⚠ 血の描写があります。苦手な方はフィールドバックをおすすめ致します
【お題:心と心】
心というものは、いつか変わるものだとは言うし、どんなに、悲惨なモノもいつか見慣れるものだとは言うけれど。
髪や服から滴る雫、手に持つのは血に染った黒光りする鎌。
雨も上がり、雲一つない空は、この状況を皮肉っているようで。
踏み出せば、肉と血が混ざった独特の感触。自分でも、この場にある死体が何人で、そして誰なのか。知る由がない。
手に持っていた鎌を、背後に背い、その場を歩く。
また、特殊警察に通報されることだろう。雨ざらしの死神が出た……と。
神出鬼没、雨の日にしか出ない殺人鬼。レークスロワという、この大陸中で話題になる話の一つ。
魔法も能力も、力のある異種族だって叶わない、犯人不明の事件。
「憖? どうしたのさ、何時になく雰囲気が暗いね?」
「誰のせいだと……」
背後からの声に、呆れと怒気混じりの返事をすれば、人型であれば、肩を竦めたのだろうなとわかる声色で、さぁ? と返ってくる。
このやり取りももう何度目か、この声の主、鎌……自分は黒羽(こくう)と呼ぶことにしているが、こいつとの付き合いも長い。
長いが、その心はわからない。
精霊も、妖も、天使や悪魔も、異種族や人外と呼ばれ者達は、心と心を通わし、理解し合えるという。長く付き合えば、自ずとわかるものだと。
黒羽とも数十年の付き合いのはずだが、全く意思疎通ができていない。会話が噛み合わないのだ。考え方の違いとも言うかもしれない。
「いい加減、殺戮にも飽きたんじゃないか? というより、なぜ俺の体を使う?」
「何度も言ってるけど、憖を守るためだよ? それから、僕は憖で憖は僕なんだから、体を使うのは当たり前でしょ」
うん、わからん。元から理解できるとも思っていないが。
雨の日にのみ、自分の体を乗っ取れる鎌。そして、通りがかりの人間を殺していく。
雨ざらしの死神が何時までも犯人不明であるのは、見た者は全員死んでいるからだ。
そして、自分が黒羽を消す方法を探す限り、移動し続けるためである。
心はいつか変わるというけれど、きっと、黒羽も自分も変わらないのだろうなと、晴れた空を見てため息をついた。
ーあとがきー
今回のお題は心と心。
はぁん?そんな繊細な心の持ち主いませんがぁ!と、ありがとう、ごめんねの時と同じように叫びました。誰を語り部にすれってんだ!と。
結果、心と心って言ったら、通わせるとか人と人外の話だなぁとなり、語り部が憖さんに決定。
前回の、何もないフリで、Sugar Blood、柘榴さんを語ったので、そろそろ雨ざらしの死神ご本人も語りましょうか!ってノリです。
憖さんは、仲間の語り部、サラさんのご先輩。ペアを組んでいた方ですね。
今までの短編、語り部同士が話す場面とかないので、そろそろ語り部同士の関係とかも出したいなぁと思いつつ、書く時代を変えるのもなぁと思いつつ。結局お題次第ですが。
では、本日はこの辺りで。
それでは、またどこかで。
エルルカ
12/12/2024, 8:07:24 PM