たーくん。

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8/4/2025, 10:20:46 PM

緑色から赤色や黄色に衣替えした歩道の木々。
十一月で、景色はこんなにも秋なのに。
今日の最高気温は、35℃。
季節外れ過ぎる気温だろ……。
空を見上げると、太陽がギラギラと輝いている。
まるで「ただいま、夏」と言っているかのようだ。
いや、夏は帰ってこなくていいから。
長袖の秋服を着て外に出たのに、結局腕捲りしている。
……明日は、気温が下がるといいな。
だが、次の日も、その次の日も……しばらく暑い日が続き、夏に季節を取られ、秋はどこかへ行ってしまう。
結局、秋は帰って来ず、いきなり冬が来てしまった。

8/3/2025, 10:22:27 PM

各テーブル席で、キャッキャウフフと若者達が賑わっている喫茶店。
だが、俺達の席は真逆で、お互い何も喋らず暗い。
向かいの席には彼女が座っていて、ずっと沈黙を貫いている。
この状態は二時間ぐらい続いているだろうか。
せっかく頼んだメロンソーダの炭酸は元気がなくなり、ただのメロンジュースになってしまった。
……まぁ、全部俺が悪いんだけど。
彼女以外の女と遊んでいることがバレて、彼女は大変ご立腹されている。
彼女と目を合わせようとするが、逸らされてしまう。
うーむ……どうしたものか……。
ただ、時間だけが過ぎていく。

……あれから一時間後。
彼女は相変わらず口を開かない。
このままではさすがに気が重いので、きちんと謝っておこう。
恐る恐る口を開く。
「ごめん。俺が悪かったよ」
だが、彼女は無反応。
「他の女とはもう遊ばない。君だけを愛するから」
「……あのね」
ようやく、彼女はゆっくりと口を開いた。
「私、好きな人がいて、同棲もしてるの。だから、その……ごめんね」
「あー……そういうパターンね……」
一気に喉がカラカラになり、目の前にあるメロンソーダを飲む。
ぬるくて、薄いメロンの味しかしなかった。

8/3/2025, 1:09:03 AM

太陽の光を浴びて、熱々になった砂浜。
今日の空は雲一つなく、絶好な快晴だ。
私は、波が届くか届かないかの所にしゃがみ、指で砂浜に文字を書いていく。
これは、先月交通事故で帰らぬ人となり、先に天国へ行ってしまった彼氏への手紙。
想いを込めながら、指を動かす。
砂浜が熱くて、まるで鉄板の上を指でなぞっているみたいだ。
物を使って書くのではなく、指で書いたほうが、より想いが込もると思う。
結局、書いたのは"大好きだよ"の五文字。
シンプルで短すぎる手紙。
本当は色々書きたかったけど、書くとキリがないので、ぎゅっと想いを凝縮させた。
立ち上がり、少し離れて、空にいる彼氏に手紙を見せる。
空のどこかで、この手紙を見てくれてるといいな……。
ざぶ~ん、ざぶ~んと、波の音がする。
足に波が当たり、靴がびしょ濡れになった。
下を見ると、まるで手紙を受け取ったかのように、書いた手紙が綺麗になくなっている。
再び空を見上げ、彼氏に想いが届いていることを願いながら、雲一つない青空をしばらくの間見続けた。

8/1/2025, 10:14:46 PM

セミが鳴き始めた七月中旬。
外営業の途中、少し休憩するために近くの公園に寄る。
木の影がちょうどベンチにかかっていたので、座って涼む。
柔らかくて緩やかな風が、身体を撫でて気持ちいい。
「……連絡してみるか」
鞄からスマホを取り出し、彼女にメッセージを送ろうと文字を入力していく。
"8月、君に会いたい"
送信ボタンを、ゆっくり押した。
彼女と最後に会ったのは、去年のクリスマス。
「それじゃあね」
予約していたレストランでの食事を終え、どこにも寄らず真っ直ぐ帰っていく彼女。
まるでその姿は、義務を終えた感じだった。
それから、半年以上彼女と会っていないし、連絡もない。
こっちから連絡しても「今忙しいから」という愛想がない返事だけ。
彼女も仕事をしているから、忙しいのだろうと思っていたが、だんだんと疑問へと変わる。
多分、彼女は……。
メッセージを送ってから数分後、返信が届く。
"私、新しい彼と生活してるから無理。もう連絡してこないで"
……こんなことだろうと、思っていた。
少しでも信じていた俺は……馬鹿だ。
画面を消し、スマホを鞄へ押し込む。
近くの木でセミが鳴き始め、鳴き声が俺の心にジンジンと響いた。

7/31/2025, 10:24:37 PM

俺に向けられた、明るすぎるライト。
眩しすぎて、薄目でしか目を開けられない。
もっとあなたの顔を見たいのに。
もっとあなたの顔を目に焼きつけたいのに。
ライトが、邪魔をする。
「あのぉ……目つぶって下さいね?」
歯科衛生士のお姉さんが、俺を見下ろしながら言った。
嫌だ……。俺はお姉さんの顔をもっと見たいんだ!
俺はライトの光に負けじと、カッ!と目を開ける。
「目隠して」
「はい」
反対側に座っていた歯科衛生士の助手が、布みたいな物を俺の目の上に乗せる。
眩しいライトも、お姉さんの顔も見えなくなり、目の前が暗くなった。
くっ……負けるものか!
俺は目の上に乗せられた布を取ろうと手を動かす。
「お・と・な・し・く・し・て・く・だ・さ・い・ね?」
お姉さんはゆっくりとした怒った口調で、俺に言った。
「は、はい……」
もはやここまでか……。
大人しく、お姉さんの指示に従おう。
今日の歯石取りは、いつもより少し痛く感じた。

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