僕は死んだら、アダムとイブのような楽園に行けると思っていた。
そう、幼い頃は。
今の僕は何を考えても目の色が変わらない。
早く死んでしまいたい。
そして、魂は消えてしまいたい。
そんなことしか考えていない。
死んでまで、楽園で魂が生き続けるなんてごめんだ。
幼い頃の僕は、夢と希望に溢れていたから、楽園だとか、天国だとか、そういった事にも夢を抱いていただけなんだ。
今の僕は、希望は潰え、夢も失い、どん底にいる。
うつ病だとか、そんなんじゃない。
周りはみんな、僕を精神科に連れていこうとするけれど。
うつ病の人は、もっと大変なはずなんだ。
だから、僕はその人たちと同じ立場になってはいけない。
でも、僕が存在している意味なんかない。
楽園なんか絵空事。
このまま綺麗さっぱり消えてしまいたい。
君が引っ越してから1ヶ月が経った。
僕はまだ君がいない生活に慣れないよ。
君が引っ越してからも、僕の生活リズムは変わらなかった。
君と同じ時間に登校できるように、いつもと同じ時間に準備をする。
君と音楽室で昼ごはんを食べるために、昼休みになったら弁当を持って音楽室に行く。
放課後は、図書委員の君に会いに、図書室へ。
そのまま、最終下校時間まで図書館で勉強をして、君と一緒に帰る。
全部、隣には君がいたのに。
同じリズムで生活しても、もう隣に君はいない。
君が隣にいないことには、全然慣れない。
僕の心の中は、ぽっかりと大きな穴が空いてしまった。
君がいた時と同じ行動をしているのは、その穴を誤魔化すため。
願っても許されるのならば、君に会いたいと願いたい。
僕の想いよ、風に乗って君に届け。
貴女のために剣を振るった。
そんな貴女はもういない。
私と貴女が交われたのは、ほんの一瞬。
貴女は僕にこう言ってくれた。
「私を一生守ってね」
でも。
彼女の最期は突然訪れた。
彼女はこの国の王。
王がいないと、国は廃れていく。
だから、民たちにとって、彼女はかけがえのないもののはずだった。
だが、政治の全ての問題は王である彼女に押し付けられていたために、彼女を批判するものは少なからず存在していた。
そんな批判的な民が、彼女を殺し、次の王になろうと目論んでいた。
だから、私は彼女を守らなければならなかったのに。
私は彼女を守りきることは出来なかった。
最期の瞬間はこの目にしっかりと焼き付いている。
彼女が最期に私に言った言葉。
「ありがとう」
貴女は私の命の中で、一瞬の時しか生きていない。
私にとって貴女が全てだった。
あの日、「ありがとう」と言われても、私は私を責め続けた。
当たり前だ、私のせいで貴女は死んだ。
私がもっと強ければ貴女は死なずに済んだのに。
私がもう一度、貴女を守ることが許されるのならば、
私は貴女にこう言う。
「命をかけて守ってみせます。」
生きる意味なんかないよ。
本当はもう死んでいる予定だったんだ。
僕は小学生の頃から、18までしか生きていない予定だったのに。
なんで生きてるんだろう。
毎日考えるけど、答えは一向に見つからない。
これから先も答えが見つかることは無いだろう。
あぁ、早く死にたい。
「これは良いことかなぁー?」
俺は問う。
「……。」
───ドォン
「おい答えろよ!!」
俺の足が怒りに任せて近くにあった机を蹴る。
数時間前のこと。
俺の後輩がミスをしたと報告してきた。
どういうミスか。
それは、俺の作った資料を消してしまったのだと。
今日プレゼンがある、その資料を。
俺の昇進がかかっていた。
俺はこの3カ月、このプレゼンにかけてきた。
それは皆知っていた。
それほどに本気だった。
だから、報告を受けた時、何も考えられなかった。
唖然とした。
後輩は何度も謝った。
許せるわけもなかったが、プレゼンに少しでも間に合うように、資料を作り直した。
プレゼンは大失敗。
「君は何なんだね。」
と言われる始末。
ここで事実を言ったところで、配慮なんかしてもらえるわけもない。
心の中に押し殺した感情。
苦しかった、悔しかった、泣きそうだった。
全てが終わり、自分のデスクに戻ってきた時、ふと、会話が耳に入ってきた。
「これであいつの昇進はなくなったな。」
「良かったやん笑 これでお前、あいつより上行けるんちゃうん?」
笑い声が聞こえる。
その笑い声は、謝ってきた後輩の声によく似ている。
「でも、なんで失敗したん?めっちゃ準備して完璧やったやん。」
「そんなん簡単やん。消したんやわ、資料。一応さ、ミスってことで謝っといたし、全然疑われてないけどな。」
笑い声。
最後の声。
後輩の声だ。
あぁ、そういうことか。
くっそ、もう、笑けてくるな。
情けないなぁ。
俺は後輩の元へ向かう。
やっていい事と、悪いことがあるだろう。
そんなに俺を抜かしたいなら、実力で抜かせよ。
その時の俺は泣いていたのか、笑っていたのか、覚えていない。
「おい!!聞いてんだろ!!」
「落ち着け!!お前はよく頑張ったよ!」
必死に俺を止める声。
そんなん関係ない。
「言えよ!!やった事がいいか悪いか!」