お題《鳥かご》
オリメと出逢うまでは、月のない鳥籠にいるようだった。
「ヨル様」
彼女にそう呼ばれるたび、心に春風が舞い込む。
永遠に、月のない鳥籠で生きていくしかないと思っていた。でもそれはきっと、自分の世界しか知らなかったからだと識るのはもっと先のこと――。
「オリメちゃんみてみて、サクラが星屑糖(こんぺいとう)くれたよ」
「まあ、偉いですわ」
おれの鴉のサクラを撫でている彼女と、彼女の心友である姫。どちらもおれにとっては、大切な花だ。永遠に枯れない心の花。
――きっとみんな、姫のことが好きなんだろうな。
暁の姫が。
7/25/2022, 12:16:46 PM