照守皐月

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1/7/2025, 10:36:30 AM

風を追う
あなたに縋る
手が離れる
呼吸が震える
立ち尽くす
心許ない
衝撃が襲う
指が悴んだ
真冬の冷たさ
曇りゆく空
滲む視界
過ぎ行く列車
手を振るあなた
座り込むわたし
もう会えない
後悔と葛藤と苦痛と
大粒の涙
風が吹く
風を便る
風に縋る

風を追う。


「風を追う」
作・照守皐月

1/4/2025, 1:44:51 PM

幸せとは自分の境遇に納得できることだと思う。

人間とは貪欲な生き物で、それこそ満たされていても更なる充足を求めて貪欲に動き続ける人間だ。肥大化した底無しの欲求は誰にも止められない。知能が増し、欲望も増した。

幸せがほしい。幸せになりたい。

今の境遇を知り、納得すればおのずと満たされるはずなのに。人間はそれを選ばない。自分の置かれている状況は理解できても、その瞬間が持つ幸せを理解するだけの能を持ち合わせていない。貪欲に動き続ける。

そうしていくつもの争いが起きたし、いくつもの技術が生まれたし、いくつもの人が搾取されていった。

一概に幸せを「悪」とは言えない。

それでも──

──もう少し謙虚に生きるべきではないかと思う。

己の幸せを理解して、慎ましく生きるべきだ。


「幸せ問答」
作・照守皐月

1/3/2025, 2:33:26 AM

今年は最低でも一作品は書きたいと思っている。

もう達成した目標だし、これ以外にやりたいことと言えばボカコレに出るとかそういった「書く」こと以外の趣味しかないけれども。せめて毎年、一作以上は書きたいなって思ってる。

創作とは自己表現の手段であり、目的には決してならない。自分の表現したいことを見つけることが重要だとよく言われている。わたしもそうだと思う。でも、わたしはここがあまり上手くできない。

なんというか、ずっと漠然としているのだ。「この作品で表現したいことは?」と言われて上手く返せないように、そういったことを考えることがない。

面白い作品を書きたい。が原動力ではだめなのか?


「短い自語り」
作・照守皐月/terukami

1/2/2025, 7:07:47 AM

新しいことをいっぱいしようと思う。

新年というのは年の始まりで、それこそ新しいことにチャレンジするにはとっておきのタイミングだ。わたしは今まで「どうせできないし」で色んなことを先延ばししてきていた。でも、そういった生活をやめ、新たに活気的な活動を始めるのも悪くないかもしれない。

まず、ペンをとり、画用紙に向かった。昔からイラストを描いてみようと思っていたのだ。でも「どうせ上手く描けないから」という理由でやめていた。でも新年だから挑戦してみてもいいだろう。

適当に線を引き、人型を形作る。歪な線だった。ガタガタと震えているし、ところどころ歪んでいる。これじゃあ駄目だということでペンを置き、紙をぐじゃぐじゃに丸めてゴミ箱へと投げ捨てた。やはり絵描きは向いていなかったようだ。まあ、そのことを知れただけ良しとしようか。

次はランニングをしてみることにした。運動というものは苦手だったが、ランニングならなんとかなるだろうと思った。早速屋内施設──市民体育館──に向かい、適当に走り始めた。

最初は順調だった。程よい疲れと足の痛みが「わたしは今走っている」という感覚を与えてくれた。

──しかし、それは突然起こった。

足首から大きな音がして、とてつもない痛みが襲う。なんだなんだと思って這いずりながら病院へ行くとアキレス腱が切れていた。急に運動したことが原因らしい。

はあ、とため息をつき、処置室の椅子に座る。

「また来年、か……」

看護師さんの処置を受けていた。


「新年」
作・照守皐月/teruteru_5

1/1/2025, 9:19:31 AM

108の煩悩ではなく、108の後悔がある。

あなたに思いを伝えらなかったこと、そのままあなたが死んでしまったこと、死にゆくことは分かっていたのに止めようとすらしなかったこと。

あなたと出会ったのは四月の頭で、部署異動に伴ったものであった。たまたま同じ部署になっただけの間柄ということにしたい。でも、運命的な何かというべきなのだろうか。わたしはあなたに惹かれていた。

わたしには大まかな人の死期が分かる。あなたの死期を知ってなお、わたしはあなたに絡み続けた。それが自らの首を絞めるとも知らずに。年の瀬、あなたは自ら首を吊って死ぬ。それが、確定された運命。

せめて死ぬまで幸せでいてほしい、というのはわたしのエゴだったのだろうか。

今となっては分からない。全ては終わったあとで、それが再起することはなく、ともすれば思い出そうとすらしないのかもしれない。個人的には思い出さないのだろうと思う。死の間際のあなたの顔と思いを浮かべるたびに苦しくなるから。中途半端に期待を抱かせるべきじゃなかった。年度末に「また来年!」と笑うあなたはどんな気持ちだったのか、わたしには到底分からない。

春の花見、夏の心霊スポット巡り、秋の紅葉狩り、冬のあなたの死に顔。全部鮮明に覚えてる。思い出したくなくても思い出されるそれにわたしは苦しむ。

もう、苦しみたくないから。

薬剤の過剰摂取──つまるところのオーバードーズ──による中毒死。手軽にできる自殺のひとつ。もう実行してしまっていて、頭がぐわんぐわんと揺れる。脳が掻き混ぜられる感覚。歩んできたこれまでと、歩むはずだったこれからがシャッフルされる。

「また来年!」

あなたの声が聞こえた気がした。恐らくは幻聴。あるいはあなたを諦めきれないわたしが生み出した錯覚。

年の瀬に、わたしとあなたは死ぬ。互いに後悔と絶望などの負の感情を抱きながら消える。

刹那、除夜の鐘が鳴った。

人生最期の音は皮肉にも、後悔や欲望を浄化する聖なる音で、エゴを押し通したわたしにとっては不適切すぎるものだった。

「108」
作・照守皐月/teruteru_5

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