照守皐月

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ふと思い立って、旅に出ることにした。



自家用車に乗って陸路を進む。目的とか何もなく、ただひたすらに進む。トンネルを抜け、インターチェンジを超えて、高速道路に入り込んだ。安全運転を心がけながら車を走らせる。

独り身なのでフットワークが軽い。仕事はしているが今日は休日だ。少しくらい遊びに出かけたっていいはずだろう。こんな歳になって独身というのは寂しいが、まあ仕方がない。ここまで来たら独身を貫いてやる。



どこか遠くの町へ行こう。自分が行ったことのないような知らない世界を見たいと思ったから。アクセルペダルを踏んづけて加速する。窓の外の景色が流れていく。舗装の壁、雲ひとつない青空、森に生える緑の木々。どんどんと流れていって、もう戻らない。後退も逆走もしない。俺は前にだけ進んでいく。

走り続けて数時間。道の駅らしき建物を見つけた。付属の駐車場と思しきスペースにはいくつかの車が泊まっている。それに倣って、俺もそこに駐車した。下車して建物に向かっていく。道の駅のスタッフと会話して、購買でバニラ味のソフトクリームを買った。



「ここは星が綺麗に見えるんですよ」

スタッフの言葉を思い出して、空を見上げる。暗黒とも言えるような空の中、ぽつぽつと小さな光が見える。星だ。無数の星が俺を見下ろしている。ここから何光年も離れた空間で俺を見つめている。ソフトクリームを一口食べて、夜空に向かってウィンクした。星々が瞬くなんてことはなかったけど、気持ちを伝えたかった。

何光年もの空間を超えて、思いを伝える。

返ってくる頃には俺は死んでるだろう。それでも、ただ独り寂しく佇む墓を見て、微笑みをくれたなら嬉しいと思う。

3/19/2025, 5:22:48 PM