だけを見ていてくれる。
少し前から私のそばにいてくれる灯り。
時々しか灯ってくれないけど、私には充分だった。
でも…いつからかな…。
灯りが灯る時が、少しずつ、少しずつ、増えていって、最初はわからなかった灯りのあたたかさも、わかるようになったの。
側にいてくれる時間が増えて、私は、夜が寒くなくなっていった。

「今日はね、久しぶりにケーキを食べたの…
甘くて…ふわふわで…すっごく美味しかった…」

灯りに、いつものように話しかける。
「明日はお外に出られるんだって…。
お誕生日…だから……沢山遊んでもいいって…。」
少しずつ私はまぶたが重くなっていった。

「……灯りさん…明日も…来てね…」
灯り以外、誰もいない部屋。
私、寂しくて好きじゃなかった。
でも、灯りさんが来てくれるから、もう、寂しくないよ。ありがとう。灯りさん。

灯りはただただ、私を優しく見守ってくれた。



彼女は、いつも一人、同じ部屋にいた。
誰も来ない。灯りも灯らない白い部屋で。
灯りがないなら、と、僕が彼女の灯りになった。
彼女は笑顔を沢山見せてくれるようになった。
でも、少しずつ彼女の笑顔は、元気さを失っていっていた。
どうにかしてあげたかった。
でも、できなかった。
僕は君とは話せない。僕は与える側じゃなくて、奪う側だから。
君とまた会えるのは、次はもっと暖かい場所になる。

もう君が凍えることはない。寂しくなることもない。

僕は彼女の頭に初めて手を乗せた。
心なしか、彼女の表情が安らかになったかのように思えた。

"お疲れ様
次会うときは、また沢山お話したいな…"

朝が僕達を優しく包みこんだ。


安らかな瞳

3/13/2026, 1:53:15 PM

私は毎朝一つの夢をみる。
ある日はさんぽを。
ある日は家でコーヒーを。
ある日は山中で旅をしている。
そしていつも同じ人物を見る。
寂しげに、でも嬉しげに私の顔を。
いつも同じ位置から、見上げている。

そしてこう声をかける。

「今日はコーヒーを飲んでいるんだ。」

「今日は本を読んでいるよ。」

声をかけると、声を聞いた人物は、いつも私に同じ笑顔を向けてくれる。

無垢な可愛らしい笑顔。

その笑顔のまま、いつもこう言う。

「いつも一緒だよ。」

私はいつもこう応える。

「これからも一緒だよ。」

夢から覚めると、私の隣には……。
あの時と同じ笑顔をくれる、君がいた。

いや、あの時と変わらない。何も変わらない。
私の手元には君がいた頃の証がいる。
だから今までもこれからも変わらない。

私の隣には、一つの写真立てがある。
子供の頃、一緒に育った君。

私の隣の可愛らしい君。
お尻の茶色い毛を振って、今日も私の夢の中でいつも隣にいる。

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