お題《目が覚めるまでに》
毎日君の窓辺に花を飾って。
毎日君の好きな紅茶を淹れて。
毎日君の育てたハーブを摘んで、朝食をつくって。
毎日君におはようのキスをする。
やわらかな陽光の中、君が微笑む。
僕の幸せは、君と繋がっている。
お題《病室》
枯れた言葉と涙の跡には。
奇跡が生まれる。
君の声が、私の世界を再生させる。
霧に包まれた町アリーシャ。
ここは最果て――治ることのない病を抱えた人々が暮らす楽園。女神アリーシャの力がこの地に宿っているとされ、とある者が「これは女神の意思だ、奇跡だ」としたのが始まり。
アリーシャは年中深い霧に包まれているため、町を出歩く人はまずいない。
――だからこうしていつも、つまらない世間話をする。
「今日は霧の丘で歌を聴いたんだ、きっと女神さまの歌だよ」
「女神さま、ねぇ……」
呆れるほど、女神さま女神さまうるさい私の幼なじみコトア。泣き虫で、女神オタクだ。可愛い顔なので、周りから受けがよかったのをよく覚えている。
「そんなことよりトア――いい加減ここへ来るのはやめなさい」
「どうして?」
「そんなこともわからないの?! ここは最後の時を過ごす場所なの! もう、あなたの顔なんて見たくないのよっ」
「――っ」
――これで。もうここへは、こないでしょう。小さい頃から私の知る世界は《トア》だけだった。
トア………………あなたの行く末を、隣でずっと見守っていたかった。
まばゆい光の中で。
ずっと先の未来。
私は、あなたの声で目を覚ます。
追伸 メモのように描いてしまって、この不出来ですが……一応残しておきます^_^;
お題《明日、もし晴れたら》
永遠の旅に、でよう。
森はすっかり落葉し、季節は終焉を迎える。
淡い冬の陽射しの中やわらかな蜂蜜色の机で、読書をする。少女は夢中で気づかない――そして、背後からひょいと本を取り上げられ、聞き慣れた声がした。
「そんなに面白いか、俺といるより?」
青い瞳、青い髪。神秘的な青さの青年は、少女を背後から抱きしめる。慈しむように、顔を寄せ――しょうがないなあ、と笑う少女。
「面白いに決まってるわ、あなたが買ってくれた物語だもん。それより、明日は飛べそう?」
「ああ、問題ない」
「じゃあこれから用意しないとね」
窓辺にある渋い紅茶色のトランクは、青年が自由になったら旅にでようと約束して買ったものだ。この森を離れ、遠くへいくために。
あの日星の降り注ぐ夜、竜の王になった。
そして今、竜は最愛の少女のもとへかえってきた。
「もし明日晴れたら――旅にでよう、永遠に旅し続けよう」
竜と少女は旅にでる。
始まりの夜の約束を――。
お題《だから、一人でいたい。》
叶うなら、その腕の中にいたかった。
叶うなら、あなたを殺すのは――。
「もう泣くな。大丈夫だから……俺がいるから、なくな……」
血の海を照らすのは月。
朱は互いの衣を美しく冷酷に、染めあげる。
子供みたいに泣きじゃくる少女を抱きしめる青年は、この時一体何を想ったのだろう。
突き刺さる静寂と罪。
それでも、あなたとはなれられない――。
お題《澄んだ瞳》
その瞳は、果ての果てまで見通す――。
この瞳は災いだ。
しりたくもない真実を識り、そして見せる。
それでもこの瞳は希望《のぞみ》だ。
「――この手がどれだけ血で濡れようと。俺はおまえのためなら、捨てられるんだ希望《のぞみ》を」
世界を識る者と世界を渡る者。
わたしたちが夢みた世界は、どこで違えてしまったんだろう。
《同じ瞳》を持つ者なのに。