椿灯夏

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2/17/2025, 3:17:55 PM

お題《輝き》

「なあ! 昨日のニュース見たか!?」


真夏の寄宿舎に響く真夏に負けないくらい

熱を帯びた声

「竜星群だろ。みんなあっちこっちで、その話で持ちきりだからな。ラズで10回目だよ、言ってきた奴」

「くっそー先越されたかあ。俺が絶対一番だと思ったのに」


崩れ落ちるこいつはラズライト

透きとおった天青の双眸の瞳が綺麗な

明るく嘘がつけないクラスメイト

竜星群――真夏に星の海を渡り竜の群が、流れ星のように
この地上へ流れてくることから、そう言われている


人間は幻想が好きだ

お伽話のように語られていたファンタジーの竜

それが真実として存在していたならば

それは夢が叶った証明


「なあカラクサ、一緒に竜星群見に行こうぜ。そんでもって竜と友達になって冒険したいな、お前とさ」


――翡翠ソーダ水の海


こいつといると、ずっと夏の季節を泳いでいるみたいだ


心に広がる夏の風景に思わず笑みがこぼれる



「ラズが心配だから行くよ、一緒に」



願わくばこの先もずっと君のトナリで


季節を泳いでいきたい

2/16/2025, 1:42:08 PM

お題《時間よ止まれ》


春は零れ落ち

花弁となって空へと逃げていく


魔王様と手にした日常が幻想でもいい

魔王様と交わした約束が自分にはちゃんとある

魔王様と紡いだ泡沫の日常は鮮やかに胸の奥で咲いている


リシュティアの手の中には暁の薔薇の花びらがある


涙の雫を吸ったその花が彼女に届けたのは


彼が生きた物語の証だった


すべては雨の日から始まった

 
どんな残酷な運命も夜明けに変わる


カタストロフィさえもそれは変えられない


《途中書き》

2/15/2025, 11:25:28 AM

お題《君の声がする》


朱に染まりゆく空はまるで血

地上を煌々と燃やす炎の花が天をもあかくする

この夜《世》こそが地獄かもしれない

下弦の月が見下ろす夜

すべてが一変した


君の声が

君の声は


もう、きこえない


涙の雫をすすり

不変の覚悟を心奥に抱いて

ひたすら地を蹴る


いつもきこえていた君の声が

いつもはなしかけてくれた君の声が


この世から悪は絶対なくならない


何故ならばそれは――人間がこの世界にいるからだ。




俺はそれを良しとはしない。


でも君が。


君が――――望むから。




俺は。



俺のやり方で、この世を正す。


2/14/2025, 1:30:03 PM

お題《ありがとう》


茜咲く季節に妖精の翅を見つけた

まれに人の国にも妖精は現れるらしい

人間の暮らしを学びに訪れるらしい

《らしい》というのは風のうわさで耳にし

この瞳でまだ、妖精を見たことはない

誰も彼もが妖精に憧れを抱き

妖精の物語を聞いてみたいと思っている

ある学者が言っていた

「この国には夢物語が必要だ。人は永遠ではいられない。時にはそんな夢見が、人を救うことだってある」のだと。


――その言葉が琴線に触れる


僕の無意味だとなんでも決めつける世界に


静かな水面に波紋を落とすように


《途中書き》

2/13/2025, 1:09:39 PM

お題《そっと伝えたい》道標の塔、墓標の塔



森の海に眠る高く高く聳え立つ塔

草花が寂しくゆれ

錆びついた風景

凍りついた時間

塔の周りを風が巡る

風は真新しい香りを運び

時間をゆっくり解かしてゆく

いつの時代からあるか誰も知らないが

この塔の意味を誰もが知っている

それは今へと語り継がれる伝承のように


秋の終わり森は終焉を迎える準備へと移り変わる

絵描きの少年は家族のお土産の茶葉と焼き菓子を買い

帰路を急ぐ

いつもならいつも通りなのに、

この日は何故か違ったのだ

何かに誘われるように、

森へと誘われる


奥へ奥へと歩いていくと――塔があった



そして、その塔を無言のまま見つめる杖をつきたたずむ老婆と出会う



《途中書き》

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