「嘘つき」 照守皐月
秘め事は一つでいいの
多くあると、潰れちゃうわ
それが持つ質量は、
この世の何よりも重いの
逆に少ないと、
薄くて軽いつまらない人間。
だから、一つだけ
誰にも言わない秘密でも、
吐き捨てた嘘でもいい
何か秘め事を持ちなさい
嘘つきは泥棒の始まりと言うけども
泥棒以外も嘘をつくわ
わたくしだって、嘘つきだもの。
ふと思い立って、旅に出ることにした。
*
自家用車に乗って陸路を進む。目的とか何もなく、ただひたすらに進む。トンネルを抜け、インターチェンジを超えて、高速道路に入り込んだ。安全運転を心がけながら車を走らせる。
独り身なのでフットワークが軽い。仕事はしているが今日は休日だ。少しくらい遊びに出かけたっていいはずだろう。こんな歳になって独身というのは寂しいが、まあ仕方がない。ここまで来たら独身を貫いてやる。
*
どこか遠くの町へ行こう。自分が行ったことのないような知らない世界を見たいと思ったから。アクセルペダルを踏んづけて加速する。窓の外の景色が流れていく。舗装の壁、雲ひとつない青空、森に生える緑の木々。どんどんと流れていって、もう戻らない。後退も逆走もしない。俺は前にだけ進んでいく。
走り続けて数時間。道の駅らしき建物を見つけた。付属の駐車場と思しきスペースにはいくつかの車が泊まっている。それに倣って、俺もそこに駐車した。下車して建物に向かっていく。道の駅のスタッフと会話して、購買でバニラ味のソフトクリームを買った。
*
「ここは星が綺麗に見えるんですよ」
スタッフの言葉を思い出して、空を見上げる。暗黒とも言えるような空の中、ぽつぽつと小さな光が見える。星だ。無数の星が俺を見下ろしている。ここから何光年も離れた空間で俺を見つめている。ソフトクリームを一口食べて、夜空に向かってウィンクした。星々が瞬くなんてことはなかったけど、気持ちを伝えたかった。
何光年もの空間を超えて、思いを伝える。
返ってくる頃には俺は死んでるだろう。それでも、ただ独り寂しく佇む墓を見て、微笑みをくれたなら嬉しいと思う。
風を追う
あなたに縋る
手が離れる
呼吸が震える
立ち尽くす
心許ない
衝撃が襲う
指が悴んだ
真冬の冷たさ
曇りゆく空
滲む視界
過ぎ行く列車
手を振るあなた
座り込むわたし
もう会えない
後悔と葛藤と苦痛と
大粒の涙
風が吹く
風を便る
風に縋る
風を追う。
「風を追う」
作・照守皐月
幸せとは自分の境遇に納得できることだと思う。
人間とは貪欲な生き物で、それこそ満たされていても更なる充足を求めて貪欲に動き続ける人間だ。肥大化した底無しの欲求は誰にも止められない。知能が増し、欲望も増した。
幸せがほしい。幸せになりたい。
今の境遇を知り、納得すればおのずと満たされるはずなのに。人間はそれを選ばない。自分の置かれている状況は理解できても、その瞬間が持つ幸せを理解するだけの能を持ち合わせていない。貪欲に動き続ける。
そうしていくつもの争いが起きたし、いくつもの技術が生まれたし、いくつもの人が搾取されていった。
一概に幸せを「悪」とは言えない。
それでも──
──もう少し謙虚に生きるべきではないかと思う。
己の幸せを理解して、慎ましく生きるべきだ。
「幸せ問答」
作・照守皐月
今年は最低でも一作品は書きたいと思っている。
もう達成した目標だし、これ以外にやりたいことと言えばボカコレに出るとかそういった「書く」こと以外の趣味しかないけれども。せめて毎年、一作以上は書きたいなって思ってる。
創作とは自己表現の手段であり、目的には決してならない。自分の表現したいことを見つけることが重要だとよく言われている。わたしもそうだと思う。でも、わたしはここがあまり上手くできない。
なんというか、ずっと漠然としているのだ。「この作品で表現したいことは?」と言われて上手く返せないように、そういったことを考えることがない。
面白い作品を書きたい。が原動力ではだめなのか?
「短い自語り」
作・照守皐月/terukami