勿忘草。
「残念ながら由紀子さんの膵臓がんはステージ4です。もう手のほどこしようはありません」
医師は残酷な現実を告げた。
「そんな……。由紀子はあとどれくらい生きられるのですか?」
僕は藁にもすがる思いで聞いた。
「あと1ヶ月ぐらいでしょうか……。奥様と素敵な思い出を作って下さい」
覚悟はしていたが想像以上にショックを受けた。
僕は面談室を後にし、車の中で隠れて泣いた。
1時間後、由紀子のいる病室に入室した。
「あら、今日はいつもよりも遅いわね」
由紀子は笑顔で聞いた。
「ああ、交通事故があって渋滞だったんだよ」
僕はとっさに嘘をついた。
「ふ〜ん、そうだ!武士さんに渡したいものがあるの」
由紀子はベッドの下に隠していた花鉢を取り出した。
花鉢には青き花が八輪咲いている。
「初めて見る花だな。なんて言うの?」
「勿忘草って言うのよ。花言葉は『私を忘れないで』」
「ええ、何言ってんの!?意味が分からないよ!」
「とぼけても無駄よ!自分の体の事は自分が一番分かってる。私はもう長くない……。だから、この花を受け取って欲しいの」
「嫌だ!絶対に嫌だ!」
「どうして?勿忘草を私だと思って飾ってほしいのよ!」
「そんな事をしたら由紀子さんがもう死ぬって認める事になる!」
「もう治る見込みはないのよ…」
「諦めるな!奇跡を起こそう!膵臓がんなんか気持ちで治そうよ!」
「分かったわ!貴方はおかしな人ね…」
二人は病気と戦い続ける事を誓った。
ブランコ。
今日は休日なので、僕は息子の海人を連れて近くの公園に足を延ばした。
海人は3歳の誕生日を迎えたばかり。
「お父さん、あれがいい!」
「ブランコ!」海人は指差して言った。
我が子には「パパ」ではなくお父さんと呼ばせるようにしつけしている。
ブランコに座り、膝に海人を乗せたまま、ゆっくりと地面を蹴った。
「キャッキャッキャッ!」
海人は目を輝かせて喜んだ。
いつの間にか、僕もつられて笑顔になった。
この子を幸せにしなければ…。
その為には仕事を頑張って稼がないと…。
決意を新たにした。
ところで、海人は頭がいいのだろうか?
僕に似てたらまずいな…。
そうだ!数学の勉強になるゲ−ムアプリをやらせるか。
それなら数学を楽しく学べる。
それと英語のYouTubeを毎日聞かせるか!
これで英語の下地ができるな。
帰ったら早速実践だ!
あとは、小学生になったら学校でイジメられないようにボクシングを習わせるか。
井上尚弥選手のような、偉大な世界チャンピオンにはなれないけど強い男には成れる!
それで十分だ。
繋いだ手の温もりを感じながら家へと帰った。
社会に出て仕事が出来るようになっても失礼な奴は沢山いる。
読者の皆さんは強い人になって下さい。
ちなみに、僕の父は兼業農家なのでこういう思い出は一切ない。
旅路の果て。
僕の旅物語は、明石海峡の潮騒が響く兵庫県淡路島から始まる。
この島で生まれ育った。
山と海に囲まれた大自然の中にいるが、僕はインドア派なので興味なかった。
ちなみに淡路島はスターの産地、テレビ等で一度は目にした有名人がいます。
俳優の渡哲也さん、作詞家の阿久悠さん、女優の大地真央さん、朝比奈彩さん、お笑い芸人の上沼恵美子さん、ドラゴンクエストの堀井雄二さん、阪神の近本光司さん、村上頌樹さん等々錚々たるメンバーだ。
みんな嫌がって飛び出した田舎なのに、3年ぐらいすると静かに戻ってくる人が多い。
僕は都会暮らしが楽しいので彼らが不思議だ。
兵庫県のとある街に私は住んでいたが、若いうちに県外で経験を積むのもいいかなと思い、静岡県という新たな舞台で力を試す事になった。
その後、青森に転勤を経て宮崎県に異動移り現在にに至る。
本当は大阪府に住みたかった。
だが、当時の僕に実力はなかった。
静岡県に行った時は数年で兵庫県に帰郷するつもりだったのに、結果として故郷は遠ざかるばかりだ。
宮崎で恋人を得たなら、眩しい太陽を友として暮らすんだけどね…。
旅路の果ては神戸と決めている。
その時は、一軒家を借り地域猫の面倒をみるつもりです。
ああ、人生は上手く行かない。
あなたに届けたい。
ピンポ−ンと僕は家のインターホ−ンを押した。
十年ぶりに実家に戻った。
「はい」
母親が玄関を引き開けた。
「母さん、久し振りだね」
僕はそう言って頬を緩めた。
「おお、武士!ホンマ久し振りやな…」
母親は笑顔を浮かべた。
驚かせたい一心で、内緒にしていた。
「実は母さんに紹介したい人がいるんだ、おいで」
僕は、物陰に隠れていた女性を手招きして呼び寄せた。
「こちらは智恵さん、僕の恋人です」
「初めまして、智恵です。よろしくお願いします」
智恵は膝の上で指先を揃え、静かに上体を反らした。
「あら、こちらこそよろしくお願いします」
母親も彼女に倣ってお辞儀をした。
「とりあえず、中に入ろう」
三人はテ−ブルを挟んで椅子に腰を下ろした。
テ−ブルにはコ−ヒ−の香りが満ち、クッキーが丁寧にしつらえてあった。
「来年、イタリアで結婚式するから母さんも来てよ」
僕は言った。
「海外旅行は初めてだし、不安やな…」
母親は渋った。
「母さん、私がサポートするんで安心して下さい」
智恵は説得した。
母親は小さく頷き、「喜んで出席させてもらうわ」
と微笑んだ。
三人の弾んだ声が、静かな家を明るく塗り替えていった。
実現させたいが、出会いがないし、稼いでないから正直難しいです。
なので、母親には高級肉をアマゾンで注文して郵送しました。
うーん、現実は厳しい…。
I LOVE…。
202X年。
僕は自衛隊の特殊部隊「ニンジャ」の一員である。
拉致された日本人を救出する為、北朝鮮に潜入する。
危険な任務だ。
生きて帰るかどうか分からない…。
だが、誰がやらなければ解決しないのだ。
僕は恋人に電話した。
「ハロー、武士、グッドイブニング!」
ナターシャは電話に出た。
「グッドイブニング!実は今から北朝鮮に拉致被害者救出の為に潜入するんだ」
武士は言った。
「ええ!本当に?」
「ああ、もちろん、こんな事で嘘つかないよ。それでナターシャに伝えたい事がある」
「何?」
「I LOVE… 」
「私もよ、I LOVE…」
「今まで言えなかったけど、最後になるかもしれないから…」
「何バカな事を言ってるのよ!貴方は無事に任務を終えて私を幸せにする義務があるのよ!絶対に死なないで!生きて帰ってくるのよ!!」
「分かった!約束するよ!僕の帰りを待っててくれ!!」
僕は電話を切って潜水艦に乗り込んだ。
必ず生きて帰ると心に誓って…。
3ヶ月後、死闘の末、隊員に犠牲は出たが拉致被害者全員救出に成功した。
僕は重傷を負ったが、日本の土を踏むことが出来た。
「好き」などは言った事はあるが、I LOVEはない。
今の人はそう言ってるのでしょうか?
逆に知りたくなりました。
余談だが、福山雅治主演の大河ドラマ「龍馬伝」の最終回をたまたま見た時に、龍馬役の福山雅治が恋人のお龍に「I LOVE YOU」と手紙に書いて、意味も説明していた。
こんな事有り得ないし、伝わらない!
今でこそアメリカは世界の中心であり、憧れの存在だが、江戸時代は外国人を忌み嫌っていたのだ。
NHKの大河ドラマは歴史考証もおかしい、つまらないので一切見ない。
読者の皆様や関係者の方々で「I LOVE」と言う相手がいらっしゃるのなら、お幸せに…。
いない方は見つかる事を願っています。