お題《どんなに嵐が来ようとも》
路傍の花は眠る
暁がくると信じて
どれだけ泥にまみれても
どれだけ深い孤独にいても
路傍の花は目覚める
暁がくることを知っているから
お題《お祭り》
カラカラ。
カラカラ。
鳥居の向こうから風車が廻る音がする。
鳥居の向こうから、手招きするだれか。
あれは誰だったか。
すべては黄昏の向こうへ消えてしまった。
今も夏祭りが終わった、夏の終わりは、あの鳥居から風車の廻る音がする。
カラカラ。
カラカラ。
――よぶのは。
――よばれているのは。
だ、あ、れ、?
お題《神様が舞い降りてきて、こう言った。》
おまえの淹れたお茶が飲みたい。
神様の身代わりであるおれに、あのとき淹れてくれたお茶をもういちど飲ませてくれ。
星空が綺麗な夜ベランダに、突然その青年は降りてきた。一瞬流れ星が落ちてきたんだと錯覚してしまったが、どうやら違うらしい。
「――覚えてるおれのこと」
「どこかでお会いしましたっけ……?」
「そう」
戸惑いつつも、何気ない雑談をする。そのくせ自分の話はまったくしないものだから、おもに私の話になってしまったが。
それでも嫌な顔ひとつしない。
なんだろう……この小さな違和感。
どうしていいかわからず、とりあえずお茶をすすめてみることにした。お茶を淹れることは得意なのだ。祖母が茶道の先生だったからか、自然と茶道に触れ身についてしまった。
「あのう、お茶淹れましょうか? なんでもお好きなお茶淹れますよ」
「ほんとうか?!」
急に少年のようになって、不覚にもときめいてしまった。胸の中に流れてゆく流れ星。
そしてこう言った。
「おまえの淹れたお茶が飲みたい。
神様の身代わりであるおれに、あのとき淹れてくれたお茶をもういちど飲ませてくれ」
この感情を、織りまぜてお茶にしてみようか。
お題《誰かのためになるならば》
想いの原点。
原動力であり、追い風でもある。
「クオイ兄ちゃんは、どうしていつも笑ってるの?」
「笑顔でいたら、夜の底だって越えられる。それが嘘か真実(ほんもの)かより大切なことは、描こうってする想いなんだぜ」
いつも暁の国の辺境にあるちいさな教会で、子どもたちに物語の読み聞かせ、旅をしてきた自らの冒険譚、想いなどを語ったりしている。絵本を寄付したりと、クオイの活動は幅広い。
ふだんは手のひらサイズのグリフォン、フェンネルが、かばんに入っている。リシュティアから甘いものをもらううちに、甘党のグリフォンとなった。「ネルちゃん」と呼ばれている。
・手先が器用
ルシュラの懐中時計も直した。料理も実は得意で、行く先々で披露したりしている。スイーツやお茶を淹れる腕前はプロ並みだとか。
・人じゃないものにも好かれる
誰にも好かれるタイプ。老若男女問わず。
妖精とも仲がいい。
お題《鳥かご》
オリメと出逢うまでは、月のない鳥籠にいるようだった。
「ヨル様」
彼女にそう呼ばれるたび、心に春風が舞い込む。
永遠に、月のない鳥籠で生きていくしかないと思っていた。でもそれはきっと、自分の世界しか知らなかったからだと識るのはもっと先のこと――。
「オリメちゃんみてみて、サクラが星屑糖(こんぺいとう)くれたよ」
「まあ、偉いですわ」
おれの鴉のサクラを撫でている彼女と、彼女の心友である姫。どちらもおれにとっては、大切な花だ。永遠に枯れない心の花。
――きっとみんな、姫のことが好きなんだろうな。
暁の姫が。