エルルカ

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12/19/2024, 6:14:24 PM

【お題:寂しさ】

 魔法には属性が存在する。一重に魔法使いと言えど、扱えない属性の方が多く、能力者と魔法使いを区別するのは難しい。
 そんな中、無属性と言われる、ありとあらゆる属性を扱える者も存在するが、そうなると魔力量が少ない傾向がある。

 魔力量とは、魔法に使うエネルギー量を指し、ユークドシティでは、魔力量が少ないと迫害の対象となる。
 私……ミユもまた、その一人。

 私が産まれたクラッセ家は、ユードクシティでは雷属性として知られた名家で、魔力量も多い。
 だからこそ、魔力量の少ない私は家族から疎まれた。

 学校へ行っても同じで、私には居場所がなかった。
 ただ一言、寂しい、辛いと言えたらどれだけ楽なのだろうと、考えたことがないわけではない。言えるわけもないのだが。

 そうした日常も過ぎ去り、高校まで卒業した時。家に一通の手紙が来た。
 差出人は、研究者地区中央からだ。
 研究者地区というのは、その名の通り、研究者が集まる場所で、自然と研究施設が建てられた土地だ。
 現在は、東西南北と中央、五つの大きな研究所に集約されている。

 ユークドシティとは違い、法はあってないような場所だが、不思議と殺人は少ない。その理由を私は知らないけれど。
 一体何の手紙だろうと開封すると、内容は無属性の魔法使いに、実験の協力を要請しているとのことだった。

 どんな実験なのか明記はされていない。来て欲しい日付のみの、怪しい手紙。
 それでも、私は行くことに決めた。

 どうせ今のままでも、生きた心地ではないのだ。ならば、どうなろうと構わないと。
 自暴自棄だった。寂しさを紛らわせる理由が欲しかった。

 手紙を貰ってから数日後、私は研究者地区へ向かって旅立った。
 それが、新たな物語の始まりだなんて、私は思いもしなかった。

ーあとがきー

 今回のお題は寂しさ。
 寂しさ、寂しさ…うーんって悩んで、此度の語り部はミユちゃんです。
 この世界における魔法使いと魔力について少し触れました。私が作る世界の魔法の法則は、全て均一なのですが、魔力は生命エネルギーです。
 だからって少ないからすぐ死ぬってわけでもないですけれど、生きるために使うエネルギーが有り余ってると、魔力量が増え、余っていないと魔力量が減る、そんな感じです。
 無属性の魔力量が少ないのは、メタい話チート対策であったり……。
 研究者地区も出てきました。キャラが濃い変人が自然と集まった場所です。なぜ殺人が少ないのか、とか、今後出せれたらいいなぁ…
 さて、今日のあとがきはここまで。
 それでは、また、どこかで。
エルルカ

12/18/2024, 8:50:13 PM

【お題:冬は一緒に】

 物語には分岐点が必要だ。
 長ければ長い程、その分岐は重要となり、物語の世界を変え、揺るがすものとなる。

 雪が降る。まだ、積もってはおらず、積もる程激しくない。
 しんしんと、静かに、まるで世界を覆うように。

「雪か……」
「柘榴? 外にいると風邪を引くぞ」

 呼ばれた男は振り返る。同じく空を眺めていた彼に、微かに笑顔を返すと、また空へと目線を戻す。

「憖か、もう冬になるな……」
「あぁ、そうだな。雪が積もる前に全ての片がついて良かったよ」
「何を言う、何も解決してないだろう」

 呆れたようなその声も、その後の返しも、雪のように解けていく。
 静かに、静寂をもたらすその気配を、誰が目ざとく察する事が出来ただろう。

 物語には分岐点が必要だ。
 長く、長く、その中心を変えて進む物語は、氷河期へと進んでいく。

「空気が冷たい、これは長くなりそうだ」

 誰がが、その空に向かって手をかざす。手に乗った雪は溶け、水へと変わる。
 水は凍り、また雪が積もる。

「レイ、どうかしたのか?」
「……青龍、雪が長くなりそうだ。どうやらレースロワの分岐点らしい」
「分岐点? 何を言ってるただの雪だろ」
「ただの雪にしては、空気が冷た過ぎる」

 何か魔法のような気配がする。その言葉を聞いていた、青龍は、顔を顰めた。

 大地に降り注ぐ雪は、平等に、公平に振り積もっていく。
 まるで、皆に冬は一緒にやってくる。そう告るかのように。

 世界を覆う冬がやってくる。

ーあとがきー

 今回のお題は冬は一緒に。
 多分、恋愛系のお題だとは思うのですけど、全くもって不穏な空気だけが漂いました。
 今回の語り部はなしっ!強いて言うなら、司書エルちゃんが近いかもしれません。ありがとう、ごめんね、の時の語り部ですね。
 抽象証言だけの短編。レークスロワという大陸の話のみを書いていますが、お題によって時間軸もバラバラ、キャラクターもバラバラとなっておりますが、きちんと時間軸はあります。
 今回の時間軸は、前の話とりとめのない話からは、数十年前。
 まぁ、時間軸が大幅に他短編と同じくらいまで戻ってきました。なんて不安定。
 裏話をいたしますと、レークスロワ自体に冬が来ることはあまりありません。年中冬の国はありますけれど、四季折々なのは、それこそ、桜花國くらい。なので、全土で雪が降るのは異常事態だったりします。
 だからこその、分岐点。この「冬」の話も、どこかで描ければ良いのですのが…
 それでは、この辺りに致しましょう。
 また、どこかで。
エルルカ

12/17/2024, 7:34:07 PM

【お題:とりとめのない話】

 とりとめのない話をしようか。
 そう、末の弟に話しかけると、蹲っていた彼は微かに顔を上げ、その光の灯らない瞳を向けてくる。

 一応聞く意思はある。ただ、言葉を返す気はない。その心を閉ざしたまま、否、閉ざさなねばいけないままだ。
 それは、私自信重々理解している。今の私では、両親の意向に逆らうことはできない、ただこうやって、話しかけてやることしかできないのだ。

「今日は、とても良い天気だったよ。あぁそうだ、桜花にも春が来たんだ、桜が咲いたものだから街が活気づいている」

 なるべく季節の話題を出すことで、時間を知らせる。弟は生まれてからもう何年も、巡る季節を見てきていない。
 想像できるように、事細かに言葉にしてみてはいるが、さて、どこまで理解出来ているだろうか。

「……すずにぃは、なんで私なんかに構うのですか」
「え?」
「利益などありませんでしょう? 私は忌み子なんですから」

 ぷいっと、壁際へと彼の目線が動く。そこには、積み上がった本の山。
 この弟は怖いくらいに頭が良い。両親に黙って、文字を教え、彼に様々な本を与えてみたが、その全てを読破し、言葉の意味を理解した上で、こうして聞いてきている。

 忌み子。それは、我が如月家のみに出てくる者。
 如月家は現在、桜花國、筆頭華族と呼ばれているが、かつては、中頭華族であった。元々筆頭であった、黒影家が、当主、嫡男共に不在となり、没落したため、筆頭となった歴史がある。
 中頭の中で、どの家が筆頭となるかで揉めた末、黒影家最後の当主、柊の妻を出した四宮家と、忌み子と呼ばれる、力のある子供を排出する我が如月家のどちらかとなった。

 その中で産まれたのが末の弟、華扇である。華扇の右肩から手首までは、黒文様で覆われており、その文様は魔力を吸収すると言われている。
 言われているというのは、忌み子が産まれたのが約千年ぶりであり、資料がないためだ。

 両親はそんな華扇を怖がりながらも利用することにした。忌み子がいる、この家が筆頭に相応しいのだと。
 結果的に筆頭とはなったが、華扇は地下室に閉じ込められている。一度決まってしまえば覆せないのだからと、表に出されていないのだ。

「……利益かぁ、まぁあれだ、私がこの家を継いだら、華扇が味方になるように、かな?」
「……うそつき」
「ははっ、嘘も方便だ。それに嘘はついちゃいないさ、お前が敵に回ったら、兄ちゃん悲しいからな」

 私が継ぐならば、この弟には幸せになってもらいたい。この、桜花という狭い国ではなく、レークスロワという、広大な大地の元で。

 それまで私は、この地下室でとりとめのない話をする。
 いつか来る、弟の大切な日々のために。

ーあとがきー

 今回のお題はとりとめのない話。
 というわけで、桜花國の話です。
 華族の階級は、筆頭、中頭、下頭と別れており、筆頭一家、中頭三家、下頭八家の全十二家で構成されております。
 黒影家がいた頃は、中頭四家の十三家で構成されておりました。
 此度の語り部の名は、鈴華。だから、すずにぃです。如月家嫡男となります。
 黒影家が花の名前であるように、如月家は、名前に華が付く決まりがあります。そういう歴史です。
 今までの短編とは、時代が大分異なりまして、十数年後という時間軸です。
 華扇&鈴華も様々なエピソードを持ったキャラクターなので、これから語れたらなぁと思います。
 それでは、またどこかで。
エルルカ

12/13/2024, 12:32:24 PM

【お題:愛を注いで】

 少し昔話をしよう。
 これはまだ、歯車が壊れる前のお話……否、彼女が生まれた時点で、歯車は歪んでいたのかもしれない。

 大陸レークスロワは、その殆どが西洋文化の国である。その中で、唯一の漢文化の国が、桜花國。
 それなりに広い国で、東側を人間が、西側を獣人が治めている。
 中でも、東側に生まれたある一人の女性は、それはそれは有名であった。

 東側には、華族(かぞく)と呼ばれる、所謂貴族がおり、四宮家に生まれた、桔梗と名付けられた彼女は、誰からも愛される美貌と、清らかな心を持っていた。
 何人もの男達が彼女に求婚する中、何年もかけて彼女の心を射止めたのは、華族のまとめ役、黒影家の嫡子、柊であった。

 結婚一年が経つ頃には二人はとても仲の良い夫婦として、國中に認知された。
 ただ、桔梗は体が弱かった。それは生まれつきのものであり、当時の医療では、どうしようもないものであった。

 それでも、柊は桔梗に愛を注ぎ続けた。それは、異常ともいえる執着であった。
 そうして、その執着は段々と、必然的に狂気を孕んだ。

 柊が望んだのはただ一つ。愛する妻と長く生きること。そのためには、どんな犠牲だって払ってしまえる程である。
 そう、どんな犠牲でもあっても……だ。

 雨が降る音がする。窓から空を眺めると、どんよりとした憂鬱なもので。
 背後でカチャカチャと、金属が触れる音がして、なんとか溜息を飲み込んだ。

「なぁ」
「ん」
「……貴様は、そのままでいいのか」

 相手の顔を見ずにそう告げれば、ふんっと鼻で笑うような返事だけが返ってくる。
 不穏な空気を読み取ったのか、はたまた何も考えていないのか、相手が連れている少女……ざらめは純粋さを滲ませた瞳を瞬かさせる。

「おじさま? 憖? なんの話しなのです?」
「ざらめは気にしなくていい、俺がざらめの食料供給をやめるわけがないからな」

 まるで、父親が娘に愛を注ぐように、その声色は酷く甘く優しい。
 それが、幻想であり逃げなんだと、本人が一番よく理解しているだろうに、そうでもしないと精神が保てないのだろう。

 桔梗を失った、柊のように。

「どこまでも似たんだな、貴様は」
「何か言ったか?」
「いいや、それより程々にしておけよ、特殊警察から怒られても知らんからな」

 人の魂を糧として生きるダークエルフ。彼女に食料を提供するためだけに殺戮を繰り返す、妻子を殺された殺人鬼。
 妻を長生きさせるために、人間も人外も殺して、その細部の細胞を研究し、異端児という忌々しいモノを生み出した柊。

 黒影家という歪みと、愛を注ぐことという狂気が凝縮された親子である。
 一度壊れた歯車はもう、元には戻らない。

ーあとがきー

 今回のお題は愛を注いで。
 そのままでは、使いにくかったので、愛を注ぐだけ使わせて頂きました。
 というわけで、柘榴さんのご両親、黒影柊と桔梗のお話。
 レークスロワ、恋愛面での狂気は様々あるので、何処をピックアップしようかな♪とワクワクしました。というわけで、黒影家をピックアップです!
 時間軸としては、今までの逆さや何もないフリ、心と心から三年後くらいを想定。憖と柘榴が仲良く話すのは、その辺。私は二人の寡黙なんだか、お喋りなんだか、判断しにくい会話が好きです。
 そして、ざらめちゃんが何者なのか、サラッと記載させて頂きました、彼女は人の魂を食べるダークエルフです。だから、柘榴さんは殺戮のをやめません。
 異端児も少しだけ出しました、柊は一体何をして、異端児を生み出しのでしょうか……。
 それでは、今回はここまで。
 また、どこかで。
エルルカ

12/12/2024, 8:07:24 PM

⚠ 血の描写があります。苦手な方はフィールドバックをおすすめ致します


【お題:心と心】

 心というものは、いつか変わるものだとは言うし、どんなに、悲惨なモノもいつか見慣れるものだとは言うけれど。

 髪や服から滴る雫、手に持つのは血に染った黒光りする鎌。
 雨も上がり、雲一つない空は、この状況を皮肉っているようで。

 踏み出せば、肉と血が混ざった独特の感触。自分でも、この場にある死体が何人で、そして誰なのか。知る由がない。
 手に持っていた鎌を、背後に背い、その場を歩く。

 また、特殊警察に通報されることだろう。雨ざらしの死神が出た……と。
 神出鬼没、雨の日にしか出ない殺人鬼。レークスロワという、この大陸中で話題になる話の一つ。

 魔法も能力も、力のある異種族だって叶わない、犯人不明の事件。

「憖? どうしたのさ、何時になく雰囲気が暗いね?」
「誰のせいだと……」

 背後からの声に、呆れと怒気混じりの返事をすれば、人型であれば、肩を竦めたのだろうなとわかる声色で、さぁ? と返ってくる。
 このやり取りももう何度目か、この声の主、鎌……自分は黒羽(こくう)と呼ぶことにしているが、こいつとの付き合いも長い。
 長いが、その心はわからない。

 精霊も、妖も、天使や悪魔も、異種族や人外と呼ばれ者達は、心と心を通わし、理解し合えるという。長く付き合えば、自ずとわかるものだと。
 黒羽とも数十年の付き合いのはずだが、全く意思疎通ができていない。会話が噛み合わないのだ。考え方の違いとも言うかもしれない。

「いい加減、殺戮にも飽きたんじゃないか? というより、なぜ俺の体を使う?」
「何度も言ってるけど、憖を守るためだよ? それから、僕は憖で憖は僕なんだから、体を使うのは当たり前でしょ」

 うん、わからん。元から理解できるとも思っていないが。
 雨の日にのみ、自分の体を乗っ取れる鎌。そして、通りがかりの人間を殺していく。
 雨ざらしの死神が何時までも犯人不明であるのは、見た者は全員死んでいるからだ。

 そして、自分が黒羽を消す方法を探す限り、移動し続けるためである。

 心はいつか変わるというけれど、きっと、黒羽も自分も変わらないのだろうなと、晴れた空を見てため息をついた。

ーあとがきー

 今回のお題は心と心。
 はぁん?そんな繊細な心の持ち主いませんがぁ!と、ありがとう、ごめんねの時と同じように叫びました。誰を語り部にすれってんだ!と。
 結果、心と心って言ったら、通わせるとか人と人外の話だなぁとなり、語り部が憖さんに決定。
 前回の、何もないフリで、Sugar Blood、柘榴さんを語ったので、そろそろ雨ざらしの死神ご本人も語りましょうか!ってノリです。
 憖さんは、仲間の語り部、サラさんのご先輩。ペアを組んでいた方ですね。
 今までの短編、語り部同士が話す場面とかないので、そろそろ語り部同士の関係とかも出したいなぁと思いつつ、書く時代を変えるのもなぁと思いつつ。結局お題次第ですが。
 では、本日はこの辺りで。
 それでは、またどこかで。
エルルカ

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