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〜!!!
っ!!
あ!私の帽子!
待てー!!私の帽子ー!!!
ほっほっほっ
川の中の石の上を器用にピョンピョコと走る。
ふん!えい!よっ!
畑道、風に連れて行かれた麦わら帽子を、私は走って追いかけていた。

……………


ねえ君!それ!私の帽子!取って!取って!!

………これのこと…?
頭の上を通り過ぎようとする麦わら帽子を軽くキャッチする。

そう!それ!私の!
ハァハァハァー…ありがと〜、帽子取ってくれてー…

…………君…何処から来たの?
ここらへんじゃ見ない顔。

私?あー、おばあちゃんの家がこっちの方で、今日から一週間だけ泊まりに来たの。
私は帽子を受け取ると、『あなた?』と、聞き返した。
……僕はここらへんに前から住んでて、たまーにここまで遊びに来てる。

遊びに?遊びって、何してるの?
川魚釣りとか?
私は気になって聞いてみる。

日向ぼっこしかしてないかな。
君、よくここに来るの?

ううん。今日は帽子が飛ばされちゃったからたまたま来ただけ

……君…友達いないの?

は?
別に友達いないわけないし
ここらへんにはいないだけで…
口をとがらせ、私はモゴモゴと言い訳をした。

…それ、友達いるって、言えるの?
嘲笑したように私を見て鼻で笑う。

な!
いるはいるんだから合ってるの!
初めて会ったやつになんでそんなに言われなきゃなんないわけ?

……僕も友達が少ないんだ…君、友達にならない…?

はあ?
……友達になりたいならなりたいって最初からいいなさいよ…

向こうが手を出すから私も手を出し、握手をした。

わ!もう夕方じゃん!
私帰る!!あなたも早く帰りなよー!

お友達になったんだから、また来てよ。明日も…。
私の背中に、そう声を優しくかけてきた。

私はなんだか気になっちゃって、それから帰る日まで、毎日あの子の所へ遊びに行った。
綺麗な石を集めたり、日向ぼっこをしたり、やること全部、なんだか古くさいけど。
楽しかった。
家に帰る日も、あの子の所に行った。
今日は海に行きたいって、急にあの子が言うから、海まで行った。
おばあちゃんの住む所は、浜辺が近いから、ここからも対して遠くはなかった。

…………
帰る日が来た私と、それを見送るあの子。

…………ねぇ…海の魚採りしようよ。
私の隣で寂しそうな顔でそう言うもんだから……しかたないなって、一緒に海に入った。
海の中は透き通ってて、綺麗で、このままだと流されちゃうんじゃないかってくらい…。
私が海から顔をあげたらあの子。
急に私の手を掴んで、一緒に少し深い所に潜ったの。
あの子私の目を見て、『とても楽しかった。この思い出を忘れないで。また会えたら、その時はまた海に来よう。』
そんなこと言って、泡に包まれた。
どういうこと?って、海から顔を出したら、もうあの子は何処にもいなくて、びっくりした。
後でおばあちゃんに聞いたけど、あの子のことは結局わからなくて、その時からあの子は、私の前に姿を現さなくなってしまった。

…………なんだか…ずっと夢を見てた気分だな…。

私はあれからあの子のことを思い出すことがある。
展開はいつも同じで、最後に見たあの顔が頭から離れない。
なんだか……『寂しいから帰らないで。もっとずっと一緒にいたかった。』そう言われてる気がして…。
忘れられない夏の思い出になった。

おとなになっても私はあの子のことが忘れられなくて、あの日から何度も同じ場所へ行く。

あの子があの日から何も変わらない姿で、私を出迎えてくれる気がして……なんだか居ても立っても居られない。
そんな気がするから……。


        夢が覚める前に

3/20/2026, 5:31:31 PM