お題《明日、もし晴れたら》
永遠の旅に、でよう。
森はすっかり落葉し、季節は終焉を迎える。
淡い冬の陽射しの中やわらかな蜂蜜色の机で、読書をする。少女は夢中で気づかない――そして、背後からひょいと本を取り上げられ、聞き慣れた声がした。
「そんなに面白いか、俺といるより?」
青い瞳、青い髪。神秘的な青さの青年は、少女を背後から抱きしめる。慈しむように、顔を寄せ――しょうがないなあ、と笑う少女。
「面白いに決まってるわ、あなたが買ってくれた物語だもん。それより、明日は飛べそう?」
「ああ、問題ない」
「じゃあこれから用意しないとね」
窓辺にある渋い紅茶色のトランクは、青年が自由になったら旅にでようと約束して買ったものだ。この森を離れ、遠くへいくために。
あの日星の降り注ぐ夜、竜の王になった。
そして今、竜は最愛の少女のもとへかえってきた。
「もし明日晴れたら――旅にでよう、永遠に旅し続けよう」
竜と少女は旅にでる。
始まりの夜の約束を――。
お題《だから、一人でいたい。》
叶うなら、その腕の中にいたかった。
叶うなら、あなたを殺すのは――。
「もう泣くな。大丈夫だから……俺がいるから、なくな……」
血の海を照らすのは月。
朱は互いの衣を美しく冷酷に、染めあげる。
子供みたいに泣きじゃくる少女を抱きしめる青年は、この時一体何を想ったのだろう。
突き刺さる静寂と罪。
それでも、あなたとはなれられない――。
お題《澄んだ瞳》
その瞳は、果ての果てまで見通す――。
この瞳は災いだ。
しりたくもない真実を識り、そして見せる。
それでもこの瞳は希望《のぞみ》だ。
「――この手がどれだけ血で濡れようと。俺はおまえのためなら、捨てられるんだ希望《のぞみ》を」
世界を識る者と世界を渡る者。
わたしたちが夢みた世界は、どこで違えてしまったんだろう。
《同じ瞳》を持つ者なのに。
お題《どんなに嵐が来ようとも》
路傍の花は眠る
暁がくると信じて
どれだけ泥にまみれても
どれだけ深い孤独にいても
路傍の花は目覚める
暁がくることを知っているから
お題《お祭り》
カラカラ。
カラカラ。
鳥居の向こうから風車が廻る音がする。
鳥居の向こうから、手招きするだれか。
あれは誰だったか。
すべては黄昏の向こうへ消えてしまった。
今も夏祭りが終わった、夏の終わりは、あの鳥居から風車の廻る音がする。
カラカラ。
カラカラ。
――よぶのは。
――よばれているのは。
だ、あ、れ、?