お題《好きになれない、嫌いになれない》
お題《桜》
春の庭園に迷い込む
これは神隠しか
それとも春の魅せる夢なのか
桜はいつの時代でも惹かれて
《途中書き》
お題《君と》
異世界と現実を結ぶストーリーテラー
キャラメル色のノスタルジー漂う紳士服
「やあやあようこそ。君の望む僕が、やって来ましたよお嬢さん。なになに? そんなの知らない? ――へえ。じゃあ君は何故“現実”に興味がないの? そんなことない、ってのは無しね。だって僕には“そういう子”がわかっちゃうからさ」
甘い焼き菓子のようににこにこ笑う青年
でもそれはどこまでいっても“不気味”だった
“そういう子”
引っ掛かる物言いだ
「取り繕うなんて無理だよ。“嘘”というものは、どこまでいっても“嘘”でしかないんだから。“日常”に辟易してるんだろう? 君は“現実を適当に生きてる”でしょ。つまらない、くだらないって。――それなら」
青年はふいに真面目な顔で花を降らせた
《途中書き》
お題《涙》
純粋な煌めきは深淵をも癒す
“涙”には不変の価値がある
深く腐った町の最果てまでに噂が届くほどに
わたしは抜け出したかった
耐え難い餓えと同じ境遇の中でも差別される
心の貧しさからも
(絶対に這い上がってみせる。絶対に――)
炎がゆらめくような美しい長髪をナイフで切る
風にさらわれ舞い上がるさまは真紅の花弁のようにも見えた
夜明けの涙は誓いだ
少女はまだ知らない
この涙がやがて連れてくる壮大な運命の物語を
「この娘もちがう。まがいものだ」
少年の氷の硝子のように冷たい瞳に連れてこられた娘たちはおびえた
少年もまた“涙”を巡る美しくも愚かな悪夢に踊らされていた
「聖女の涙なんてしょせんお伽話にすぎません。蒼明の王よ、賢い王なら、理解してますよね? 僕の言いたいことを――――」
王として生まれてきた少年は夜のように昏く嘲笑うそれを
睨み続ける
「涙を巡る物語は繰り返される」
そう告げた者は――きっと今もこの螺旋を高みの見物をしているのだろう
お題《記憶》
凪いだ水鏡にひと雫波紋が物語を捲る
枯れ果てた冬から泡沫の春に紡がれ
神代から現代へ贈る記憶のおとぎばなし
「氷雨様は唯一無二の神代の歯車のお方なのだから。あなたもそろそろ、わきまえなさいな」
氷雨と同じ街で育って 同じ風景を見て
一緒になろうと花白の誓いをしてくれた
でもそんなものは簡単に破り捨てられてしまう
この世界でも
ああそうやって繰り返すんだ咎の歴史を
「氷雨様」って呼ばれるあなたは私の知らない人に見えた
詩で賛えられ 従者を連れ歩く
もう私を“白椿”とは呼んでくれない
この物語はこれが正しいのだろうか
この物語の中で
――私とあなただけが幸せになれないなんて
なんて馬鹿馬鹿しいおとぎばなしだろう
《途中書き》