風雪 武士

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時計の針。

中学校の校庭を、二人の男子生徒が歩いている。
「明日の練習試合で、勝った方が美佳と付き合ういいな!」
僕は言った。
「分かった、よし、いいだろう。後で後悔するなよ!」
春馬は約束した。
武道館で剣道部の練習が行われている。
武士と春馬は防具を身につけ、竹刀を持っている。
互いに構えた。
美佳を始め、部員は固唾を飲んで練習試合を見守っている。
「始め!」
顧問の先生が試合を告げた。
中学生剣道のルール試合時間は3分。
面、小手、胴のいずれかに有効打を当てて二本先取した方が勝ちである。
「小手、面、胴」
「胴、面、小手」
息を飲む攻防、早すぎて見えないが互いに有効打はない。
「面!」
武士は上段に打った。
春馬はとっさに竹刀を上げる。
「小手!」
武士の竹刀が春馬の手首に当たった。
「小手一本!」
顧問の先生は判定した。
「おお−!!」
試合を観戦している生徒から歓声が上がる。
面に見せかけて小手狙いだったのか…。
アイツこんな技を隠してやがったのか。
練習では一度も見せてないのに…。
やられた!
春馬は動揺している。
フフフ、名付けて『燕返し』だ!
春馬に勝つ為に練習していたのさ。
武士は笑みを浮かべた。
「二本目、始め!」
春馬の怒涛の攻撃が始まった。
武士は防戦一方だ。
なんという凄まじい攻撃だ。
気を抜いたらやられる!
もう試合終了じゃないのか!?
時計の針は動いているのか?
おのれ!燕返しだ!
武士は返し技で燕返しを打った。
だが、春馬はしっかりと防御した。
なに!たった一度見ただけでもう通用しないのか!
間違いなく天才だな!!
だが、あと少し粘れば終わりだ、僕の勝ちだ!
逃げ切るぞ!
その時。
「胴!」
春馬の竹刀が武士の胴に当たった。
その瞬間、ストップウォッチは試合終了を示した。
「胴一本!時間切れ引き分け!」
ウオ−!!
武道館は興奮に包まれた。
二人の決着はつかなかった。







2/7/2026, 8:08:46 AM