椿灯夏《少しずつ削除します》

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7/29/2022, 11:41:01 AM

お題《どんなに嵐が来ようとも》



 路傍の花は眠る


 暁がくると信じて



どれだけ泥にまみれても


どれだけ深い孤独にいても




 路傍の花は目覚める


 暁がくることを知っているから

7/28/2022, 11:25:32 AM

お題《お祭り》


カラカラ。


カラカラ。




鳥居の向こうから風車が廻る音がする。


鳥居の向こうから、手招きするだれか。


あれは誰だったか。



すべては黄昏の向こうへ消えてしまった。



今も夏祭りが終わった、夏の終わりは、あの鳥居から風車の廻る音がする。



カラカラ。


カラカラ。



――よぶのは。


――よばれているのは。




だ、あ、れ、?




7/27/2022, 11:44:43 AM

お題《神様が舞い降りてきて、こう言った。》



おまえの淹れたお茶が飲みたい。


神様の身代わりであるおれに、あのとき淹れてくれたお茶をもういちど飲ませてくれ。





星空が綺麗な夜ベランダに、突然その青年は降りてきた。一瞬流れ星が落ちてきたんだと錯覚してしまったが、どうやら違うらしい。



「――覚えてるおれのこと」

「どこかでお会いしましたっけ……?」

「そう」


戸惑いつつも、何気ない雑談をする。そのくせ自分の話はまったくしないものだから、おもに私の話になってしまったが。


それでも嫌な顔ひとつしない。


なんだろう……この小さな違和感。


どうしていいかわからず、とりあえずお茶をすすめてみることにした。お茶を淹れることは得意なのだ。祖母が茶道の先生だったからか、自然と茶道に触れ身についてしまった。


「あのう、お茶淹れましょうか? なんでもお好きなお茶淹れますよ」


「ほんとうか?!」


急に少年のようになって、不覚にもときめいてしまった。胸の中に流れてゆく流れ星。


そしてこう言った。






「おまえの淹れたお茶が飲みたい。


神様の身代わりであるおれに、あのとき淹れてくれたお茶をもういちど飲ませてくれ」




この感情を、織りまぜてお茶にしてみようか。



7/26/2022, 1:04:01 PM

お題《誰かのためになるならば》


想いの原点。


原動力であり、追い風でもある。



「クオイ兄ちゃんは、どうしていつも笑ってるの?」

「笑顔でいたら、夜の底だって越えられる。それが嘘か真実(ほんもの)かより大切なことは、描こうってする想いなんだぜ」


いつも暁の国の辺境にあるちいさな教会で、子どもたちに物語の読み聞かせ、旅をしてきた自らの冒険譚、想いなどを語ったりしている。絵本を寄付したりと、クオイの活動は幅広い。



ふだんは手のひらサイズのグリフォン、フェンネルが、かばんに入っている。リシュティアから甘いものをもらううちに、甘党のグリフォンとなった。「ネルちゃん」と呼ばれている。


・手先が器用
ルシュラの懐中時計も直した。料理も実は得意で、行く先々で披露したりしている。スイーツやお茶を淹れる腕前はプロ並みだとか。


・人じゃないものにも好かれる
誰にも好かれるタイプ。老若男女問わず。
妖精とも仲がいい。

7/25/2022, 12:16:46 PM

お題《鳥かご》



オリメと出逢うまでは、月のない鳥籠にいるようだった。


「ヨル様」


彼女にそう呼ばれるたび、心に春風が舞い込む。



永遠に、月のない鳥籠で生きていくしかないと思っていた。でもそれはきっと、自分の世界しか知らなかったからだと識るのはもっと先のこと――。



「オリメちゃんみてみて、サクラが星屑糖(こんぺいとう)くれたよ」

「まあ、偉いですわ」


おれの鴉のサクラを撫でている彼女と、彼女の心友である姫。どちらもおれにとっては、大切な花だ。永遠に枯れない心の花。




――きっとみんな、姫のことが好きなんだろうな。



暁の姫が。



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