お題《太陽》
太陽の楽園と月の楽園。
ふたつの楽園に古からある伝承。
――楽園が夢に沈むとき。
異世界の月から少女来たる。
神の娘と王が真実の楽園に近づきしとき、青の楽園よみがえらん。
ふたりの王との邂逅。
「伝承なんてくだらん。そんなもの興味ない」
太陽の王はそう吐き捨て。
「おまえが無事ならいい」
月の王の優しさに触れ。
「はやく花とおなり」
謎の青年?にふりまわされ。
「どこで、まちがえたのかなあ」
彷徨う異世界の少女。
これは楽園の幻想物語――。
お題《鐘の音》
月鐘の町。
ここの町の心臓は、空にある大きな月。夜になると、人々は祈りを捧げる。その祈りがたまると――月鐘が鳴る。そして、夜の使者が町へくる、とか。
まるでお伽噺のような、でも真実(ほんとう)の話。
「ねぇリアラ、夜の使者ってどんな人だと思う? やっぱり相場はイケメンよね?」
「うーん。私はイケメンじゃなくてもいいと思うけれど……」
「ええ? 夢なーい! それじゃあ一生リアラは祈って終わる人生なの!?」
カフェでそんな大きな声を出さないでほしい、しかも祈ることをそんな風に言ったら――リアラが口に出すより先に、ずんずんと大きな足音が近づいてきて、リアラたちの席で立ち止まる。
「あらあ、エリちゃん。今日はもう暇だから、これから一緒に月鐘について勉強し直しましょうねえ」
カフェの店長であるシェーナおばさんの圧におびえるエリには悪いが、そろそろ帰らなければ――そっと席をたち、お代を机に置く。
「おばさんごめんね、そろそろ帰るわ」
「リアラはいいわよ」
「またくるね」
「いつでもいらっしゃい、月菓子を焼いて待ってるわね」
――夜の使者。
帰り道を急ぎながら、リアラは月に視線を向ける。
きっと彼は――もうすぐ目覚める。
耳に聴こえるのは。
心に響くのは。
儚く昏い鐘の音と――彼の音。
「リアラ」
お題《つまらないことでも》
灰色の日々が希望に変わってゆく。
失ったものもいつか、新しい翼をえて――。
動かなかったオルゴールが青年の手の中から、息を吹き返す。幻想花を降らせ、どこに隠れていたのか、木々の葉から、水辺から、精霊たちが出てきて曲調に合わせておどりだす。
「このオルゴールはつまらないものじゃないだろ、ほらちゃーんと生きて動いてるじゃねーか」
母から「魔法の宝箱よ」なんて言われて、手にした古いオルゴール。どんなに調べても、なんの変哲もない――だから森に捨てようとしてたら、現れたのがどこにでもいるようないい兄風の青年だった。
「お兄ちゃんは魔法使い?!」
瞳にたくさんの星を降らせた少女に、青年は屈託のない笑顔で答える。
「そうかもな」
この日があったから。
今も私は、魔法の宝箱を大切にしている。
そして《つまらなさそうにしている少女》に、私はあの日の物語を語るのだ。そして少女の瞳は、あの日の私のようにたくさんの星を降らせて。
「すごいね、お兄ちゃんは魔法使いなの?」
お題《目が覚めるまでに》
毎日君の窓辺に花を飾って。
毎日君の好きな紅茶を淹れて。
毎日君の育てたハーブを摘んで、朝食をつくって。
毎日君におはようのキスをする。
やわらかな陽光の中、君が微笑む。
僕の幸せは、君と繋がっている。
お題《病室》
枯れた言葉と涙の跡には。
奇跡が生まれる。
君の声が、私の世界を再生させる。
霧に包まれた町アリーシャ。
ここは最果て――治ることのない病を抱えた人々が暮らす楽園。女神アリーシャの力がこの地に宿っているとされ、とある者が「これは女神の意思だ、奇跡だ」としたのが始まり。
アリーシャは年中深い霧に包まれているため、町を出歩く人はまずいない。
――だからこうしていつも、つまらない世間話をする。
「今日は霧の丘で歌を聴いたんだ、きっと女神さまの歌だよ」
「女神さま、ねぇ……」
呆れるほど、女神さま女神さまうるさい私の幼なじみコトア。泣き虫で、女神オタクだ。可愛い顔なので、周りから受けがよかったのをよく覚えている。
「そんなことよりトア――いい加減ここへ来るのはやめなさい」
「どうして?」
「そんなこともわからないの?! ここは最後の時を過ごす場所なの! もう、あなたの顔なんて見たくないのよっ」
「――っ」
――これで。もうここへは、こないでしょう。小さい頃から私の知る世界は《トア》だけだった。
トア………………あなたの行く末を、隣でずっと見守っていたかった。
まばゆい光の中で。
ずっと先の未来。
私は、あなたの声で目を覚ます。
追伸 メモのように描いてしまって、この不出来ですが……一応残しておきます^_^;