月下の胡蝶

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8/1/2022, 12:19:32 PM

お題《明日、もし晴れたら》



永遠の旅に、でよう。



森はすっかり落葉し、季節は終焉を迎える。


淡い冬の陽射しの中やわらかな蜂蜜色の机で、読書をする。少女は夢中で気づかない――そして、背後からひょいと本を取り上げられ、聞き慣れた声がした。


「そんなに面白いか、俺といるより?」



青い瞳、青い髪。神秘的な青さの青年は、少女を背後から抱きしめる。慈しむように、顔を寄せ――しょうがないなあ、と笑う少女。



「面白いに決まってるわ、あなたが買ってくれた物語だもん。それより、明日は飛べそう?」


「ああ、問題ない」


「じゃあこれから用意しないとね」



窓辺にある渋い紅茶色のトランクは、青年が自由になったら旅にでようと約束して買ったものだ。この森を離れ、遠くへいくために。




あの日星の降り注ぐ夜、竜の王になった。



そして今、竜は最愛の少女のもとへかえってきた。





「もし明日晴れたら――旅にでよう、永遠に旅し続けよう」





竜と少女は旅にでる。


始まりの夜の約束を――。



7/31/2022, 12:20:02 PM

お題《だから、一人でいたい。》



叶うなら、その腕の中にいたかった。


叶うなら、あなたを殺すのは――。





「もう泣くな。大丈夫だから……俺がいるから、なくな……」



血の海を照らすのは月。


朱は互いの衣を美しく冷酷に、染めあげる。

子供みたいに泣きじゃくる少女を抱きしめる青年は、この時一体何を想ったのだろう。





突き刺さる静寂と罪。


それでも、あなたとはなれられない――。



7/30/2022, 2:06:03 PM

お題《澄んだ瞳》



その瞳は、果ての果てまで見通す――。



この瞳は災いだ。


しりたくもない真実を識り、そして見せる。



それでもこの瞳は希望《のぞみ》だ。



「――この手がどれだけ血で濡れようと。俺はおまえのためなら、捨てられるんだ希望《のぞみ》を」





世界を識る者と世界を渡る者。




わたしたちが夢みた世界は、どこで違えてしまったんだろう。



《同じ瞳》を持つ者なのに。





7/29/2022, 11:41:01 AM

お題《どんなに嵐が来ようとも》



 路傍の花は眠る


 暁がくると信じて



どれだけ泥にまみれても


どれだけ深い孤独にいても




 路傍の花は目覚める


 暁がくることを知っているから

7/28/2022, 11:25:32 AM

お題《お祭り》


カラカラ。


カラカラ。




鳥居の向こうから風車が廻る音がする。


鳥居の向こうから、手招きするだれか。


あれは誰だったか。



すべては黄昏の向こうへ消えてしまった。



今も夏祭りが終わった、夏の終わりは、あの鳥居から風車の廻る音がする。



カラカラ。


カラカラ。



――よぶのは。


――よばれているのは。




だ、あ、れ、?




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