誰もがみんな。
僕は児童養護施設の職員として勤務している。
入所して初めて担当した尚弥が18歳になった。明日いよいよ退所する。
「尚弥君、工場に就職が決まったんだね。おめでとう!」
僕は祝福した。
「ありがとう!嬉しいんだけど…。正直、不安なんだ…」
尚弥は心境を吐露した。
「どういったところが?」
「普通の人なら失敗しても親に守ってもらえるけど、僕には後ろ楯がない。社会に出たら部屋も借りて自分で生活しなければならないし…」
「誰もがみんな不安なんだよ。大丈夫!人生なんとかなるよ。困った事があれば遠慮なく、電話して来なさい。相談に乗るから」
「本当!!もしもの時はお金を貸してもらえるかな?」
「いいよ!でも借用書にサインしてもらうよ」
「う−ん、それはやめとこうかな…。怖いな…」
「とにかく真面目に頑張れば人生なんとかなるよ。自分を信じろ!」
「分かったよ!とにかく頑張るよ。ありがとう」
こうして一人の若者が巣立った。
花束
「星野さん、退職するんだって!しかも寿退社!」
僕はその一報を聞いた瞬間、頭が真っ白になった。
彼女と僕は同じ会社の同期だ。
星野さんの優しい笑顔に、気がつけば心が奪われていた。
彼女の心を射止めようと色々と努力したが、彼氏の存在に愕然とした。
二人の破局を待っていた矢先の出来事だ。
残念だが、これはもう運命を受け入れるしかない。
僕は星野さんの出社最後の日、その帰り道を密かに待っていた。
「星野さん、お疲れ様」
僕は挨拶した。
「あら、風雪君じゃない!お疲れ様。今日で退職するの」
星野さんは笑顔で言った。
「結婚するんだってね。聞いたよ。おめでとう!いつまでもお幸せに…。これプレゼント!」
僕は隠していた花束を差し出した。
「わぁ!ありがとう!うん、幸せになるわ!」
星野さんは笑顔で受け取った。
僕は結婚式には呼ばれてない。
だから、これでお別れ。
星野さんの彼氏の顔も名前も知る事はない。
今日でひと区切りがついた。
お互いに明日から新しい道を踏み出す。
スマイル。
スマイルは、人間に与えられた特権である。
人は笑顔になる事で幸福感を得る。
人間生きていれば、誰でも心身共にきつい時がある。
客商売をしている以上、笑顔を心掛けなければならない。
誰かは特定出来ないが、口コミでお客様に『スタッフに笑顔がない』と指摘があった。
それ以来、意識的に口角を上げるようにしている。
すると不思議な事に楽しい気分になってくる。
逆境の時はそうやって乗り越えている。
脳は賢くないので作り笑いで楽しいと錯覚する。
よく歌詞で『辛いから笑うんだ』とあるが真理である。
人間は今までに言われた言葉で形成されている。
もしも、読者や関係者の方で自分自身に『馬鹿だ!』『醜い!』等の悪口は絶対に言わない方がいい。
その言葉により脳が私は馬鹿だと認識して能力が低下するのだ。
なので私自身は『俺は賢い』『できる』『なんとかなる』などポジティブな事を言い聞かせてます。
たった一度の人生。
明るく、楽しく、前向きに、笑顔で過ごしましょう。
どこにも書けないこと。
今まで私の作品を読んで下さった方は分かると思いますが、どこにも書けない事はすでに書いてます。
気になる方は過去作をお読みください。
私の方針として、与えられたテ−マに対して自分が書きたいと思う事、読者の方が面白いと思う事をモット−に執筆してます。
なので、実体験の回もあれば、完全創作の回もあります。
今後もテ−マに対してベストな選択をします。
今回はこのような内容しか思いつきませんでした。
期待を裏切って申し訳ないです。
次回から頑張ります。
時計の針。
中学校の校庭を、二人の男子生徒が歩いている。
「明日の練習試合で、勝った方が美佳と付き合ういいな!」
僕は言った。
「分かった、よし、いいだろう。後で後悔するなよ!」
春馬は約束した。
武道館で剣道部の練習が行われている。
武士と春馬は防具を身につけ、竹刀を持っている。
互いに構えた。
美佳を始め、部員は固唾を飲んで練習試合を見守っている。
「始め!」
顧問の先生が試合を告げた。
中学生剣道のルール試合時間は3分。
面、小手、胴のいずれかに有効打を当てて二本先取した方が勝ちである。
「小手、面、胴」
「胴、面、小手」
息を飲む攻防、早すぎて見えないが互いに有効打はない。
「面!」
武士は上段に打った。
春馬はとっさに竹刀を上げる。
「小手!」
武士の竹刀が春馬の手首に当たった。
「小手一本!」
顧問の先生は判定した。
「おお−!!」
試合を観戦している生徒から歓声が上がる。
面に見せかけて小手狙いだったのか…。
アイツこんな技を隠してやがったのか。
練習では一度も見せてないのに…。
やられた!
春馬は動揺している。
フフフ、名付けて『燕返し』だ!
春馬に勝つ為に練習していたのさ。
武士は笑みを浮かべた。
「二本目、始め!」
春馬の怒涛の攻撃が始まった。
武士は防戦一方だ。
なんという凄まじい攻撃だ。
気を抜いたらやられる!
もう試合終了じゃないのか!?
時計の針は動いているのか?
おのれ!燕返しだ!
武士は返し技で燕返しを打った。
だが、春馬はしっかりと防御した。
なに!たった一度見ただけでもう通用しないのか!
間違いなく天才だな!!
だが、あと少し粘れば終わりだ、僕の勝ちだ!
逃げ切るぞ!
その時。
「胴!」
春馬の竹刀が武士の胴に当たった。
その瞬間、ストップウォッチは試合終了を示した。
「胴一本!時間切れ引き分け!」
ウオ−!!
武道館は興奮に包まれた。
二人の決着はつかなかった。