たーくん。

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7/14/2025, 10:33:14 PM

外から聞こえてくるセミの合唱。
季節はもうすっかり夏だ。
……夏って、どのタイミングで呼ぶべきだろうか?
暑くなったら夏?
梅雨が明けたら夏?
七月になったら夏?
セミが鳴き始めたら夏?
海開きになったら夏?
どれが正しいのだろう?
そうだ、SNSのアンケート機能で皆に聞いてみるか。
「うーむ……」
結果、どれかが飛び抜けて多い訳ではなく、ほぼ同じぐらいだった。
夏の基準を決めるのは難しいな……。
まぁ、人それぞれという訳で……いっか。
俺は冷蔵庫に冷やしていた缶ビールのプルタブを開け、喉を潤した。

7/13/2025, 11:20:20 PM

窓から涼しい風が入ってくる我が家。
今日は俺の十五歳の誕生日だ。
親父は真剣な表情で、俺に語り始めた。
「実はな。お前は俺達の子供じゃない。魔王の子なんだ。偶然、魔王の城でお前を拾ってな……。お前が十五歳になった時に言おうと、母さんと決めていたんだ」
「だからか……俺の顔は紫色だし、角が生えてるし、魔法が使えるから、なんか皆とは違うなって思ってたんだよ。全く気づかなかったぜ」
「いや、そこまで気づいてるなら分かるでしょ!?母さんは、ずーーーっと言いたくて仕方なかったんだからね!?」
俺と親父の会話を傍で聞いていた母さんが、会話の間に入ってきた。
「何はともあれ、お前は魔王の子だろうと俺達の子供だ。これからもそれは変わらない。改めてよろしくな」
「そうよ。周りから何を言われても、私達はあなたの味方だから」
「親父……母さん……ありがとう」
だが、俺は心の奥で、世界を滅ぼしたくてウズウズしていた。

7/12/2025, 11:01:45 PM

空から入ってくる緩やかな風。
同時に、りーん、りーんと鳴らす風鈴の音。
だが、セミの合唱に風鈴の音が負けている。
ならばと思い、こちらも数で勝負しようと風鈴の数を増やす。
りーん、りーん。
りーん、りーん。
りーん、りーん。
増やした結果、セミの合唱に勝利することが出来たが、今度は風鈴の音がうるさくなってしまった。
結局、風鈴を一つだけ残し、全て外す。
りーん、りーん。
風鈴は多いより、一つの音で堪能するほうがいい。

7/11/2025, 10:56:22 PM

扉を開けた先に広がる、美しい花畑。
私の心の中にある場所だ。
心だけ逃避行したい時は、ここへ来ている。
今日は仕事でミスをして、課長に呼ばれ、注意されて怒られている最中に花畑へ逃げ込んだ。
今は夏だからか、花畑にはひまわりが沢山咲いている。
私は麦わら帽子を被り、ひまわり畑に向かって走っていると、空から声が聞こえてきた。
「鈴木、聞いてるのか?黙ってないで何か言ったらどうだ?」
鬱陶しい課長の声だ。
私は現在逃避行中だから、無視無視。
ひまわりは私の背より高くて、私の弱い心に負けないぐらい力強く咲いていて……。
「そういう態度をとるなら、こちらも色々と考えないといけないな」
外の世界では、なにか大変なことが起きようとしている。
麦わら帽子を投げ捨て、急いで外の世界へ戻った。
「すいません課長!次から気をつけます!」
戻ると同時に頭を下げて、課長に謝る。
「君はたまにふわふわしている時がある。人前でそういう態度をしないよう、気をつけなさい」
「はい、分かりました」
「分かればいいんだ」
なんとか、大事にならずに済んだ。
さて、席に戻ったら逃避行の続きをしよう。
課長の席から離れ、自分の席へ向かった。
「鈴木!別件でもミスしたのか!戻ってきなさい!」
一度あることは二度ある。
いや、これで何度目だろうか。
「はい……」
私は回れ右をし、再び課長の席へ向かう。
課長の顔と声を見るのも聞くのも嫌だから、逃避行してきまーす。

7/10/2025, 10:19:34 PM

昼休みになると同時に、腹ペコ生徒が集まる学校の食堂。
今日はいつもの日替わり定食にしようと思ったが、たまには冒険するのもいいだろう。
パン売り場へ行き、“今日のパン“は何を覗く。
今日のパンとは、余った食材とパンを組み合わせて作られた、食堂のおばちゃん手作りのパンだ。
だが、噂ではめちゃくちゃ不味いらしい。
まぁ、冒険するにはもってこいのパンだろう。
今日のパンは、見た目は揚げパンで少し大きい。
俺は一つ購入し、空いてる席に座り、早速袋を開けて一口食べる。
「う“っ“!」
思わず変な声が出てしまう。
噛んだ瞬間、じゅわっと何かが溢れ、一瞬で口の中が洪水になる。
なんだ……これは……。
「聞いたか?今日のパン。揚げナスパンだってよ」
「聞いた聞いた。パンに揚げナスを包んで、更に揚げたパンだってな。油まみれで食べれたもんじゃないよな」
「揚げただけに、上げ上げ~なんてな」
背後で男子生徒達が笑いながら通過した。
……どうりで、口の中が洪水な訳だ。
吐き出したいところだが、食堂のおばちゃんに失礼なので吐き出せない。
「くっ……うっ!」
気合いで、なんとか飲み込む。
手には、まだ揚げナスパンが残っている。
……いけるのか、俺。
深呼吸をしてから、一気に揚げナスパンを食べていく。
なんとか完食し、俺の冒険は終わった。
この後、授業中に胃もたれしたのは、言うまでもない。

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